2015/03/11

笠間日動美術館

 茨城県笠間市にあり、「絵画と写真で巡る大鉄道展」という展覧会開催中である。
 何しろ鉄道が好きだし、美術も好きで、その二つが重なるとなれば多少遠出してでも見たいもの。それで、展覧会初日となる7日土曜日早速出かけてきた。
 展覧会は3部構成で、1部が鉄道の歴史を示す図版類、2部が鉄道が題材に入っている絵画、そして3部が中井精也写真展。
 1部2部で目にとまったのは池口史子「夕陽」(1991年)。大きな油絵で、夕日に黄色く染まった空が印象的で、アメリカ(あるいはカナダ)とおぼしき鉄道駅が描かれている。倉庫だろうか建物が特徴的で、貨車が留置され鉄路が鈍く光っている。
 人影がまったく見当たらず静謐さが漂っており、寂しい情景でもある。鉄道は本来、文明がもたらしたものであり、物流の大きな動脈でもあるのだが、この静けさは何だろうか。ある種ホッパーに近い印象を受ける。
 中井精也写真展では、ゆる鉄紀行と題し、いつもの中井らしい心温まる写真が多数出品されていた。NHKBSテレビの番組で取り上げられた写真が多いように思われた。
 また、この日は中井精也の講演会も開かれていて、こちらは満員の盛況で、中井の人気ぶりがうかがわれた。
 講演の中で中井は、「私は常々ローカル線を応援したいと念願している」「写真にはその人の鉄道観が出る」などと話していた。
 さらに、撮影上のこととして、「皆さんは簡単に取り過ぎる。とてもいい題材を見つけたのにあっさりと片付けてしまうが、(どういうフレームがいいか、どういう露出がいいか、などと)もう少し粘って撮ったらいい写真ができる」とも話していた。
 なお、中井精也写真展はつい数ヶ月前にも、同じ水戸線の沿線である下館でも開催されたばかりで、新鮮さはやや薄れていた。
 ただ、面白かったのは、会場に設置されていた鉄道のジオラマ。ジオラマそのものは珍しくもないが、このジオラマは鉄道写真のトレーニング用に作られたものなそうで、ジオラマの周囲にはカメラも数台置かれていて、鉄道写真の実際を体験できるようになっていた。中井の尽力らしいが、オリエンテッドでなかなかいい企画だった。
 ところで、ここ、笠間日動美術館は日動画廊の創業者が設立した私設の美術館で、ルノアールやマネ、ドガ、ゴッホなどとフランス近代絵画を中心にコレクションがすばらしい。
 私はこの美術館を訪れたのはこれで3度目だが、最も好んでいるのは舟越保武の彫刻。「春」、「C夫人」などとあるが、中でも「原の城」(1971年)が気になる。等身大であろう、鎧をまとった全身像で、痛切な悲しさが漂っている。鎧の胴に十字架が施されている。島原の乱に題材を取った作品で、キリシタン兵士たちの慟哭が聞こえてきそうだ。
 なお、もう一つ気に入っている「LOLA」はこの日は残念ながら展示されていなかった。


写真1 池口史子「夕陽」(開催案内パンフレットから引用)


写真2 人気のカメラマンらしく満員盛況の中井精也講演会。


写真3 コレクションの一つ舟越保武「原の城」

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