2015/07/28

近藤史恵『ヴァン・ショーをあなたに』

 『タルト・タタンの夢』に続くビストロ・パ・マルを舞台にしたシリーズ2冊目。
 ビストロ・パ・マルとは下町にある小さなフレンチレストラン。登場するのはそこで働くシェフ三船、副料理長志村、ソムリエ金子、ギャルソン高築の4人。
 小さな物語7編が収まっていて、それがしゃれたミステリー仕立てになっている。シェフ三船の謎解きが意外性があっていいオチになっている。とにかくフレンチのうんちくがいっぱい詰まっていてこれも大きな魅力。
 前作でも気になっていたのがヴァン・ショーというもの。ホット・ワインのことらしく、赤ワインをお湯で割り、そこにオレンジの輪切りとクローブ、シナモンを加えたものらしい。フランスでは家庭でも風邪をひいたときや寒い夜には好んで飲まれるものらしい。
 表題作にもなっているこの「ヴァン・ショーをあなたに」が面白い。
 シェフ三船のフランス修業時代のエピソードとともに、今や三船が得意とするヴァン・ショーとの出会いまでもが描かれていて楽しい。
 ストラスブールのユースホステルに滞在していたときのこと。ユースの女性スタッフがマルシェに誘ってくれた。マルシェとはマーケットのことで、ここに店を出しているミリアムおばあちゃんのヴァン・ショーがおいしいというのだ。ところが、飲んでみるといつもの年の味ではないという。だいたいが今までは赤ワインだったのに白ワインに変わっていたのだった。
 おばあちゃんの話を聞いていて三船にはぴんとくるものがあった。この三船の謎解きが秀逸。シェフならではのもので、料理の解説と謎解きが一体となっていて味わい深い。
 それにしても、著者はどこでこれほどのフレンチの知識を仕入れたのであろう。フランス語にも堪能そうだから、あるいはフランスでフレンチ修行をしていた経験があるのかもしれない。そう思わせるほどに内容が濃くて豊かだ。
(創元推理文庫)


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