2013/04/30

共同浴場

 温泉が好きで、旅先などで機会があれば是非にも入りたいと思う。もっとも、必ずしも温泉を優先して旅行先を選んだり、旅程を組んだりというほどのことでもないのだけれども。
 旅館に泊まった場合には温泉は付いているのだからそれでいいのだが、宿泊はしないけれども立ち寄り湯を楽しみたい場合や、温泉街ばかりのみならず、一般の市街地でも温泉の湧出しているところは少なくなく、そういう場合は共同浴場を利用することが多い。また、この頃では、保養施設として温泉を設けている公共施設も増えた。
 温泉街の中には、共同浴場としての外湯を売りにしているところも珍しくない。浴衣に下駄を突っかけ、タオルをぶら下げて温泉街の外湯巡りをするのも楽しいこと。また、旅館の中には、日中の時間帯などに宿泊者以外にも立ち寄り湯を提供しているところも増えた。
 日本の温泉地で外湯の充実しているところは、野沢、草津、別府、湯布院、別所、指宿などか。道後にも外湯が数軒。
 また、温泉街ではないのに、一般の市街地で共同浴場があちこちに点在している都市もある。その代表例は鹿児島、函館などか。温泉街の外湯もそうだが、市街地の共同浴場は、それこそ住民の共同施設として設けられているものが大半だから、利用する側にもそれなりの心得が必要だが、料金も、100円程度からせいぜい300円くらいが相場だから気軽に利用できる。
 気に入っているのは、市街地にある共同浴場ということでは鹿児島がいい。市内には約十カ所ほども共同浴場があるらしいが、私が鹿児島に行くたびに利用してるのは「みょうばん温泉」というところ。
 鹿児島中央駅からも徒歩約10分とほど近く、住宅街の中にあってひっそりとたたずんでいる。施設は古びていて清潔感にはやや欠けるかもしれないが、何しろお湯がいい。泉質は単純温泉だが、私は、お風呂は熱いのが好きで、そういった意味でもここはいい。
 湯船は三つあって、それぞれに湯温が違う。一番低いので43度ほど。次が45度程度で、最も熱いのは46度から48度くらい。
 この中の最も熱い湯船に浸かっている人はいつだって本当に少なくて、まるで一つの湯船を貸し切ったように楽しめる。正真正銘、源泉掛け流しのお湯があふれる風呂にゆったり浸かっていられることはまるで極楽気分。
 なお、高温の湯に入るこつは、ぬるい方から段階を踏むこと。こうすると、熱い湯では到底足を漬けるだけでも飛び上がるほどの熱さでも、次第に身体が慣れてくるのか、高温の湯にも気分よく入ることができるようになる。いくら好きでもいきなり熱い湯に入るのはあまりよくない。
 もう一つ、この際、共同浴場というものの状況を記しておこう。共同浴場には、タオルはもとより、石鹸もシャンプーも置いていないところが大半で、中にはドライヤーのないところも珍しくはない。
 だから、私は、旅にはタオルから石鹸、シャンプーなど一通りを必携にしている。もちろん、これらの品物は有料で販売もしているところが多いが、旅好き温泉好きたる者、おさおさ用意は怠らない。
 温泉街で外湯の充実しているのは長野県の野沢温泉もその一つ。
 ここには外湯が13もあって、外湯巡りも評判の一つ。どの外湯も入湯無料というのもうれしい。しかも、それぞれに源泉が異なるので、様々な温泉を楽しむことができる。硫黄泉が多いようだ。
 この外湯のうち大湯は野沢温泉のシンボル的存在。立派な木造建築で、いかにも湯殿らしいたたずまい。松山の道後温泉本館をちょっと小振りにしたような印象だ。
 中に入ると湯船が二つ。それぞれあまり大きくはないが、ぬるめ、あつめ、と表示してある。
 まずはあつめの風呂に入ってみた。と、これが実に熱い。足さえ入れられない。で、次にぬるめの風呂に入った。これも熱いが、熱いのが好きな自分としてはこれはとても気持ちいい。
 見ていると、このぬるめの方にすら入れない人が大半で、すごすごと引き上げていく。
 ぬるめでお湯に慣れたところであつめに再挑戦してみた。しかしまだ熱い。そこで、お湯を板でかき混ぜて、少しだけ加水させてもらった。これで何とか肩まで浸かることができた。
 地元の人に尋ねたら、ぬるめで45、6度、あつめなら48、9度にもなっているという。この教えてくれた60年配のおじさんには、加水していたら「水でぬるくしないでくれ」といってたしなめられたほどだった。
 一方、この頃では温泉を引いた公共浴場も全国あちこちにあって気軽に温泉を楽しむにはとてもいい施設。それこそ地元シ住民のための公営の施設だから、低料金で清潔。
 熱い温泉ということで選べば北海道恵山岬のホテル恵風もいい。ここの共同浴場には大小、露天などと5つもの風呂があって、それぞれに源泉も違う。
 内湯に入ると、大浴槽には「中温41℃‐43℃」と表示がある。まずはこれに入った。なかなかいい湯加減だ。入浴客は全員この浴槽に入っている。源泉は炭酸水素塩泉で、源泉温度は60.2度とある。
 次に小浴槽に移った。こちらは「高温44‐46℃」とあった。どうかなと思って入ってみたが、ちょっと熱いがとてもいい。45度か46度くらいか。もともと熱い湯が好きなのだから、大変気持ちいい。まるで極楽の気分だ。ナトリウム塩化物泉で、源泉温度は58.4度とあり、源泉掛け流しである。
 この日は休日でもあったし、地元の人たちが朝から入浴に来ている。この熱い方の風呂にのんびりと浸かっていたら、「あんたよくその熱い風呂に入っていられるね」と驚かれた。地元の人でも入る人は滅多にいないとのことだったが、自分にとってはまさに上々、これほど自分好みの温泉に入れるとは滅多にないこと、大満足だった。


写真1 鹿児島市の共同浴場「みょうばん」


写真2 長野県野沢温泉の外湯「大湯」


写真3 北海道恵山岬の「ホテル恵風」の浴室内。

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