2015/07/17

映画『チャイルド44』

 舞台はスターリン体制下のソ連。国家保安省(MGB)のエリート捜査官レオ・デミトフが主人公。
 むごたらしい少年の死体が発見される。「楽園」に殺人事件などありえないという体制下。レオは事故として処理するが、レオ自身が納得いかない。それで捜査資料を再度チェックしようとするのだが、そこを部下のワシーリーに足元をすくわれ、左遷させられる。MGB(KGBの前身)のエリートが地方に飛ばされ、民警の巡査にまで身分を落とされる。
 妻のライーサと転任地のヴォウアルスクに赴いたレオとライーサには惨めな生活が待っていたが、レオはあくまでも職務を忠実に実行する。そういう中で、少年が殺害されている事件に遭遇する。捜査をしたレオはかつて自分が手がけたモスクワの事件と手口が酷似していることに気づく。
 そこで、レオは民警のネステロフ署長に捜査の拡大を訴える。当初渋っていた署長も次第にレオの意見に同調し支援していく。そもそも殺人事件の捜査など反体制行為だし、妻のライーサも真相を突き止めることは危険だといって引き留めたのだった。
 しかし、その後の捜査でわかったことは同じ手口の殺人事件が実に43件も発生していたのだった。しかも、その全部が罪を無実の者に勝手になすりつけ解決済みとしていたのだった。
 陰湿で執拗なワシーリーの妨害の手を逃れながらレオは真犯人を追っていくが、スターリン体制下の恐怖政治がまずは徹底して描かれる。楽園に犯罪などありえないというのが建前という時代。また、時に途切れそうになるレオとライーサの夫婦仲が固い絆となっているのが救いか。
 終始緊迫した場面が続き緩むところがない。これは映画としては醍醐味。また、映画はストーリーがわかりやすく、筋を追いやすかった。
 原作はトム・ロブ・スミスの同名小説。文庫上下2巻の長編。実は、原作はくどいくらいで読み続けるのに忍耐力を必要とするほどだったし、伏線も多くてわかりにくかった。とくにスターリン体制下の実態については徹底した掘り下げようだった。
 原作と映画が同じである必要はまったくないのだが、この映画は原作を随分とはしょっていて、それがあって映画は追いやすい筋となっていたし、これがあって映画は楽しみやすいものとなっていた。ただし、骨格に当たる筋を1本抜いていたり、別の設定に変えていたりしていたのには大胆でびっくりしたが。なお、原作はロシアでは発禁されていたらしい。
 監督ダニエル・エスピノーサ。アメリカ映画。


(映画公式サイトから引用)

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