2013/06/10
このたびの仙台出張では、足を伸ばして石巻から女川そして気仙沼を2日がかりで訪れた。
三陸沿岸南部から宮城県地方の東日本大震災復興状況を見るのが目的で、東日本大震災については、岩手県沿岸部はたびたび訪れているのだが、この地域は初めて。
また、岩手県沿岸部の取材では自動車を利用して移動していたが、このたびはすべて鉄道とバスによる移動で、このため表面をなでまわした程度のものとなったかもしれないが、ただ、そのために鉄道の復旧状況についてはつぶさに実情を把握することができたものと思われる。
1日目は石巻から女川へ。
まず、石巻へは仙台から仙石線で向かう。ただ、この路線は高城町‐陸前小野間が震災の被害により不通となっていて、代行バスが運行されているはずだが、さてどうなっているものか。
仙石線の起点はあおば通駅。仙石線仙台駅ホーム改良の際、仙台駅の地下を直角に貫いて一駅分数百メートル延伸されて誕生した地下駅。
あおば通を出発すると仙台などを経て4駅目の陸前原ノ町を過ぎすぐに地上に出た。多賀城などと進んで、本塩釜あたりから海岸に出た。日本三景の一つ松島が右窓に美しい。
松島海岸で下車。列車は次の高城町まで運行されてはいるのだが、その先へ代行バスに乗り継ぐためにはここが便利とのこと。なるほど駅前にバスの停留所があった。列車と代行バスとは連絡はされていなくて、40分ほど待たされた。
代行バスは鉄道線路とくっついたり離れたりしながら走っているが、どちらかといえば鉄道の方が海岸寄りに走っているようで、このために津波被害も大きかったのであろう。
駅舎も線路も、挙げ句の果ては路盤も崩されてしまって、かつてどこに線路が敷かれていたのか判然としない箇所もあった。
途中、野蒜という駅では駅舎が流出し、ホームだけはかろうじて原形をとどめてはいるものの、大半の施設が破壊されていた。
沿線では、津波被害の特徴である、すべてのものがなぎ倒され呑み込まれて茫漠たる風景が広がっているが、所々では復旧工事が進められていた。路線を引き直したり、土塁のかさ上げを行ったりしているから、工事の進捗はかばかしくないように思われた。
それでも、岩手県沿岸部のJR路線では工事に着手された様子もなく放置されたままのところが多かったことに比べれば、この路線は石巻そして女川へと向かう重要な路線だけに復旧工事に着手されていたことは心強いことだった。
代行バスには終点の矢本まで乗車していた。仙石線の列車自体はこの手前陸前小野から運行れているのだが、やはりバスとの乗り継ぎのためには矢本がいいということだった。ここまで所要42分だった。かつて列車では10駅18.2キロ29分のところだった。
矢本から再び列車に乗り石巻へ。ここまであおば通から2時間35分。列車でなら1時間25分、快速なら1時間9分のところだった。
石巻からはさらに石巻線に乗り換え女川へ行く予定だが、待ち合わせ時間が1時間もあり、タクシーで市街中心部を回った。
初めに駅正面に見える日和山という小高い山に登った。ここからは石巻の市街がぐるり360度全貌できた。
海岸側には、がれき処理が終わっただけの殺風景な風景が広がっていた。草が一面に生えていて、かえってむなしさがひどかった。山裾には小学校の校舎があって、建物外壁だけは残っているものの、内部は津波にさらわれていたが、幸い、生徒たちは背後の山に駆け上って無事だったという。
また、左手の旧北上川の河口側も同様の風景で、津波が川をどこまでもさかのぼっていった様子がうかがい知れた。中州には石森章太郎を記念する漫画館のドーム屋根が遠望できた。
さらに、右手には真新しい大きな工場の建屋を見ることができた。日本製紙の工場で、被害は甚大だったのだが、急ピッチで復旧してきているということだった。
なお、この日和山が津波をどっしりと受け止めてくれたおかげで、山の反対側にあたる駅前周辺の商店街などは被害は少なかったということだった。
石巻から再び列車に乗り女川へ。ここからは石巻線だが、終点の一つ手前浦宿までしか鉄道は通じてない。そこからはやはり代行バスということになる。
浦宿では駅前に代行バスが待機していた。バスで丘を登り切り女川の町を眼下に一望できたところで思わず息をのんだ。町が壊滅していたのである。
この女川にはかつて一度駅前に降り立ったことがあるのだが、今はどこに駅があったのかさえ判然としない。バスは町に入ってきた方とは反対側の小高い丘の上を終点にしていて、運転手にかつての駅のあり場所を尋ねてやっと見当がつくようだった。
町はまったく建物はなくて、ただ砂地の原が広がっているだけ。土地のかさ上げ工事をしている重機だけが動いている。ほかに魚市場だけは再開しているようだったが、それも往年の女川漁港を考えると数分の一にも満たないものであろう。
写真1 大半の駅施設が破壊された野蒜駅。線路も砂に埋もれている。代行バス車窓から。
写真2 茫漠たる風景が広がる石巻
写真3 今は判然としないが女川駅があったとされるあたり。かつてここは町の玄関にして中心だった。
A5判
314頁
ISBN:978-4-88318-560-3
価格:2,640円(本体価格:2,400円)
A4
138
ISBN978-4-88318-063-9
価格:2,200円(本体価格:2,000円)
溶接学会 溶接法研究委員会
B5判
258頁
ISBN:978-4-88318-060-8
価格:13,200円(本体価格:12,000円)