2015/07/23

舟越保武彫刻展

 練馬区立美術館で開催されている。昨年10月から岩手県立美術館、郡山市立美術館と巡回されてきた。展覧会のことは初めから知っていて、すぐにでも駆けつけたいところだったが、なかなか機会がなかった。やっと念願が叶った。
 会場には、舟越の代表的彫刻作品が60点も展示されていたほか、多数のドローイングも出品されていて、舟越の業績の全体像から制作の過程までもわかるようだった。これほどまとまった展示も珍しいのではないか。
 とにかく会場では行ったり来たりしながら何度もじっくりと見て回った。私は絵画展を見ることはたびたびなものの、彫刻展というのは実は少ない。もちろん、美術館に足を運んで絵画にだけ目を向けて彫刻の前は素通りするわけではないが。
 そういう私でも圧倒的感動だった。もともと舟越保武さんの作品が好きだからこそに他ならないのだが、至福の時が過ごせたのだった。
 <LOLA>(1974)。もとより代表作であり、私のもっとも好きな作品。舟越にはブロンズもあるが、石彫にこそ本領があるのではないか。これは大理石だが、これほど美しい女性像はまれであろう。それは単に美人であるということ以上に、やはり清楚であり慈愛が感じられるからであろう。
 <聖セシリア>(1980)は、砂岩の持つ味わいがよく出ているように思える。民間人のLOLAとは違って聖職者だけに安らぎや心の平穏さをいっそう感じさせてくれる。
 ブロンズ像では<原の城>(1971)がいつ見ても何度見ても胸に迫ってくる。島原の乱に立ち上がった兵の慟哭までもが聞こえてくるようだ。口と目がくりぬかれているのもキリシタン弾圧の厳しさをいっそう表しているように思える。
 もう一つ会場を巡って気に入ったのは<若き石川啄木>(1965)というブロンズ。これほど若々しく端正な啄木像というのも珍しいのではないか。啄木とは舟越は母校盛岡中学(現盛岡一高)で後輩だが、天才啄木にどのような思いがあったのだろうか。
 実は、私は舟越保武さんの作品を1点持っていて、オフィスの部屋に掲げて毎日見ている。<若い女>と題する銅版画だが、いかにも舟越さんらしい知的で清純さが感じられて好きだ。舟越さんが脳梗塞で倒れ右半身が不自由になる直前に描いたもので、右手で描いた最後の作品らしい。また、サインは左手で記したということである。
 そんな私が会場を巡ってふと思った。なぜここまで舟越作品に惹きつけられるのか。そこには崇高で深い精神性が感じられるからであろうが、ずぶの素人で、日頃彫刻作品と接する機会の少ない私でも、舟越作品を目の前にすると激しい葛藤を覚えるのである。絵画ならともかく、彫刻でこれはまれなことだ。


写真1 会場の練馬区立美術館外観


写真2 展示されていた<聖セシリア>(会場で販売されていた絵はがきから引用)

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