2015/07/14

武田砂鉄『紋切型社会』

 テレビや新聞でしばしば見られることだが、馬鹿の一つ覚えみたいに、類型化した表現がはびこる今日の状況を痛烈に皮肉っている。決まり切った言葉ばかりで選択の余地を与えないことでもあるのだが、こうした状況を著者は紋切型社会と呼んでいて、ふむふむ、にやにやしながら読んだ。著者は近年の言葉遣いに眉をひそめるきっと年配の者だろうなと思っていたら、1982年生まれと若いので感心した。
 本書では紋切型社会を象徴するとされる言葉を様々な方向から拾い集め例示している。
 いくつか拾ってみよう。
 若い人は、本当の貧しさを知らない。関連して戦争は戦争を知っているものしか語ってはいけないのかと疑問を投げかけ、体験に基づく伝承と、探求で得た知識を比べると、「戦争について「語る資格」をあえて問うならば、それは現代に対する目的意識の有無で測られるべきではないか。つまるところ、体験の有無だけで歴史を語るヒエラルキーが定まり、ちっとも今を検証しない話者ばかりが歴史を語ることに嫌気が差しているのだ」と主張している。
 会うといい人だよ。「今の時代、置かれた場所と見知らぬ事柄の距離感を具体的に考察するために必要となってくるフレーズとは何か。「怪しいと思っていた」と「会うといい人だよ」ではないか。」とし、「これが情報化社会を極めて粗雑に処理するキーワードだ。」と続け、「こうなると、本人に近い人たちだけが、層の厚みを持って相手を知ることができていると規定されてしまう」と展開している。
 もう一つ拾ってみようか。
 育ててくれてありがとう。結婚披露宴のクライマックスで新婦から両親に贈られるこの言葉は、あまりにもサンプル通りに類型化されていて、「両親への手紙くらい、自分で書けよ、と思う」とばっさり。
 こんな風で、同意することもしばしばだが、ところどころ論旨のわからない箇所もあった。難解ということもさることながら、論理が飛躍しているのではないかとも思われた。
(朝日出版社刊)


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