2013/08/01

北海道の駅弁

 旅行の楽しみといえば行き先々での食事もその一つ。できるだけその土地ならではのものをいただきたい。それが鉄道であれば駅弁も大いに期待したいところ。
 北海道の駅弁といえば、カニ、ウニ、イクラが王者。私も今回もいただいたが、しかしこれらはもはやポピュラーに過ぎるほど。
 北海道の、というよりも日本全国の駅弁の中で私が一押しするのが、函館駅の「鰊みがき弁当」。この弁当が食べたくて函館に寄る旅程を組み立てるほどで、函館駅に着いたなら時間に関係なくとりあえず購入しておく。
 弁当には、身欠きニシンが3切れと大ぶりの数の子が2本。ほかに茎わかめの醤油漬けや味噌漬けなどが付け合わせに入っている。
 いわばニシンの親子弁当みたいなものだが、ニシン好きにはたまらない。甘露煮された身欠きニシンの甘しょっぱさと、ほどよく味付けされた数の子の歯ごたえにはうれしくなる。
 かつては函館駅で立ち売りもされていたし、しばらくは大連絡橋の階段際の弁当売り場でも売られていた。駅舎が新しくなった10年ほど前からは改札内では売られていなくて、改札口を出たすぐのところの弁当売り場に置かれている。840円。
 今回の旅で新発見した弁当が函館本線と留萌本線が接続する深川駅の「深川そばめし俵おむすび」。米とそば粉をそばつゆで一緒に炊いたごはんで、俵状にのりで巻いてある。大変に珍しい組み合わせで、ねぎや揚げ玉なども入っているようだが、そばの香りがしてこれは本当においしかった。改札口を出たすぐ隣の物産品のコーナーに置かれてあった。350円。
 根室本線帯広駅の「ぶた八の炭焼豚とんにぎりっ子」も味わい深い。いかにも畜産王国帯広らしい食材で、豚肉とご飯を醤油や味醂で味付けしてあり、俵状のおにぎりを豚肉とのりで巻いてある。
 この帯広駅では豚肉を使った様々な弁当を売っているのだが、このおにぎりはなかなかボリュームもあり、豚肉の炭焼きらしい香ばしさもあってうれしい。400円。
 今度の旅ではほかに函館本線森駅で元祖森名物「いかめし」もいただいた。デパートで行われる全国駅弁大会で上位の常連だが、駅のすぐ前の阿部商店というところで売られている。500円。お土産に買う人も少なくないらしい。
 夕食では、酒と肴を一緒にいただきたい。とくに高価なものが欲しいとかそういう要求は全くないが、できればその土地のものをいただきたい。
 それと、旅は一人でいいが、できれば夕食時だけでも相手が欲しいと思う。一人ではやはりわびしいからで、そういうこともあって、カウンターがあって親父や女将と対面できるような居酒屋や寿司屋を選ぶ。
 今度の旅はわずかに3泊のこと。もちろん夕食も3回だけなのだが、このうち岩見沢では、当地のB級グルメというもつ焼きをいただいたほか、札幌では寿司屋に入った。
 ところでここで特筆したいのは、留萌の駅前にある丸長というそば屋のこと。
 そば、ラーメンからカレーライス、カツ丼などを提供するごく庶民的な食堂で、(店構えからだけ判断するなら)とくにおいしいという評判があるわけでもないようだが(繁盛していたからあるのかもしれない)、ここで酒を頼み、メニューにはなかったものの何か肴はないかと注文したら、出てきたのがすばらしい小皿。
 一つはニシンの切り込み。切り込みとは北国の言い方で、魚の塩漬けのこと。ニシン、数の子、卵巣を塩で漬け込んだだけのもののようだが、これが美味だった。さほど漬け込んでもいないようで、塩辛というほどにはしょっぱくもなかったが、とにかく酒がすすんだ。
 もう一つが身欠きニシンの燻製。たっぷりの唐辛子で味付けされていて、なかなか辛かったがこれも魚が進むほどの珍味だった。ニシンについてはいかにも北海道らしく様々な料理が各地各家ごとにあるのだろうと思われた。
 あまりに私が出てくるもの、その都度おいしいおいしいと言うものだから、女将が喜んでサービスだといって出してくれたのがイカの天ぷら。これも急遽揚げたもののようで、それだけに熱々で、何事によらず熱いものが好きな私としてはとてもおいしくいただいたのだったが、それよりも何よりも、メニューにないものでも出してくれる、心意気に感じてサービスの品もつくってくれる、そういうおもてなしの気持ちがうれしかったのだった。

 


写真1 函館駅「鰊みがき弁当」


写真2 深川駅「深川そばめし俵おむすび」


写真3 帯広駅「ぶた八の炭焼豚とんにぎりっ子」

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