2015/01/26

撮り鉄

 先日のこと。貨物列車を観察しに出かけたらあちこちで鉄道ファンの姿を目にすることとなった。これらの人々は撮り鉄、あるいは貨物列車好きであろうか。
 このところは鉄道ブームだが、この鉄道趣味世界も間口が広くて、車両派、時刻表派、あるいは秘境派などという分野もある。また、撮り鉄、乗り鉄などという分類もある。
 ここでいう撮り鉄とは、鉄道写真が趣味という人たちを指し、乗り鉄とは鉄道に乗っているのが好きという人たちといってよいだろう。
 私も鉄道好きだが、JRや私鉄、第三セクターから地下鉄、モノレール、路面電車、果てはケーブルカーに至るまで、およそ軌道を走る鉄道は、その日本の全鉄道の全線を完乗したほどで、いわば乗っていない路線は一つもないというほどだから徹底した乗り鉄。
 その乗り鉄の私がこのたび撮り鉄の列に加わってみたのだが、これがなかなかに新鮮で、これまでにない体験だった。
 武蔵野線南流山駅。先日は寒さ厳しい土曜日だったのだが、9時48分頃通過する貨物列車を待ち受けるべく9時半頃ホームに着いたらすでに4人が陣取っている。カメラを担いでいていかにも鉄道ファンである。
 私は貨物列車が見たくてこの駅を訪れたのだが、そもそもが貨物線だった武蔵野線の駅ということで貨物列車の観察には適しているだろうと踏んだのだったし、その撮影にも絶好であろうと読んだのだったが、皆、同じように判断したもののようだった。
 しかも、接近する貨物列車を撮影するための最適ポイントは一箇所しかなく、そこはすでに埋まっている。遅れて行った私にはかろうじてレンズが向けられるわずかなスペースしか残っていなく、もとよりアングル的には不満のあるところ。早くも撮り鉄の厳しさを知らしめられたという次第。
 列車が近づいたら一斉にシャッターが切られた。全員が連写機能の充実したカメラのようで、カシャカシャカシャとまるで速射砲のようにシャッター音が続く。いかにも撮り鉄らしいところで、パチリパチリとのんびり1枚ずつシャッターを切っている者など一人もいない。
 9時48分の列車はぴったり定刻通り通過していった。次の列車は10時26分までない。ところが、30分以上も間があるのに、誰も動こうとしない。絶好の撮影ポイントの場所は先客が陣取ったままである。この寒さの中で。
 そして、この列車が通過したら、全員ばらばらと駆けだした。次の列車は反対方向から来る。従ってホームの反対側が撮影ポイントなのである。しかも列車接近の9時30分までわずか数分しかない。私もつられて急いだのだが、そこでもすでに数人が陣取っている。初めの場所を捨ててまでもこのポイントを確保したかった人たちであろう。
 列車が接近してその理由がわかった。この列車がこの日この時間帯のハイライトだったのである。頻繁に出入りする電車を避けて貨物列車の全体をとらえようとするとこの列車が最適だったのである。
 なお、貨物列車には貨物時刻表という旅客列車とは別に専用の時刻表がある。私もそうだが、皆がこの時刻表で下調べしていたのであろう。乗り鉄にとってもそうだが、撮り鉄にとっても時刻表は極めて重要なものなのである。
 撮り鉄は、鉄道趣味世界の醍醐味であろう。美しい鉄道のある風景を求め、その一瞬を切り取っていく。鉄道写真家と呼ばれるプロの人たちはすべてこのカテゴリに含まれるのではないか。
 しかし、撮り鉄ならではの厳しさもあるはず。絶景を求め撮影地点を探す。カメラや交換レンズ、三脚などと機材は重いし、風景をどこに選ぶかはもちろんだが、列車の時間、天候なども考慮しなければならないだろうし、日に数本しか走らないようなローカル線ならば待ち時間も相当になるはず。厳冬や真夏などと厳しい季節もあるだろう。
 先日のわずかな経験だけでもその難しさがわかった。撮影する位置取りがままならなかったことはさておいても、接近する列車を待ち構えてシャッターを押す。これがなかなか難しい。単に写すだけなら容易なことだが、フレームにきちんとはめるには経験が必要なようだ。
 私もズームレンズを24‐105ミリと100‐400ミリの2本持参したが、何ミリならフレームアウトしないで納められるのか。ほかにもシャッタースピードや露出などと設定していかなければならないし、太陽の向きと列車との位置関係も大事だし、これらを瞬時に判断していかなければならないから大変だった。
 私は撮り鉄ではないが、随分と鉄道の旅は行っているから写真もたくさんある。ただ、撮り鉄ではないので、つまり、自分が列車に乗っていて撮影しているから、肝心の鉄道が写っていないものも少なくない。また、写真を撮るのも好きだが、撮り鉄のようにそれを第一義として撮っていないし、あくまでも記録として押さえているようなところがあるから、写真としてのできは今一つなようだ。これが乗り鉄と撮り鉄の違いといえば言えるか。それでもアルバムの中からいくつか探してみた。



写真1 マッターホルンとゴルナーグラート鉄道。スイス側麓の町ツエルマットから登山鉄道で約30分で展望台に到着する。2005年7月16日。


写真2 まだ夜も明けきらぬ厳冬の飯山線三才駅。列車は越後川口行き。激しく叙情を感じさせる。2013年1月13日午前6時01分。


写真3 パリ北駅に着いたロンドン発のユーロスター。大きな荷物を抱えて降り立ってくる風景はいかにも国際列車らしい旅情が漂っている。2014年1月19日。

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