2015/10/06

清水浩史『秘島図鑑』

 秘島とは、絶海の遠隔感がある、孤島感がある、島へのアクセスがない、住民がいない、などとまずは冒頭で規定している。
 この要素のいずれか、またはすべてを含むものを秘島とするとして、日本全国の29の島がガイド編で紹介されている。
 ガイドでは、島の所在地、秘島度(5段階)、面積、人口、アクセス、関係する場所や隣島からの距離といった基礎データに加え、島の歴史や訪問記が記され、写真が添付されている。
 例えば、1番目に取り上げられている南硫黄島については、東京都小笠原村、秘島度5,面積3.54平方キロ、周囲約7.5キロ、人口0人、アクセスなしとあり、東京から約1300キロ、小笠原(父島)から約330キロ、硫黄島から約60キロ、と基礎データに自分で撮影した写真が添えられているほか、次のような解説と訪問記が記されている。
 ほぼ円錐形に高く切り立った、ピラミッド型の無人島。最高標高は九一六メートルで伊豆諸島と小笠原諸島の中ではいちばん高く、頂上付近はいつも霧がかかっている(雲霧帯)。火山島のため四方が断崖絶壁で、ちょっと不気味な威圧感は秘島の中でもピカイチ。島には上陸できそうなところがほとんどない。平地もなく、飲み水もなく、かつてこの島に定住した人もいない。つまり、外来生物も入り込んでいない。この時代になんとも貴重な、日本屈指の「人跡ほぼ未踏」の地。
 小笠原の定期船「おがさわら丸」が、南硫黄島・硫黄島・北硫黄島を巡るツアー(硫黄三島クルーズ)を毎年一度だけ運行している。上陸はできないが、島の周囲を周遊してくれる貴重な機会なので、乗船してみた。
 夜に小笠原(父島)を出港すると、明け方、水平線にポツンと南硫黄島が見えてくる。だんだん船が近づくにつれて、そそり立つ島の断崖が眼前に迫ってくる。かつても漂流者が上陸を躊躇したのも、よくわかる……。
 こうして、沖大東島、沖ノ鳥島、南鳥島、南波照間島などと日本周辺海域に展開する島々を訪ねている。直接訪ねられないようなところでもできうる限り近づこうとしている。いずれもアクセスもなく、住んでいる人もいないところばかりである。
 とにかく、全編にわたって著者の秘島に対する情熱と愛情がひしひしと伝わってくる。これがとても好ましくて、本書を単なるガイドブック以上の情感たっぷりな面白さにしている。
 私は旅が好きで、また岬も好きだから日本全国津々浦々まで訪ね歩いている。しかし、これらは交通機関、それも鉄道で行けるところが大半である。
 だから、これまで離島ですらあまり足を踏み入れたところは数少ない。せいぜい数え上げられる程度で、北は礼文島、利尻島、南は有人島として日本最西端の与那国島、同じく最南端の波照間島などである。
 こんな私だが、本書を読んだら秘島とはいわずとももっと離島にも行きたいと気持ちを揺り動かされたものである。
(河出書房新社刊)


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