2013/06/03

この頃の熱海風景

 先週末は熱海に出張だった。熱海には年に数回は訪れていて今回は半年ぶり。今回は熱海で会合があったためで、熱海に出かけるのはこういうことが多い。
 泊まった旅館が熱海駅から海岸に向かって徒歩10数分のところ。下り坂だしぶらぶらと歩いていった。
 駅周辺や仲見世は大勢の観光客でそれなりのにぎわいを見せていたが、途中の商店街はシャッターの降りている店が少なくなかった。
 地元の人の話では、観光客はだいぶ戻ってきているとのこと。だからまずまずのにぎわいなのだが、落とす金は必ずしも訪れる人の数ほどには増えていないのだとも。そういえば、駅から旅館に向かうまでの途中だけでも、1泊2食付きで8千円前後の旅館が2軒もあったくらいだから、熱海の温泉旅館といえども価格破壊が進んでいるのだろうと思われた。
 利用したのは古屋旅館というところ。温泉街の中心に位置していた。到着したところ大変立派な門が出迎えてくれた。武田屋形門という形式で、何でも黒澤明監督の映画『影武者』のセットためにつくられたものを移築したとのことだが、さすがに黒沢監督のことだけに堂々たるものだった。また、門の上部には武田菱の家紋をかたどった装飾が施されていた。
 この宿は初めて利用したのだが、接客、温泉、料理いずれにおいても申し分なくてすばらしいものだった。
 まず接客。応対してくれた仲居さんがとてもよかった。親切だしよく機が利くのだが、かといって先走りもせず押しつけがましくもなくて、微妙な距離感に感心した。また、従業員全般の態度がさりげなくて心地よいおもてなしぶりだった。
 その仲居さんの話によると、この古屋旅館は開業200年になる熱海で最も古い旅館だとのこと。創業は1806年ということだから、これには驚いた。
 なるほど、館内に掲示してある写真や額縁類を見るとその由来がわかるようだった。今上天皇皇后両陛下が皇太子時代にご利用されているようだし、東郷平八郎元帥が揮毫しているし、そのせいか海軍の利用が多かったようだ。また、著名な政治家や文人の扁額が数多く見られた。
 料理もすばらしかった。京風懐石だろうが、美しいしとてもおいしくいただいた。品数も多いし量も多いくらいなのだが、夕食朝食ともにおいしくてつい平らげた。
 さて、肝心の温泉。ここの温泉は熱海七湯の一つ清左衛門湯というのだそうで、その源泉がすぐ旅館の門前にあって湯気を噴き出していた。
 源泉は87度もあって、ここはその源泉100%の掛け流しだということだった。風呂は大きくゆったりとしていて、湯温は42度に設定されていた。熱い湯が好きな私としてはやや物足りないが、大勢の客を対象にするからこれはやむを得ない。
 それにしてもこの旅館は静かだ。全館26室というから中規模程度の旅館だろうが、仲居さんの話ではこの日も満室だということだったが、館内でも大浴場でも見かける人はほんとうに少なくて、これは不思議だった。
 旅館は海岸にすぐ近くて、朝食前に小1時間ほど散策したのだが、かつての有名ホテルが看板を変えたりマンションに建て変わったりしている姿が目についた。お宮の松と貫一お宮の像も近かったのだが、貫一もお宮もこの頃の熱海の変貌ぶりには驚いているのではないかと思われたのだった。


写真1 武田屋形門が立派な古屋旅館


写真2 貫一お宮の像とお宮の松(奥)


写真3 海岸通りから見た熱海の風景

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