2013/06/25

ロアルド・ダール『あなたに似た人』(新訳版1)

 57年ぶりの新訳。旧訳は田村隆一で、これもかつて読んだことがあるのだが、ミステリーにしてはイギリス人らしい風刺の効いたストーリーだという印象があった。
 このたび、田口俊樹の新訳による本書を読んだところ、大雑把な印象は変わってはいなかったが、今回の方がきちんと読んだせいか、その精緻な文章と話の運びに感心した。また、このインスピレーションは当を得てはいないのだろうが、不気味である種の恐怖心を感じさせるところは、私には唐突にもなぜか内田百けん(門構えに月)の短編が思い浮かんだのだった。
 本書は2分冊の1冊目で、本書には11の短編が収録されている。
 とにかく凝ったストーリーが多いし、終わりにはあっと驚くどんでん返しもあるから、じっくりと楽しみながら読み進むことが大事。
 いくつか拾ってみよう。
 「味」は、主人の用意したワインの銘柄当てを楽しむ主人と客人の話。ずばり当てた場合はいつもならワイン1ケースほどの賭なのだが、このたびは高じてついにあろうことか自信のある主人としては娘を賭け、客人は持ち家2軒を賭けることに。それが客人に当てられそうになり絶体絶命のピンチ。さてその結末はいかに。なかなかわかりにくいストーリーだが、主人の妻の言動に要注意。
 「おとなしい凶器」は、妻が警察官の夫を殴って殺す話。その凶器の意外性もさることながら、妻のとった行動は秀逸。妻の通報で駆けつけた警察官たち。見知った顔が多いのだが、妻のリードで思わぬ方向に展開していく捜査。抱腹絶倒の物語だ。
(ハヤカワ文庫)

 


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