2015/09/17

芦原すなお『雪のマズルカ』

 芦原すなおといえば、青春小説の傑作『青春デンデケデケデケ』が面白かった。これで文芸賞さらに併せて直木賞にも輝き出世作とした。
 あれから25年ほどにもなるか。その後その名を聞かないなと思っていたところ、このたびふとしたきっかけで本書の存在を知り、早速手に取ったという次第。
 短篇4編が収録されているハードボイルドの連作集である。それも主人公が女私立探偵というのだから面白い。めったにない設定でびっくりした。
 とにかく設定がいい。笹野探偵事務所。笹野里子。亡き夫の事務所を引き継いだ。1年になる。事務所は下町とおぼしきところ、古いビルの北向きの部屋。
 一流大学を出て保母をやっていたのだが、探偵になると決めて格闘技ジムに通い、レスリングやサンボ、柔術、キックボクシングと一通り修めた。だからそこそこ強い。
 仕事は選ぶ。依頼人と直接会って話を聞いて決める。気に入らない仕事はやらない。仕事はできるから信頼されているようで仕事は結構ある。
 キャラクターも面白い。度胸がいいし、大胆で果断。勘がいいし、仕事はできる。生きていれば娘は17歳ほどになっているというから、歳は50代前後か。
 しかも、仕事は、素行調査、企業調査などというものもあるのだろうが、本書収録の4件はすべて殺人事件がらみ。
 それも、夫が遺したリボルバーまで振り回すというのだからびっくり。殺人事件の現場にもたじろがない。
 こうして笹野探偵事務所及び所長で探偵の笹野里子を紹介すると、これ以上あらすじの記述は不必要となってしまう。
 部下はいないが、親しい協力者はいる。一人は同業者で山浦探偵事務所の山浦歩、通称ふーちゃん。頼りなげだが裏情報に詳しい。今一人は警視庁捜査一課遠藤警部。男やもめで笠野里子に惚れている。
 主人公は聡明で、ぶっきらぼうだがそのやりとりが断然面白い。これだけで読み応えがある。
 なお、本書の刊行は2005年で、最近のものではないので念のため。
(創元推理文庫)


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