2015/05/13

ウィーン

 ウィーンを訪れた。ウィーンは2年半ぶり。
 相変わらず美しい都会だ。神聖ローマ皇帝、オーストリア皇帝を輩出したハプスブルグ家650年の栄華が今に偲ばれる都である。
 ヨーロッパの中では、パリやローマと並んで世界の観光客が好む都市ではないか。折から街路樹が花を咲かせ、気温も日中なら20度台半ばと麗しく、街はとても賑わっていた。
 旧市街の中心にある王宮やシュテファン寺院。これらをぐるっと大きく取り囲むように環状道路リンクシュトラッセがあり、市電(路面電車)が走っている。一周4キロとか。かつての城壁があった跡であろう。大概の見所はこのリンク沿いにあるからとても便利だ。
 私はウィーンを訪れるのはこれで5回目だが、ウィーンに着いてまず初めに行うのはいつでもこの市電でリンクを一周することだ。
 スタートはオペラ座前。時計回りに進むと、すぐに左に美術史美術館。マリア・テレジア像を挟んで自然史博物館と向かい合っている。二つの美術館・博物館は相似形をなしている。右手には王宮の塀が続く。
 次に国会議事堂、市庁舎、ウィーン大学といずれも左側に続き、このあたりがリンクのハイライト区間だろう。
 この先でリンクはドナウ運河に突き当たり大きく右に曲がる。運河の対岸には近代的なビルが見えている。
 乗降客の多いのはシュヴェーデンプラッツ駅。Uバーン(地下鉄)と接続していて、このUバーンでドナウ川を渡れば国連機関などのビルが建ち並ぶ新しいウィーンの顔を望むことができる。
 次に大きなカーブを曲がると少しして左に公園が見えてくる。市立公園で、ヨハン・シュトラウス像などで知られる。
 この一周が約30分。ただ、ウィーンの市電は路線数も多く、その大半がリンクから分かれ、リンクに合流するように組まれており、とんでもないところに連れて行かれる場合もないわけではない。正確ではないが、記憶によれば路線数が約35、総距離数は約180キロほどで、これは路面電車(トラムを含む)で世界のベスト・スリーのはず。
 ウィーン市電といえば、黄色と赤の2段塗色に馬面顔が一般的だが、今回訪れたら新型車両も多数投入されたらしく、ごつい印象となっていた。ただ、低床車だから年配の市民には好評であろう。
 なお、ウィーンの公共交通機関としては、路面電車の市電のほか地下鉄のUバーン、近郊電車のSバーンなどとある。大変密度が高いし、それにどっち方向に間違ったとしても戻ればいいだけの話。たいした時間もかからない。これらすべての公共交通機関に乗降自由なパスがあって、72時間用で16.5ユーロだった。
 リンク内であれば歩いて回るのがいい。その中心がシュテファン寺院。どの方向に向かってもせいぜい10分から15分程度でリンクにぶつかる。また、シュテファン寺院からオペラ座に伸びるケルントナー通りはウィーン切っての目抜き通りで、歩行者天国となっているからいつでも賑わっている。
 なお、シュテファン寺院は1359年の完成と古く、塔の高さは100メートル超す堂々たるもの。早朝訪れたら日曜だったせいかちょうどミサの最中だった。説教といい歌といいミサの内容は皆目わからないが、聖職者たちの声のいいことには驚いた。音響もいいようだ。
 私は今回はとくにどこを見たいということもなくて、ただ、ぶらぶらと歩きまわったが、古い街並みがとても美しくて、どこまでも歩いて行って疲れればカフェで休むということを繰り返した。
 結局、ウィーンの魅力とは、歴史の重みであろう。そしてそれは同時に、そういう街を大事にする住民の努力なのであろう。このたびウィーンの前に訪れたヴェルスでも古い街並みに魅了されたが、小さな街と大都会の違いはあっても、ヴェルスとウィーンはともに歴史が今に息づいていることを肌で感じさせてくれたのだった。
 歩いていると、至るところに広場があり、記念の像があり、教会があって、道沿いにはカフェがあった。
 もう一つウィーンでの楽しみは私にとっては美術館巡りとエンターテイメントあたり。
 美術館では、美術史美術館がいい。規模ではパリのルーブルやニューヨークのメトロポリタンに及ばないかもしれないが、コレクションが粒ぞろいということではサンクトペテルブルグのエルミタージュやマドリッドのプラドと並んでも引けを取らないのではないか。
 ブリューゲルの作品が多いのも魅力だが、私の楽しみはラファエロの「草上の聖母」とフェルメールの「絵画芸術」。数多くあるラファエロの聖母画の中でもこれは出色ではないか。歴史上多くの画家が聖母を描いているが、ラファエロはどうしてこれほど慈愛に満ちた聖母を描けたのであるか、そんなことを考えさせてくれた。
 また、アルチンボルト、カラヴァッチョ、デューラー、レンブラント、ルーベンスなどとあって堪能できたが、3時間も回ったからいささか疲れた。
 ほかに、美術館ということでは、ベルヴェデーレ宮殿にあるオーストリアギャラリーがいい。地元出身クリムトの作品が数多くコレクションになっている。クリムトというと、金を多用をした官能的な作品に印象が強いが、花が咲き乱れる田舎の風景を丹念に描いた作品はクリムトのイメージを一新させるものだった。おそらくクリムト好きにとっては聖地なのかもしれない。
 エンターテイメントについては今回はうまくいかなかった。前回訪問時にはオペラ座での鑑賞や楽友協会ホールにおけるウィーンフィルの演奏会と二つも楽しむことができたのだが、今回は残念ながらどちらにも滞在中に設定がなかった。

  


写真1 ウィーン市街を縦横に走る市電(路面電車)。これは新型車両で、背景は国会議事堂。


写真2 ベルヴェデーレ宮殿オーストリアギャラリーから遠く望んだ市街中心。中央奥の尖塔がシュテファン寺院。


写真3 至るところ路上に張り出したカフェ。

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