2015/02/16

みやこうせい『藍を謳う』

 「藍染めの里 羽生の自然・人・こころ」との副題が付いていて、写真集にエッセイが添えられている。
 藍染めの様子、羽生の四季などと美しいカラー写真が、A4判という大きな紙面いっぱいに広がっている。それがまず魅力。
 藍を醸す、藍の水打ちなどと、これまでうかがい知ることすらなかった藍染めの神秘的な情景が映し出されている。
 舞台は羽生。羽生は埼玉県北東部の市。市内北部を利根川が流れ、群馬県に隣接する。とくに羽生は青縞の産地として古くから営まれてきたところ。
 その美しい四季が細やかに大胆に切り取られている。あくまでも幻想的であり、これが藍の里かと感じ入りさせてくれる。
 おそらく取材に際して四季を通じ何度も足を運んだものであろう。あるいは一時期は住み着いていたのかもしれない。それほどに濃密な情景が描き出されている。
 巻末のエッセイには、「写真を撮りつつ、技巧や技法は考慮に入れず、ありのまま対象に向かった」とあり、実際、卓抜なシャッターチャンスや自由な構図からは三脚すら使わなかったのではないかと思わせる不思議な魅力が漲っている。
 藍は日本で古来好まれてきた色。多くは木綿を染めて着物になり、幟になり暖簾になり、職人商人の前掛けになって身近にあった。藍染めは色落ちしにくいこともあって重宝されたのであろう。とくに刺し子を施して仕立て上げれば丈夫なことこの上なく、剣道着として今日に伝わる。
 藍染めは全国各地に伝わるが、それぞれに色合いがあり文様があったものであろう。今日では徳島がよく知られるが、ほかにも伊勢などとあり、著者は羽生に藍の里を見つけたようだ。
 著者はエッセイスト・フォトアーティスト。代表作『マラムレシュ』は、ルーマニアに題を取ってフォークロアとなっていた。
 「対象に向かって、ひとつの構図を決めてアングルを設定し、陰影を勘案し、さらに自らの思い、その時の感情をこめてシャッターを、とっさの判断で、間髪をいれずに押すわけで、理屈を超えた画面が生まれる場合が多々ある」としてある通り、本書は著者渾身の一冊であろう。
 なお、写真で行った場合の対象との距離感と、エッセイにおける対象への思い入れには随分と温度差があるようで面白かった。
(未知谷刊)


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