2013/09/04

最新学術的溶接トレンド

 9月3日。岡山で開催中の溶接学会秋季全国大会2日目。
 もちろん学会の講演大会だから学術論文の発表が行事の中心で、3日間の日程で会期中発表される論文数は、今期は172件に上っている。ただ、この総数は昨年2012年の193件、一昨年2011年の201件に比べて10%強の大幅な減少となっていて、この総数から見る限り学術上の溶接研究のポテンシャルが低下したように思われるが、2年連続して200件の大台を割ったことは経済的に不調が続いたことに加え、たまたま今年は次週にIIW(国際溶接学会)の年次大会が控えていたことも論分数が減少した要因になっていると思われる。
 発表される論文の題目を把握することは、学術上の溶接の最新トレンドを知る上でも興味深いこと。
 論文を分野別に整理したみたところ、プロセス関係では最も多かったのはFSWの5セッション26件で、この傾向は昨年とまったく同じ。つい数年前までは最多論文数を獲得していたレーザはこの数年来減少が続き今年は3セッション16件となっていて、昨年の20件をさらに下回ることとなっている。
 FSWについては、ここ数年来最多論文数となっているが、今年はとくに適用する材料の多様化が進んでいて、FRPや異材接合にも応用範囲が広がっているのが特徴だった。
 また、学会の大会会場にわざわざ足を運んで有効なことは、論文内容を把握できることのほかに、直接顔を合わせることによる情報交換が進むことだろう。
 とくに私のような立場のもにとっては、会場をうろうろしながら大学の先生方や企業のエンジニアの人たちと歓談できることは貴重な機会となっている。
 なお、2日目の講演会で注目されたのは「溶接構造物の安全・安心を支える実大実験」と題して行われたフォーラム。
 この中では、コンテナ船、橋梁、パイプライン、原子力プラントなどの各分野ごとに取り組み状況が報告されていて大変興味深いものだった。
 構造物の安全性評価において実大実験を行うことは極めて重要な取り組み。このフォーラムの中でも、コンテナ船の折損事故について実大実験を実施することによって脆性破壊の実際が把握できたとしていたし、橋梁へレーザ溶接を適用する適否について実大実験を行って安全性を評価したと述べていた。
 実大実験は、実物大の構造物を製作し、それを破壊試験を行うことだから費用も莫大だし容易に実施できることではないが、日本で各分野で実大実験が進んでいることは、日本の構造物の安全性確保に対する取り組みが世界に先駆けていることを示すものでもあり、大変心強いものだった。



写真1 実大実験をテーマに行われたフォーラムの模様。やはり関心が高いらしく満員の盛況だった。


写真2 学術論文の発表。写真は表面改質のセッション。


写真3 会員同士の懇談は貴重な情報交換の場。

お勧めの書籍