2015/10/13

念願の砂崎灯台訪問

 函館本線を砂原回りに乗っていて、いつでも気になる車窓風景があった。列車は高台を走っているのだが、渡島砂原付近で眼下遠く、噴火湾に面して砂浜に灯台が立っているのである。灯台は一般的には高いところにあるものであって、砂浜に立つ灯台なんて、どういうものか見当も付かない。それで、ずっと気になっていて一度は訪ねたいものだと念願していた。ところが、この砂原回りはいたく不便な路線で、日中の列車本数はわずかに数本。いったん途中下車してしまうと次が数時間後ということになってしまう。
 そもそも、函館本線には函館‐長万部間に特急列車など大半の列車が通る本線と、駒ヶ岳の裾野をぐるっと海沿いに迂回する砂原回りの二つのルートがあって、函館から森に向かうに、本線経由なら49.5キロのところ、砂原回りでは62.3キロにもなってしまう。
 そういうことでこれまでなかなか機会がなかったが、この砂崎灯台をやっとこのたびレンタカーで訪ねることができた。
 まず向かったのは最寄り駅である渡島砂原(おしまさわら)。函館駅から約1時間15分の道のりだった。国道5号線は鉄道と並行したルートを取っていて、駒ヶ岳の西麓、つまり右手に見ながら走る。刻々と変化する二つのピークを持つ駒ヶ岳の山容が美しい。
 森市街の手前で国道278号線に移った。今度は駒ヶ岳を右手に見ながら、つまり、東麓を走っている。こうしてぐるっと回り込んでみると、駒ヶ岳は実に変化に富んだ山で、茶褐色の荒々しい山肌に鋭く尖ったピークが、二つになり、やがて一つに変化する。
 国道は海沿いを走っていて、しばらくして砂原の町に入った。渡島砂原駅は国道からそれて少し山側に入ったところにあった。無人の小さな駅で、駅舎内に掲示してあった時刻表によると、列車本数は上下線合わせても日中8時から16時の間にわずかに6本。とくに、下り森行きは9時54分の次は15時46分まで約6時間も間が空く。
 列車に乗っていた時には渡島砂原駅付近だと見当をつけていたが、この駅からは砂崎灯台は目撃できなかった。それで、もう少し函館駅寄りに1キロほど進んだところに、ちょうどぽっかり灯台が望める地点を見つけた。それも、わずかな間隙があるだけで、どおりでこれまで列車からカメラを向けてもなかなか灯台を撮影する機会がなかったわけだ。線路際からは灯台は眼下数キロ先に小さく望めた。ここから見るとまるで波際に立っているようだ。
 国道沿いに砂崎灯台への案内標識があって、それに従って海岸へと下りていった。初めは舗装道路だったのだがすぐに未舗装となり、続いて砂地となった。
 周囲は丈の高い葦で覆われていて運転席からは見通しがはなはだ悪い。砂にハンドルを取られそうになりながら走っていると、ほどなく、突然という感じで灯台に出くわした。
 やっぱり灯台は砂浜に立っていた。それも波打ち際の盛り上がった砂山よりはちょっとばかり低い。これで灯台の役目が果たせるものかと心配になる。
 灯台は、赤と白の配色で、灯塔の高さはわずかに5メートルほどか。小さな灯台で、ライトも小さくて港の入口に設けられる航路標識を一回り大きくした程度しかない。平均海面からの高さも、それこそ数メートルほどしかない。大きな波が来ればのみこまれそうだ。なぜ、高台の上に建てなかったのだろうかといぶかしく思われた。もっとも、高台からは海岸まで随分と距離が遠くなるが。
 ここは噴火湾の入口に当たるが、航路標識としてさほどの重要性を与えられなかったのだろう。遠く対面は室蘭で、湾口はチキウ岬灯台が守っているということなのだろうか。
 いずれにしても、列車で通るたびに不思議だった砂浜に立つ砂崎灯台を間近に見ることができた。ただし、なぜ砂浜に建てたのかという疑問は残ったままだったが。


 


写真1 函館本線渡島砂原付近から遠望した砂崎灯台。


写真2 まさしく砂浜に立つ砂崎灯台。平均海面からわずか1メートルほどしかない。


写真3 砂崎灯台の背景は駒ヶ岳。灯台が映える美しい山容だ。

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