2013/12/05

ジェフリー・アーチャー『死もまた我等なり』

 今春刊行された『時のみぞ知る』を第1部とするシリーズ「クリフトン年代記」の第2部。
 前作で物語は1919年から始まっていた。主人公はイギリスの港町ブリストルに住む少年ハリー・クリフトン。貧しい家庭に育つが、母親の愛情と周囲の人々の善意を受けながらハリーは成長していく。奨学金を得て上級学校へ進みやがてオックスフォードへ。
 一方、ハリーは親友であるバリントン海運の御曹司ジャイルズ・バリントンの妹エマと恋仲となり結婚することに。しかし、教会での式のさなか、その結婚に異議を唱えるものが出てきて中断。エマはハリーの母親違いの妹だというのだ。
 折から、ナチス・ドイツは周辺諸国への侵略を拡大させており、イギリスもついに宣戦布告することに。
 ハリーも祖国への忠誠を誓い、海軍への入隊を志願するがかなわず、そこでハリーはエマから遠く離れるためにもと貨物船の船員となってイギリスを出る。
 ところが、ハリーの乗った船はドイツのUボートの魚雷で沈没、救助されてニューヨークにたどり着く。貨物船で一緒だったアメリカ人のトム・ブラッドショーも救出されるが、トムは病院のベッドで息を引き取る。そこで、ハリーはとっさの判断でトムになりすます。ところがトムは逃亡兵だったために、上陸と同時にハリーは逮捕されてしまう。
 第2部は、今さら自分はハリー・クリフトンだと主張しても証明するものを持たないハリーは有罪となり収監されてしまう場面から始まる。
 ハリーの刑務所での生活、ハリーを探しにアメリカに渡ってくるエマ。ハリーは知らなかったが、エマはハリーの子を産んでいたのだった。
 ハリーが刑務所で綴った日記。その日記を刑務所で同じ図書係だった男が出所に際しハリーから借り受けて持ち出し、勝手に自分の名前で出版すると、これが大ベストセラーとなる。
 軍隊に志願すると出所できる制度を利用しハリーはついに出所。戦線でハリーは負傷、死線をさ迷う。しかし、意識が回復するやついにエマと再会。病室のベッドのかたわらにはハリーとエマの息子のセバスティアンの姿も。
 一方、ジャイルズは戦功を得て英国庶民院(下院)議員に立候補するや当選。
 他方、バリントン家もサー・ウォルターが老年で死亡。後継したヒューゴも不慮の死亡。ジャイルズか、ハリーか、バリントン家の相続が焦点に。
 ハリーがヒューゴーの子と認定されれば、誕生の早いハリーがジャイルズを押さえてバリントン家を継ぐこととなる。
 本書第2部は、果たしてそのなり行きやいかになるかというところで終わる。
 第1部から第2部まであらすじの紹介が長くなってしまったが、とにかく次々と山が訪れるエピソードが秀逸で、登場人物も個性豊か。ドキドキハラハラ息もつかせぬ展開が続く。これぞアーチャー一流のエンターテイメント。まれに見る面白さと言える。
 アーチャーの作品はそのすべてを読み尽くしてきたが、アーチャー老いてなおこの健在ぶりは驚嘆するばかり。イギリスではすでに第3部が刊行されているという。その早い翻訳が待たれるところ。
 アーチャーの小説は当たりはずがない佳品ばかり。もし、小説が好きで、まだ、アーチャーの作品を読んだことがない向きには、是非手に取られんことをお勧めする。
 その際、本書「クリフトン年代記」第1部からでもいいが、あるいは、初期の作品、『百万ドルをとり返せ』や『大統領に知らせますか?』、または傑作『ケインとアベル』、その姉妹編『ロスノフスキーの娘』から入るのもいい。私の好みでいえば『ロスノフスキー家の娘』が断然いい。いずれも新潮文庫。
(新潮文庫上・下)


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