2015/06/10

仮設住宅の建築工法

 昨夜行われた異業種交流会で、結設計代表藤原昭夫氏による「仮設住宅から工法と活動がどう進化しているか」と題する講演が行われた。自ら東日本大震災の被災地で応急仮設住宅を設計してきた建築家による講演だけに大変興味深いものだった。
 藤原さんは講演で、被災者に少しでも安らぎを与えられるような住宅を目指し、杉材による木造住宅を念頭に置いたのだという。その際、かねて開発を進めていたFSB工法の適用を実践したと語っていた。
 この工法は、壁パネルなどもすべて木材で製作するもので、部材の再利用を前提にしているのが特徴だとのこと。
 実は、私は、藤原さんが設計したこの仮設住宅を取材したことがあった。震災から半年ほど経った2011年9月のことで、宮古駅からほど近く、住宅街の小公園という環境にあって、建物は外壁がなす紺色をしており、まるで松林の中にたたずむ瀟洒な集合住宅という印象だった。
 その取材の際、無理をお願いして住んでいる人に建物の中を見させてもらったのだが、内部は木材がふんだんに使われていて、杉の節目がかえって安らぐようだったし、住人の方も「この家に帰ってくるとほっとするんですよ。気に入っています。湿気もありません。天井が高いから冬の暖房が心配なくらいです」と言って喜んでいたのだった。
 この日の講演によると、藤原さんはこのFSB工法について、仮設住宅への適用のほか、その後も一般住宅への適用も行っていて、工法自体がどんどん進化していると語っていた。
 なぜここまで木材の再利用にこだわるのかという問いに対し、藤原さんは、一般に住宅は30年で建て替えられている。杉は住宅に使われるようになるまでに50年もかけて成長してきてる。その杉をいとも簡単に廃却していることに大きな疑問があった。少なくとも50年は使いたい、否、100年も持たせたい、そのような思いで再利用可能なFSB工法を開発したと話していた。
 また、これが環境問題に貢献できる建築家の使命の一つだとも語っていて、建築家としてのひたむきな熱っぽさが伝わってくるような内容だった。
 宮古で使われているFSB工法による住宅はそのうち役割を終えるだろうから、その後もいつの日かどこかでリユースされる日を待ちたいものだ。もちろん、災害を待っているという意味ではまったくないが。


写真1 講演の模様


写真2 結設計設計による岩手県宮古市の応急仮設住宅(2011年9月8日撮影)

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