2013/05/22

美術館紀行:大川美術館

 大川美術館は、群馬県桐生市にある私設の美術館。
 美術館へは、東京方面からなら東武線の新桐生駅か、JRの桐生駅を利用することになる。いずれを利用しても東京からなら2時間前後の所要を見込む必要がある。最寄り駅としては上毛電鉄の西桐生駅ということになり、ここからなら徒歩10分ほどだが、この西桐生の存在を知るものは東京では数少ないのではないかと思われる。
 私は、この大川美術館にこれまでに4度通ったことがあり、考えられるすべてのルートを利用したことがある。
 ここでは西桐生からのルートをたどってみよう。上毛電鉄は中央前橋を起点とするローカル私鉄で、西桐生が終点。終点とはいいながら住宅街の中に小さい駅舎がぽつんとあるだけ。
 美術館へはここからひたすら坂道を登っていくこととなる。美術館は、桐生市の住宅街のはずれ、水道山の懐に抱かれるようにあるのである。美術館からは桐生市街が一望できてすばらしいし、帰途は下りとなるので散策が楽しい。また、下りとなる帰途なら西桐生駅の脇を抜けて桐生駅までもさほどの距離でもない。
 さて、これほどまでに大川美術館へ通う理由は何か。それは松本竣介のコレクションがすばらしいからなのである。竣介のコレクションとしては岩手県立美術館、神奈川県立近代美術館に匹敵するのではないか。竣介好きとしては欠かせない美術館ということになる。
 この美術館は、地元出身の大川栄二氏によって1989年に創設された個人美術館だが、収蔵作品数は6500点にも上り、近代洋画に関する個人コレクションとしてはわが国最大級として知られる。現在は公益財団法人の運営。
 コレクションは、松本竣介と野田英夫を軸に、そこから派生するようにこの二人と交流のあった靉光、麻生三郎、国吉康雄、中村彝、舟越保武らに広がり、さらに影響を与えたピカソ、ルオー、モディリアーニらに及んでいて、なかなかユニークなコレクション形成である。
 館内には松本竣介記念室が設けられていて、その数80点ともいう竣介に関する充実したコレクションはもとより、竣介の人となりや画業を伝える貴重な資料も展示されている。
 コレクションのうち竣介の作品としては、<街>(1938年)がいい。竣介前期の代表作で、100号の大作。竣介特有のブルーが何とも味わい深いし、独自の線を用いたモンタージュ画法が惹きつける。
 大川氏は竣介について「澄み切った美しい線と透明感ある堅固なマチエール。暗いようで明るく、冷たいようで暖かい内面の美が醸し出す、正に『知の美』と覚えたい」と美術館のガイドで語っていてうなずける。
 ほかでは、<少年(子どもの顔)>(1943‐44年頃)が私は好きだ。はにかんだような表情がいい。

 


写真1 大川美術館外観


写真2 松本竣介<街>(美術館で販売されていた絵はがきから引用)


写真3 松本竣介<少年>(美術館で販売されていた絵はがきから引用)

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