2015/01/15

ピエール・ルメートル『その女アレックス』

 パリの街角で若い女が誘拐された。目撃証言によると、女は30代で美人。大男に拉致され車に乗せられて連れ去られたらしい。手荒な手口だったという。
 捜査にはパリ警視庁犯罪捜査部班長のカミーユ・ヴェルーヴェン警部があたった。
 カミーユは「捜査の対象は二つ。誘拐犯と被害者。誘拐犯はどこのどいつかわからない。だが、被害者は、もしかしたらこのあたりの住民かもしれない。家の近くでさらわれた可能性が高い。」と考えた。しかし、どのように聞き込みを続けても被害者につながる情報は得られなかった。
 誘拐された若い女。名前はアレックス。木枠で組まれた檻に閉じ込められた。檻は身体を動かすこともできないほどきつく、ロープで天井から吊り下げられていた。部屋は廃工場の一室らしい。
 男はアレックスに対し「殺してやる」と叫んだもののとくに手出しはしていない。しかし、その狙いはすぐにわかった。陰湿な攻め方が始まったのだ。
 身の毛もよだつとはこのことか。陰惨な場面がこれでもかと続く。それにしても、男がアレックスを誘拐したのはなぜか。しかもこれほど陰湿な手口で攻め続けるのはなぜか。
 この理由がまったくわからない。そしてカミーユの捜査にも進展は見られない。
 これが第一部。実はこの小説は三部構成になっていて、第二部そして第三部とどんでん返しが続く。その展開はなかなか想像ができない。
 そして三部を終始骨のように貫いているのがカミーユの捜査。また、カミーユその人と、そのカミーユを取り巻く部下のルイやアルマンなどと個性豊かな人物描写が魅力的で、物語を豊かにしている。そして次第に明かされるアレックスの正体。
 本書はフランスのミステリー。誘拐事件に刑事たちが取り組むという物語だが、最大の謎は誘拐されたのはなぜアレックスだったのかということ。誘拐犯の男とアレックスの関係はどういうものかということ。その謎がカミーユたちの捜査で次第に明らかになっていく。
 日本ばかりか世界的にも警察小説花盛りの今日。フランス現代の警察小説というのも珍しく、読んでみるとこれがいかにもフランスらしいというのか、一筋縄ではいかない凝ったものだった。
(橘明美訳、文春文庫)


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