2015/10/14

恵山岬から戸井線遺構そして汐首岬

 砂崎灯台から函館への帰りは恵山岬に向かった。国道278号線をひたすら走るルートで、太平洋を左に亀田半島を南下する。
 北海道の南部、鯨の尾のようにも見える、大きくは渡島半島は、津軽海峡に向けて右に突き出ているのが亀田半島で、反対側、左に突き出ているのが松前半島ということになり、函館はその中間、尾ひれがくびれたあたりにあたる。
 途中に鹿部くらいしか大きな町もなくやや単調なルートを走ること約1時間、椴法華(とどほっけ)の小学校を過ぎると恵山(えさん)へは登り坂となり、ほどなくして到着した。
 恵山岬は、亀田半島の先端、恵山が鋭く突き出たところ。遠く対岸には下北半島がかすかに望めた。
 岬周辺は公園になっていて、その突端に恵山岬灯台がある。白堊の堂々たる灯台で、灯塔が太くたくましい。座標は北緯41度48分55秒、東経141度11分00秒。てっぺんに風見鶏が付いているが、実は灯台でこれは珍しいのではないか。また、公園内には函館市灯台資料館「ピカリン館」があった。
 この岬に立つのはこれが4年ぶり3度目だが、断崖絶壁に立つわけでもなく、岬にしては飛ばされるほどの風が吹くわけでもなく、真冬に来たときですら穏やかだったほどだが、いつ来ても味わいのある岬だ。
 この岬の魅力は、まずはその眺望。ここは津軽海峡と太平洋を別つところで、大海原がどこまでも広がっていて、右にはかすかに下北半島の、あれは尻屋崎であろうか、遠望できた。眼前を大型船が時折行き交っている。この灯台は参観できなくて、灯台のてっぺんに登ることができればよかったなと感じた。
 また、私にとってこの恵山岬の魅力のもう一つは特徴ある温泉のあること。水無海浜温泉といって、波打ち際にある野趣あふれる温泉だが、この日は残念ながら満潮で岩を組んだだけの湯船は水没していた。
 初めて訪れたときには幸い温泉に浸かることができたが、湯船は3段に組まれていて、最も下段は海水をかぶってぬるいくらいで、かといって上段は熱すぎたし、結局、上段からお湯を中段に導いて入ったのだった。お風呂に浸かっていると、目線が海面すれすれというのもなかなか得がたいこと。温泉は足下から湧いていて、源泉は50度ということだった。
 さらに、灯台の後背の高台にはホテル恵風という椴法華公営の保養施設があって、ここのお風呂は2度目だが実にすばらしい。大小5つもの湯船があって、すべて源泉が違うらしい。
 このうちの一つ、小浴槽に入ったら、これには「高温44‐46℃」と表示してある。熱い湯は大歓迎である。45度くらいか、これにゆったり浸かったら極楽のようだった。係の人が計測していたので尋ねたら、45.1と温度計を見ながら答えてくれた。私の体感計もたいしたものでなかなか正確である。なお、掲示によると、この風呂は源泉掛け流しのナトリウム塩化物泉で、源泉温度は58.4℃とある。
湯上がりに食堂で昼食にイカ刺し定食をいただいたが、これもすばらしいものだった。真イカなそうだが、肉厚だが透明感もあり歯ごたえもしっかりしている。量も多くて、二はい分もあろうかと思われた。とにかく食べきれないほどだった。
 恵山岬からは函館に向けて帰路を取った。ただ、恵山は海に鋭く落ちていて、国道は恵山の麓を海岸沿いに回り込むことはできない。それでいったん椴法華の集落まで戻り、恵山の内陸側の麓を横切るルートとなっており、国道278号線通称恵山国道を函館に向かった。
 途中、戸井の集落付近では、右の丘の斜面にコンクリート製のアーチが目撃できた。それが数キロにもわたって点々としている。これは旧戸井線の遺構で、函館と戸井を結ぶ路線として建設を進めていたものだが、戦況の悪化に伴い工事は中断され、戦後も再開されることなく放置されているものだ。見ると、とても立派なアーチで今日でも美しい姿を遺している。
 ここから少しして、函館までの中間くらいに汐首岬があるはずだが、なかなか標識が出てこない。それで、歩いていた地元に人に伺ったら、ほんの数百メートルだが通り過ぎたものらしい。戻ったらすぐにわかった。何のことはない、標識の看板は下り方面を向いて立っていたのだった。
 このようだから、汐首岬は国道を走ってきても、緩やかなカーブがあるだけ。丘の上に登れば岬らしい形状を確認できるのだろうが、その登り口も見つけられなかった。
 汐首岬の立て看板には、「北海道‐本州最短地点」の表示が出ていた。実際、岬は津軽海峡に突き出ていて、海上正面には下北半島の大間崎が見えている。実測距離はわからないが、松前半島の白神岬と津軽半島の龍飛崎と結ぶ線よりも短いのではないかと思われた。


写真1 白堊の堂々たる灯台が美しい恵山岬。


写真2 恵山街道沿いに遺る旧戸井線のアーチ。なかなか美しい構造物だ。


写真3 汐首岬は正面の本州下北半島大間崎と最も短い距離に位置する。

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