2015/03/20

賑わいの金沢

 1年半ぶりの金沢。何度も訪れているが、金沢は散策に楽しい街。3時間もあれば一通り歩いて回れるはずで、春本番を思わせて季候もいいしブラブラと歩いた。
 金沢には、西の犀川と東に浅野川があるが、今回は浅野川界隈を含め金沢城を一周するように歩いてみようと思う。
 スタートは香林坊。金沢のへそみたいなところで、金沢城にも近く最大の繁華街。12時30分。まずは兼六園に向けて歩を進める。その名も百万石通り。
 数分で金沢21世紀美術館。観光コースにも組み込まれているほどの人気の美術館。とくに自前のコレクションがある訳でもないのだが、開かれた美術館というイメージも人気の秘密かもしれない。特別展以外は入場無料。
 数少ないコレクションの一つが「スイミング・プール」(レアンドロ・エルリッチ)。2004年の会館以来絶大な人気を誇っている。プールの縁からのぞくと水面下に人が動いている。不思議な体験。
 ほかにこの日は、「卯辰山のかたち」という展覧会が行われていた。金沢卯辰山工芸工房設立25年を記念したイベント。この工芸工房は金沢市の伝統工芸の伝承を目的に設置されているもので、これまでに陶芸や漆芸、染織、金工、ガラス各部門から254名が巣立っているとのこと。
 この展覧会には、OBや現役の研修生の作品が展示されていたが、超絶技巧を発揮したすばらしいものが多くて、さすがは伝統工芸の町らしいものだった。写真撮影は禁じられていたため紹介できないのが残念なくらいだ。
 美術館の後は兼六園へ。美術館前の交差点を渡るとすぐに入り口である。なお、このあたり一帯は街の中も含め金沢城跡である。真弓坂口から入ってぶらぶらしながら桂坂口から出た。
 兼六園の魅力は何だろうか。まずは松が美しい。池が絶妙に配されている。丘の上にあるのにこれは不思議だが、これはサイフォン効果というやつ。専門的なことはわからないが回遊林泉式という形式だろうが、三名園の中でも規模といい完成度といい最高位ではないか。
 桂坂口を出ると目の前が金沢城趾。堀を橋で渡ると重文の石川門。現存するかつての城郭の一つで、くぐると三の丸、二の丸へと続き、重文の三十軒長屋などを見ることができる。
 一回りして再び石川門に戻り、城趾をぐるっと回り込みながら浅野川へと向かった。それにしても金沢城の魅力は石垣の美しさ。巨大な石垣が往時のまま残っている。
 石川門からはお城を時計と反対回りに四分の一ほど回って浅野川に出た。加賀友禅の洗い物が現在でも行われているという清流で、梅の橋という木造のしゃれた橋で渡った。
 いわゆる東茶屋街と呼ばれる、近年とみに人気のスポット。格子が美しい料亭が軒を並べていて、今にも芸妓さんが出てきそうな雰囲気。数十軒にも及ぼうか、蝟集しているという感じ。多くはカフェや土産物屋に変わって観光客を相手にしている。若い女性が圧倒的に多い。
 浅野川を今度は浅野川大橋で渡って、主計町茶屋外を覗いた後は近江町市場へ。金沢の食の中心みたいなところ。越前ガニが並んでいたが、安いもので5千円から。とても手が出ない。
 ここからは一直線に香林坊に戻った。時刻はちょうど午後3時半。予定通りぴったり3時間だった。きっちりお城を一周したことになる。途中休まなかったのでいささか疲れた。
 金沢の町を歩いていて気がついたこと。一つは、古い通りや建物が数多く残っていること。これは金沢が戦時中空襲に遭わなかったということもあるに違いない。それと、金沢は伝統を大事にするという習慣が根付いていることにもよる。それは江戸時代以来のことではないか。工芸を大事にしているのもそういうことなのだろう。
 古い木造の商店があって、黒光りした看板に薬種問屋などとあると、これはもう銭形平次や鬼平の世界ではないかと思ってしまう。そういう楽しみも金沢にはある。
 金沢の楽しみはもう一つは食。昼には甘エビの天丼をいただいたが、夜は小料理屋へ。金沢には知った店があり、事情が許す限りそこへ行きたい。馴染みといっても1年半ぶりだが、このたびも寄った。
 カウンターに8席あるだけのこぢんまりした店で、女将が一人で切り盛りしている。黙っていても料理を絶妙のタイミングで出してくれるのがいい。今回はとくにおでんがよかった。それも麩のおでんなのだが、これが絶妙の味だった。ちょっと不思議なくらいおいしかった。
 お銚子を数本飲んだところで、おにぎりが出てきた。顔が赤くなっていたのかもしれない。もう少し飲みたい気もしたが、そんな女将にそんな店。
 それともう一つ。金沢の街はどこも賑わっていた。新幹線効果が大きいのかもしれない。あるいは新幹線効果一人勝ちかもしれない。


写真1 金沢城は石垣がすばらしい。百万石らしい規模。


写真2 人気のスポットになっている東茶屋街。往時が偲ばれる通りは風情がある。


写真3 金沢21世紀美術館の作品「スイミング・プール」。縁から覗くと水面下に人が立っている。

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