2013/07/12

『エミール・クラウスとベルギーの印象派』展

 不覚にもエミール・クラウスについてはこれまで知らなかった。
 不覚にもというのは、このたびの展覧会を見て大変すばらしかったからに他ならない。
 エミール・クラウスの展覧会が日本で開催されるのはこれが初めてのことらしいが、それにしても随分と海外でも美術館には足を運んでいるつもりだったが、印象深く気にはとめていなかったらしい。
 エミール・クラウス(1849‐1924)はベルギー印象派の画家ということだが、その作品を見て本家フランス印象派の影響の色濃いことがすぐに感じられた。
 それも、モネやミレーなどと多くの画家の画風を参考にしたようで、それが直ちに自分の作品に投影されたようなところもあり、まるで印象派グループ展のような様相とも思えたほどだった。
 <野の少女たち>(1892年頃)は、少女たちが秋の野道を裸足で歩いている様子だが、わざと逆光でとらえた陰影が面白く、また、麦畑の黄金色がきらきらと輝いて見事だった。どうやらクラウスは逆光を好んで用いたようだ。
 <昼休み>(1887‐1890年)は、田園風景を描いてミレーの影響を感じるが、ミレーの暗さはみじんもなく、若い女性を手前に置いた大胆な構図と、後ろ姿でもその美しさがわかる細やかさがすばらしい。
 <レイエ河畔に座る少女>(1892年頃)は、デイジーだろうか、可憐な花が咲き乱れる草むらに座り込んでいる少女を描いていて、とても安らぎを感じる。
 ほかに、<タチアオイ>などという作品もあって、タチアオイは季節感が率直に感じられるということで私の大好きな花なのだが、そのタチアオイが厳しい夏の陽光に負けずにまっすぐ咲いている様はうれしかった。
 総じてクラウスの絵は、飾らない素朴な美しさがあり、モチーフはほのぼのとしたものが多くて明るく穏やかな気持ちにしてくれる。品がよくて嫌みもないから、居間などに飾るにはうってつけの絵かもしれない。
 ただ、好みにもよるが、必ずしも思索的ではないし、土着性も薄いから心の奥に響くような印象とはならないかもしれない。
 なお、この展覧会は、東京ステーションギャラリーで開催されているのだが、復元された東京駅の構内ということもあって、むき出しの煉瓦なども創建時を彷彿とさせて面白いものだった。
(写真はいずれも展覧会場で販売されていた絵はがきから引用)


写真1 エミール・クラウス<野の少女たち>


写真2 エミール・クラウス<昼休み>


写真3 エミール・クラウス<レイエ河畔に座る少女>

お勧めの書籍