2013/08/30

映画『少年H』

 降旗康男監督作品。原作は妹尾河童の同名小説。1997年の刊行で、当時ベストセラーになった。
 妹尾の自伝的小説だが、当時原作を読んで感動した覚えがある。心温まる物語だったという記憶も残っていた。
 このたび映画を見て、 やはりいい物語だと思った。戦時下、市井にありながら矜持をもって生きる家族が描かれていた。ただ、原作と比較する必要もないのだし、しかもすでに原作の詳しいところは忘れてしまっているのだが、心温まる物語ではあるのだが、何かおとなしいという印象も残った。その分感動も薄かった。
 戦時下の神戸。洋服し立て職人の盛夫。客には西洋人が多い。その妻敏子はクリスチャン。家族を連れて教会に通っている。主人公は長男の肇。母が編んでくれたセーターには胸に大きなHの文字。それであだ名がエッチ。好子という妹がいる。
 肇は何ごとにも興味を持つ活発な少年。わからないことは何でも父親に聞くと、父は冷静に答えてくれる。
 その父が肇に対し、アメリカには摩天楼があり、日本の何十倍もの車が走っていると教える。肇は、何でそんなアメリカと戦争をするのだと疑問に思う。
 ある日、客先に西洋人が多かった父がスパイ容疑で逮捕される。肇が見ている前で連行されたのだが、父は母と妹には内緒にするよう命じる。
 戦時色が濃くなり、ついに開戦。初めは勢いのあった日本軍もほどなくして敗色が立ちこめる。本土来襲が続き、神戸の町も焼夷弾で火の海になる。
 中学に進んだ肇。学校は軍事教練の毎日。敗色を口にして、学校付きの将校に殴られる肇。
 やがて敗戦。この日を境にすべての価値観がひっくり返った日本。もはや肇がなぜと父親に尋ねても、父は何も答えてくれない。この映画のクライマックスはこの場面だろう。そして、手のひらを返したような人々に裏切られたと感じた肇は自死を選ぶ。
 自死に失敗した肇と、抜け殻のようだった父がやがて起ち上がる……
 映画はこのようなストーリー。戦時下の家族を描いた物語に新鮮味はないが、盛夫の水谷豊、敏子の伊藤蘭、肇の吉岡竜輝、好子の花田優里音、家族を演じたこの4人がとても好演でほのぼのとしていた。


(映画公式ブログのパンフレットから引用)

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