2013/07/31

北海道鉄道紀行2013夏

 このたびの北海道鉄道旅行では7月17日から20日までの4日間にわたり鉄道を乗り継ぎ、その総乗車距離は1699.2キロに及んだ。このキロ数は直線にすると札幌から青函トンネルをくぐり東京を経て実に京都の手前に達するもので、我ながらなかなか物好きなことではある。
 とくに北海道の鉄道ではローカル線の旅がすばらしく、印象深い鉄道風景が少なくなかった。
 留萌本線の増毛駅はいかにもローカル線の行き止まりの駅らしく独特の風情がある。この駅で降り立つのは3度目だが、初めて降り立ったのがちょうど10年前、この時がJR全線踏破の瞬間だったことでもあり、私にとっては何度降り立っても感慨深い駅だ。
 この駅は無人駅で、短いホームと小さな駅舎があるだけだが、列車を降りて後ろを振り返ると、小高い丘の上に木陰に隠れるようにたたずむ灯台を見るとことができる。増毛灯台で、白と赤のまだら模様に塗装されたずんぐりした灯台だが、列車とホームと灯台がワンショットに入る風景は全国でもここ増毛駅以外では見られないものであろう。
 増毛はニシン漁で栄えた町だが、すでに往時の面影はなく、知られているのはこの頃全国区になりつつある国稀という酒蔵があるくらいなものだし、灯台のすぐ足元にある駅だなんて、いかにもローカル線の旅情がいや増すことだった。
 鉄道の楽しみは車窓からの眺めもその一つ。我ながら不思議なことだが、列車に乗っているとうとうとすることもなく飽かず窓外を眺めている。時にメモをとり、時にカメラを向ける。
 過ぎゆく町を眺め、田畑の様子を見る。山々や川の流れを見ては思いを致す。とくに北海道は広大だから、ここでしか見られない風景が多くて楽しい。
 また、車内風景も思わぬ出会いがあって楽しいもの。ボックス席で一緒になった人などと話をするのだが、車窓に流れる見知らぬ作物の名前などを教えてもらったりして話が弾む。
 鉄道は好きだから、朝から夕方まで乗っている。ただし、日が暮れてからは極力乗らないこととしている。車窓に楽しみが減るからだが、それでも、町の灯りが見えるような路線では夜の列車もそれなりの風情があるし、とくに暮れなずむ風景などは旅情をかき立てられる。
 増毛からの帰途、留萌から深川に向かう列車がちょうど夕暮れにさしかかり、絶妙のシャッターチャンスを得たようなこともあった。
 今回の旅では、函館本線の森駅と函館駅の間を往復した。渡島半島の東から南に位置し、この間は駒ヶ岳の麓をぐるり回り込むのだが、二つのルートがあるのである。
 ちょうど駒ヶ岳を中心にして円を描いたようになっていて、一つは駒ヶ岳回りと呼ばれていて、駒ヶ岳の西側を通っており、大沼公園などを経由しすべての特急列車をはじめ大半の列車はこのルートを使う。
 もう一つが砂原回りといって駒ヶ岳の東側、海岸沿いを通るルートで、鹿部などを経由しているが、下り列車は日に6本しかなく、上りは函館に向かう需要があるせいか多少本数が増えるが、それでも日に8本である。
 7月20日森12時00分発砂原回り函館行き普通列車。長万部から来た列車で1両のワンマンディーゼル。
 森駅は駒ヶ岳回りと砂原回りが合流するところで、駅構内からは駒ヶ岳が真正面に見えている。
 駒ヶ岳は標高1131メートル、二つのピーク持つ活火山である。見る位置によってピークが一つに見えたりその姿を変えるが、活火山らしい荒々しさと同時に独立峰らしい美しい山容も見せていて味わい深い。
 途中、渡島砂原付近で、砂浜の平坦な波打ち際に近いところに灯台が見えた。灯台といえば当然のこと高台にあるものだが、遠望しているから定かではないものの、このように砂浜にあるというのは極めて珍しく、私はここを通るたびに不思議に思い、一度降り立ってみたいと考えてはいるのだが実現できないでいる。
 なお、七飯の手前あたりで建設中の北海道新幹線が見えた。函館到着は13時26分で、ここでも中国系観光客でごった返していた。

 


写真1 増毛駅に停車中の到着列車。背後の木立の中にかすかに灯台の先っぽが見える。


写真2 暮れなずむ夕景に鉄路が鈍く光る。果てしなさに旅情がかき立てられる。


写真3 森駅構内から見た駒ヶ岳。真夏の昼下がりなのに深閑とした叙情だ。

お勧めの書籍