2015/10/16

銀河鉄道の世界

 先週末は函館に出張で、いったん家に帰って旅装を解いたあと、出直して今週は岩手へ旅行した。ちょっと過密日程だが、この先も週末ごとに出張やら行事やらが入っていてこのようなスケジュールになった。
宮澤賢治のふるさと花巻。何と響きのいい名前だろう。その花巻から釜石線で土沢へ。10月12日、花巻9時57分発釜石行き。1番線からの発車。2両のディーゼル、ワンマン運転。
 釜石線には銀河ドリームラインという愛称が付けられていて、どうやら、賢治の銀河鉄道の世界をイメージしているらしい。実際、賢治は岩手軽便鉄道時代のこの路線をモデルにして『銀河鉄道の夜』を書いたといわれている。
 列車は単線をのどかに走っている。とても気持ちが安らぐ。沿線は稲刈りは終わって、紅葉が五分くらいまで進んでいた。列車で一緒になったおばあさんの話によると、今年は紅葉がいつになく早いらしい。暑い夏から一気に冷え込んできた温度差によるものだろうか。紅葉はカエデやナナカマドが多いようだ。
 土沢は花巻から4つ目。わずか12.7キロの道のり。軽便鉄道時代にはこの駅が始発駅となっていたこともあるようだ。
 降りたってうれしくなった。まるで銀河鉄道の世界である。JRでは釜石線の各駅に賢治にちなんでエスペラント語の駅名を愛称として付けていて、この土沢駅はブリーラ・リヴェーロとあった。光る川という意味らしい。
 この駅に降り立ったのは、ここの萬鉄五郎記念美術館を訪ねるため。萬はここ土沢の出身。美術館は高台にあって坂道を上ること10数分のところだった。この美術館を訪ねるのは2度目だが、今回は多和英子展が見たくてやってきた。
 美術館までの途中、街中ではアートクラフトフェアが行われていた。土沢はアートに対する親和性が高いのかもしれない。屋台が並んで、まるで祭りのような賑やかさだった。
 また、美術館から眼下を望むと、黄色と赤に薄く彩られた田園風景が広がっていて、まるで賢治のイーハトーブの世界を連想させた。イーハトーブとは、賢治が描いた理想郷のことだが、今日に至るもそれを感じさせる豊かさがあるのだろう。
 ところで、釜石線にはこの土沢の三つ先に宮守という駅があって、この駅にほど近いところに宮守橋梁というのがある。通称めがね橋と呼ばれていて、賢治の銀河鉄道の夜のモデルとなったことで知られる。
 釜石線はなかなか不便な路線で、乗ってきた列車の次は5時間後までないので今回は都合がつかなくて訪ねることができなかったのだが、かつて通りかかったことがある。
 なるほど、銀河鉄道の世界を彷彿とさせる味わい深い橋で、見上げると、今にもジョバンニとカムパネルラが乗った蒸気機関車が通りそうな気配だった。なお、釜石線では、特定の日にはイベント列車としてSL銀河を運行していて、このめがね橋通過がことのほか人気となっているという。


写真1 銀河ステーションの看板が立つ土沢駅。


写真2 ホームの駅名標ポール。漢字とエスペラント語で書かれ、メルヘンチックだ。


写真3 宮守川と国道283号線を跨ぐ釜石線宮守川橋梁。(2014年3月5日撮影)

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