2015/01/27

乗り鉄

 乗り鉄とは、鉄道趣味世界の用語で、鉄道に乗っているのが好きな人のことを指す。
 私も鉄道に乗るのが趣味だから乗り鉄ということになるのだろうが、実は私はこの乗り鉄という言い方は好きではない。子供たちがスタンプ帳など持って走り回っているような印象だし、そうでなくとも、そもそもが鉄道好きなんて児戯に類するようなもの、恥ずかしくて大っぴらにできないし、それこそ乗り鉄などといってはそこには旅情が感じられない。
 ただし、鉄道に乗るのは好きでしょっちゅう出かけている。その楽しみは何かと問われれば、列車に揺られあかず車窓を眺めていることだろうか。車内で一緒になった人たちとの世間話も楽しいし、とくにそれがローカル線であればなおさら味わい深い。降り立った町を歩く、おいしいものをいただく、時に温泉に浸かる、そういう風に知らない町を訪ねるのはいかにも鉄道旅行の楽しみ。私は岬が好きだから、岬への旅はとりわけ旅情が深いものとなる。
 私は写真も好きだから、旅行には必ずカメラを持参する。車窓を見ていて気に入った風景があれば時折カメラを向ける。ただし、子供たちのように窓にへばりついているようなまねはしない。そういうことは恥ずかしくてできやしない。
 それでも、旅にはちょくちょく出かけているから写真もたくさん貯まる。ただし、自分が乗っていての写真だから、鉄道そのものが写ることは少ない。このあたりは鉄道写真を撮ることを生きがいにしている撮り鉄の人たちとは違うところだろうか。
 列車に乗りながら写真を写すことはしょっちゅうではないが、メモはよく取る。これは後でというのはダメで、気がついたことがあればその場でメモをする。後回しにすると必ず忘れる。後日曖昧になる。
 私は旅においては入念に準備をする。計画をきっちり立てる。幸い、日本の鉄道は大方の場合時刻表通りに運行されているから大きな狂いはない。もちろん、豪雨や大雪などの自然災害ばかりではなく事故などで遅れる場合もあるし、運転中止などということもないわけでもない。
 旅の準備には下調べが欠かせない。沿線を地図で確認しておく。列車の席を右にするか左に取るかもあらかじめ決めておく。初めて乗る線がもはやないせいでもあるが、撮影したくなるであろうポイントも大方頭に入っている。また、沿線の町々や下車する町のことなども調べておく。理科年表などというものまで調べておくこともままある。
 持参する荷物もきちんとチェックする。旅行計画書、時刻表、地図、メモ帳、カメラは必須で、揃えていくとどうしても荷物は増える。しかし、荷物は少ない方がよいというのが美学みたいなものだから、そこからそぎ落とす。それでもカメラは必ず2台持参し、不慮の事態にも備えておく。
 これが私の鉄道旅行の流儀みたいなものだが、こうして振り返ってみると、撮り鉄も乗り鉄もそう大きくは変わらないのではないかと思えてくる。結局は鉄道好きなのである。


写真1 茫漠たる風景。根室本線厚岸駅付近で。このあたりは汽水域で結氷している。根室行きの列車だが、車両最後尾から撮影したので海が線路の左側になっている。2010年2月12日。


写真2 まるで水墨画の世界。真冬の早朝のため朝霧が立っている。飯山線立ヶ花付近で。手前は千曲川で、この川はこの先県境を越すと信濃川と名を変える。2013年1月13日午前7時14分。


写真3 暮れなずむ鉄路。日没寸前の夕日が線路を照らす。まっすぐ伸びた線路がかえって北海道らしい旅情を増す。留萌本線恵比島駅付近で。2013年7月19日18時44分。

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