2015/06/09

ヘレン・シャルフベック展

 ヘレン・シャルフベック(1862-1946)はフィンランドの女性画家。その回顧展が「魂のまなざし」と題し上野の芸大美術館で開催されている。
 シャルフベックについてはこれまでその名前すら知らなかった。もっとも、日本で彼女の展覧会が開催されるのはこれが初めてだったらしい。パンフレットに載っていた自画像に惹かれた。
会場には84点もの作品が展示されていて、それは彼女の画業の全体像に及んでいたし、彼女の軌跡がわかるようだった。また、会場には濃密な世界が充満していたようだったし、1点1点を丹念に見て回ったら疲労感が漂うほどだった。
 一通り見て感じたこと。まず一つは生涯において随分と画風に変化が大きいなということ。とくに自画像を見てその印象を強くした。生涯で40点あまりの自画像を描いたらしいが、このうち会場には9点が展示されていた。
 1884-1885年に描かれた<自画像>では30代半ばと若かったせいか、意志の強うそうな自己が油彩のザックリしたタッチとなっていたし、<黒い背景の自画像>(1915年)では50代に入ったばかりというのに早くも死を予感しているような雰囲気だし、最晩年の<正面を向いた自画像>(1945年)ではうつろな表情しか見られないものとなっている。
 当然、歳を経るごとに画風は変わるだろうし、それは自画像にこそくっきりと表れるものであろうが、生涯80点ほどの自画像を描いたとされるレンブラントの場合では、若いときから晩年に至るまで一目でレンブラントとわかるような自画像ばかりで、この点、シャルフベックでは年代ごとの落差が大きいように思われた。
 シャルフベックは、パリにも学んだらしいが、ピカソやルオー、ローランサン、セザンヌ、ホイッスラーからエル・グレコなどに影響を受けたようで、それが歴然としているのも面白かったし、彼らの模写も積極的に行ったようで、その作品が展示されていた。
 また、画題に困ると、かつて描いた作品を時を経て再び描いていて、興味深かったのはそれら新旧の作品が並べられて対置して展示されていたこと。
 その中で、1905年の<お針子(働く女性)>と、1927年の<お針子の半身像(働く女性)>とでは、1905年作品では暗さや孤独感が際立っていたものが、22年を経て1927年作品ではやや枯れてきたのか孤独感なども薄まっていたように思われた。

 


写真1 <自画像>(1884-1885年=会場で販売されていた絵はがきから引用)


写真2 <黒い背景の自画像>(1915年=同)


写真3 <正面を向いた自画像>(1945年=同)

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