2015/09/09

佐々木譲『憂いなき街』

 道警シリーズ7作目。『笑う警官』から始まっておよそ10年ということになる。
 札幌を舞台に、主な登場人物はシリーズ常連の機動捜査隊津久井卓巡査部長、大通署刑事課佐伯宏一警部補、同新宮昌樹巡査、同署生活安全課小島百合巡査部長。いずれも佐伯の親密な仕事仲間である。
 宝石商強盗事件が発生。侵入したのは覆面姿の男3人。店主の証言などからこのうちの一人山口幸也が市内のホテルのピアノラウンジで故買屋と会うという情報。命令を受け出動した津久井が同僚の滝本とともに駆けつけ山口を確保する。
 一方、佐伯は新宮とともに盗犯係の応援にかり出される。窃盗容疑で手配中の男を張り込めとのこと。その分担になった場所がファミレス。張り込みを自然に見せるために佐伯は係違いを承知で小島に協力を求める。
 物語はこの二つの小さなエピソードを同時進行させながら進む。まるでレギュラー登場人物たちの人物紹介のよう様相だが。
 ところが、宝石商強盗事件の故買屋が殺されるという事件が発生する。一挙に殺人事件へと展開したのだ。
 ところで、物語で重要な役割を担っているのがブラックバードというジャズバー。佐伯らの行きつけの店である。佐伯も津久井もジャズファンなのである。
 ここで津久井はピアニストの安西奈津美と出会う。安西のことは宝石商強盗事件で山口を確保したホテルのピアノラウンジでピアノを弾く姿を見かけていた。
 ブラックバードで再び会うことになったのだが、安西はサッポロ・シティ・ジャズというイベントに四方田純カルテットの一員として出演することになっていて、メンバーがリハーサルに使用するこのバーで、一足早く下見がてら練習に来ていたのだった。
 そうこうして、中島公園の池のボート乗り場で女性の死体が発見され、殺人事件と断定された。被害者のバックから四方田純カルテットのチケットが発見され、チケットには安西との走り書きがメモされていた。その後の調べで、被害者は四方田の追っかけファンだったことがわかる。
 小さな二つのエピソードから始まった物語は、二つの殺人事件へと複雑に絡み合いながら進む。
 ただ、本作はその絡み方がれまでとちょっと違うようだ。ことごとくヒットしているこの道警シリーズのその大半を読んできているが、これまでのシリアスな警察小説とは趣きが異なって、とくに後半はまるで恋愛小説の様相で、ちょっと面食らった。こうなると、シリーズを読み続けていない読者にとっては物語に感情移入できないのではないかとも思われた。
 ところで、本書は先日の札幌出張の際に購入した。札幌駅の近くに紀伊國屋書店札幌本店という本屋があって、外に開けたとても明るく大きな店舗が気になって店内をぶらぶらしていて見つけた。出張先で書店をのぞくことはたびたびだが、この店は感心するほどに私の好みに合う品揃えだった。
 出張中のこと、荷物が重くなることは嫌だったのだが、札幌を舞台にした小説だしこれも何かの縁だと思って手に取ったという次第。それで、帰途の飛行機の中ですぐに読み始めたのだった。
 しかも、泊まっているホテルのそばが北海道警察本部のビルだった。20階建てくらいはあるだろうか、とても大きく立派でびっくりした。警視庁よりも大きいようだったし、隣接している道庁の庁舎よりも大きかった。
 なお、この道警シリーズに登場する大通署という警察署は札幌市内には実在していなくて、位置関係から見てどうやら中央署がモデルのように思われた。また、道警本部と中央署はごく近所であることもこのたび初めてわかった。
(ハルキ文庫)


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