2013/12/25

映画『少女は自転車にのって』

 サウジアラビア・ドイツ合作映画。数々の国際映画賞を受賞している。監督はサウジアラビア初の女性監督だというハイファ・アル=マンスール。また、長編劇映画としては自身の処女作らしい。岩波ホールで上映されている。
 サウジアラビア映画とはどういうものなのか、非常なる興味があった。そもそも、サウジアラビアには映画館すらまともにないらしい。そういうところで作られた映画。もっとも撮影は全編サウジアラビア国内で行われたらしいが。
 サウジアラビアの生活が描かれている。テレビニュースなどでたまにアラブの社会のことが放映されることがあるが、実際の生活については垣間見ることすら少なくて、この映画を見て激しい衝撃を受けた。
 イスラム教の厳しい戒律の下での生活。その驚くべき実態を世界に知らしめたそのことでの価値がまず第一にこの映画にはある。そして、それ以上にこの映画が見るものに感動を与えるのは、この映画には愛と希望があるからであろう。
 主人公はワジダという少女。10歳。明るいお転婆娘で、女子に厳しい制約を課す戒律に反抗心が強い。
 とにかくイスラム社会は男尊女卑。それもサウジアラビアは徹底しているようだ。
 女性は他人の前で肌をさらしてはいけないということで、外出する際にはアバヤというベールで全身を覆い、ヒジャブと呼ばれるスカーフで目の部分だけを除いて頭から顔まですっぽりと覆った服装が当たり前。
 肌をさらすことはもとより大声を出すこともはばかられること。だから、人前で歌を歌ったりしてはいけないし、学校では少女には体育の時間すらない。もちろん男女別学で、男の子と手を組むことなど論外。
 しかし、男子には一夫多妻制で、4人まで妻をめとることができるし、早婚も認められていて、少女は10歳にもなると結婚させられることもある。
 ワジダは男の子のアブダラが友達。アブダラの乗っている自転車がうらやましいワジダは母に自転車を買ってくれとせがむが、母は女の子が自転車に乗るなってとんでもないといって相手にしない。
 それで、小遣いを貯めて自力で買おうとするが到底たりない。自転車は800リヤルもするのだ。
 そうしたところ、学校でコーランの朗唱大会があり、優勝者には1000リヤルの賞金が出されることに。
 ワジダはコーランの朗唱が大嫌いだったのだが、賞金のために一生懸命に練習をする。
 その結果、ワジダはついに優勝。表彰式で校長から賞金は何に遣うのかと問われたワジダは、自転車を購入すると答える。ところが、校長はパレスチナ難民に寄付をしなさいとの指示。
 呆然と泣きながら帰宅したワジダ。家では母も何か涙ぐんでいる様子。母に何があったのか。
 実は、この映画はこの母が重要な役割を担っている。娘にイスラムの教えを諭しながらもどこか大目に見ているし、お転婆娘が愛くるしくてしょうがない。
 自身も、家にいる時には思いっきりおしゃれをしているし、外に働きに出ていてこれは珍しいことのようだ。そういう因習が何かと煩わしいく感じており、学歴もありすでに新しい時代のムスリムのようだ。
 母と娘が心を通い合わすラストシーンが印象的だ。この愛と希望がこの映画を救わせている。だから、この映画は単なるプロパガンダを越えて感動のドラマとなっている。


写真1 主人公のワジダは因習にとらわれない活発な少女(公式ブログから引用)


写真2 母と娘が女同士心を通い合わす印象的なラストシーン(公式ブログから引用)


写真3 ワジダは男の子のアブラダが友人(公式ブログから引用)

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