2015/02/06

恩田陸『三月は深き紅の淵を』

 やや長めの短篇が4部の構成。
 4人の老人に本できしむほどの館に招かれた若い読書好きの男。膨大な蔵書の中から1冊の本探しを命じられるという第1章「待っている人々」。
 傑作をものにしたいと願う女性編集者二人。編集者の間で幻の傑作といわれる著作を求め出雲に旅行する第2章「出雲夜想曲」。
 二人の女子高生が崖から落ちて死亡する。手すりが腐っていたので警察は事故と断定したが、殺されたのだという疑問が広がる第3章「虹と雲と鳥と」。
 ここまで3章分を書いてきて最後の章に至って書き出しや中身をどうするかと腐心する自分が出てくる第4章「回転木馬」。
 この4章は連作のようでもあり、脈絡はなさそうでもあるが、串のように突き刺しているのが「三月は深き紅の淵を」という、今や知る人ぞ知る本。
 曰くありげな話ばかりだが、本を話題にミステリであり本好きには堪らない物語が連なっている。
 本書は単行本が1997年の刊行。著者33歳の作品。実は、恩田陸の著作はこれが初めて。しかも、書店で平積みになっているので人気の作家だろうなとは思ってはいたが、これまで著者が男か女かも知らなかった。
 これはうかつで、読んでみるとなかなか面白い。読みやすいし、軽く読める。
 本書を手に取ったのは、川本三郎の本で紹介されていて、寝台列車の個室を書斎代わりにするというくだりがあって、非常なる関心があったから。
 本書の「出雲夜想曲」に登場するのだが、それは、「これが書斎だったらどうだろう、と隆子は考えた。移動する書斎。……」「この小さな個室の、二段ベッドの上段を小さな収納と本棚にし、車窓の風景を感じながら本を読んだり原稿を書いたりする。とろとろと目覚めると松江。そこで列車を降りて、駅でラジオ体操をして、町に出てごはんを食べ、銭湯につかってまた夕方駅に帰ってくる。……」などというものだった。
 これはいい。是非やってみたいとも思うが、しかし、寝台列車は廃止なって減るばかり、行き先は随分と限られる。
(講談社文庫)


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