2015/09/16

室生寺

 初めて訪ねた。
 三重県境に近い奈良県の奥に位置している。近鉄大阪線の室生口大野が最寄り駅で、県境を越すと名張。何のことはない先ほど乗ってきたばかりの名松線伊勢奥津駅から直線なら十数キロの距離ではないか。
 室生寺は、真言宗室生寺派の大本山。密教である真言宗は、高野山がそうであるように女人禁制であるところ、ここ室生寺は女性にも門戸を開いているところから「女人高野」の別名がある。奈良末期あるいは平安初期の草創といわれる。
 室生口大野駅からバスで15分ほど。終点に小さな門前町。室生川というのだろうと思うが、この川を太鼓橋で渡るとすぐに本坊。右に進み朱色の大きな仁王門をくぐると、静謐な世界に引き込まれる。
 正面に鎧坂と名付けられた長い石段があって、どうやら伽藍は室生山という山の上の方へと展開しているようだ。この鎧坂はなかなか風情のあるもので、一段ずつ踏みしめながら登っていった。
 登り切ると、左手前に弥勒堂、そして正面が金堂である。
 弥勒堂(重文)からお参りした。鎌倉時代の創建で、さほど大きな建物ではないが、安置されている仏様がいい。本尊は弥勒菩薩立像(重文)である。わずかだが左に傾いているように思われたので、係の僧形の人にその旨話したら、やはりその通りで、一歩足を踏み出したその瞬間をとらえたのだということだった。
 この隣にも脇侍とも思われないほどの立派な仏様があった。釈迦如来座像(平安初期、国宝)で、客仏なそうである。客仏とは、本来この寺のものではなかったものが途中から持ち込まれた仏像を指すようだ。
 生え抜きではないから弥勒菩薩の脇侍のように扱われているが、ありがたみがひしひしと伝わってくるような存在感がある。飾り物を持っていたりする菩薩に比べ、如来だから衣服もシンプルだが、慈悲が深く感じられる。弥勒堂自体が小さなお堂だから、仏像も間近に拝めて大変ありがたみが増す。
 次に金堂(国宝)へ。立派な建物だ。ここはすごい。本尊の釈迦如来立像(国宝)を中心に、右に薬師如来と地蔵菩薩、左に文殊菩薩、十一面観音菩薩が並んでいる。また、その手前には十二神将が揃って並んでいる。十二神将が揃っていることは珍しいことのようだ。壮観である。
 ただ、このお堂は、拝観場所から仏像までに距離があって、仏様のお顔がきっちりとは拝めない。特別の日には間近でお参りできるらしいがこれは残念だった。
 さらに石段を登って本堂へ。如意輪観音菩薩像(重文)が本尊で、片膝を立ててお顔はなかなかの美形だし、6本ある手の仕草などなかなか奔放さも感じられる。
 この本堂の裏手にあるのが五重塔(国宝)。平安初期の建物で、室生寺最古の建築物だということである。ただ、数年前に台風被害があり一部修復したということである。
 五重塔にしてはさほど高いものではないが、やや朱を帯び建物は周囲の緑に溶け合って美しい姿を見せている。
 境内はこの先、奥の院へと続くが、私はここで引き返した。そして、先ほど巡ってきたお堂を一つずつもう一度丹念に見て回った。
 平安初期の堂宇がそのままの状態で建ってあり、仏像もまた当時の状態で安置されており、お堂も仏様も造られたそのままに佇んでいるところに室生寺のありがたみがいっそう伝わっているようだった。


写真1 静謐な空間へと誘う鎧坂。まるで絵画か映画の世界のようだ。


写真2 静かな佇まいを見せる金堂。室生寺の魅力はお堂も仏像もつくられた当時のままにあるということだろう。


写真3 緑に朱が美しい五重塔。

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