2013/04/25
ケーブルカーとは、ケーブル(鋼索)を巻き上げて運転する鉄道のことで、鋼索鉄道とも呼ばれ、一般の鉄道同様に軌道上を走行するところから鉄道事業法に規定されたれっきとした鉄道の一種である。
日本では、急斜面を上り下りする鉄道として観光地に設置されているものが大半で、一般の人が利用できる鉄道事業法によるケーブルカーとしては、現在、わが国には21社23路線が営業運転を行っている。
軌間(ゲージ)はJRなど一般の鉄道と同じ1,067ミリのものが大半で、路線距離では1,000メートル前後のものが最も多く、最長は比叡山の坂本ケーブルの全長2,025メートル。
最大勾配はさすがにケーブルカーだけあって急勾配のものがほとんどで、高尾登山ケーブルの608‰、高野山ケーブルの563‰などがトップクラス。‰(パーミル)とは千分率のことだが、鉄道線路の勾配を表す単位としても用いられており、1,000メートル当たりの高低を指す。
ちなみに、ケーブルやラックレールを用いない一般の鉄道としての最大勾配は箱根登山鉄道の80‰だが、一般に25‰も超すと鉄道難所となるほど。なお、アプト式ということでは大井川鐵道の90‰が日本最急勾配である。
私はこの日本のケーブルカーにはこれまでにその全部に乗ったことがあるのだが、最大勾配が500‰も超すとほとんど直攀しているような趣だし、車両はまるで吊り下げられているような感じにとらわれる。
ただ、それだけに、全線がトンネルである青函トンネル竜飛斜坑線や黒部ケーブルカーを除けば、ケーブルカーの車窓風景は当然のことながらいずれも絶景である。
山頂駅付近からの眺望ということでは、若戸大橋はもとより遠く関門橋も望め眼下に北九州市が一望できる帆柱ケーブル、相模湾を望み好条件が重なれば東京スカイツリーも見えるらしい十国峠ケーブルなどは格別。
面白いのは生駒ケーブルで、宝山寺線と山上線が連続しているのだが、宝山寺線はケーブルカーでここだけという複線になっているし(実際の運用は単線並列)、箱根登山ケーブルには起終点を除き途中に4つも駅がある。また、立山ケーブルカーや西信貴ケーブルには客車に貨車も連結されていて珍しい。
なお、ケーブルカーには交走式と循環式の2種があるが、現在日本で運行されているケーブルカーはすべて交走式である。交走式とはつるべ式のことで、井戸の釣瓶のように一方の車両を巻き上げるともう一方の車両が降りてくる仕組みのもの。だから、必ず中間地点は行き違いができるようになっている。また、循環式はサンフランシスコのケーブルカーが代表例である。
私は海外でもケーブルカーには随分とあちこちで乗っているが、印象深いのはアメリカのサンフランシスコとポルトガルのリスボンであろうか。いずれも複数の路線があって路面電車のように運行されているのが特徴で、市民の足として利用されている。
中でもリスボンでは住宅街の急斜面をケーブルカーが上り下りしていてとても風情がある。
なお、誤解されがちだが、日本のケーブルカーの場合、車両に乗って最前列運転席で操作をしている者は実は一般の鉄道でいう車掌であって、運転手は最高地点の運転所でケーブルを操作している者のことを指す。
また、ケーブルカーの車両を製造しているメーカーは、近畿車輛など一般の鉄道車両と同じメーカーである場合が大半である。
写真1 交走式では必ず中間地点に行き違い線が設けられている(大山ケーブルカーで)
写真2 日本で唯一複線の生駒ケーブル宝山寺線(実際の運用は単線並列=宝山寺駅で)
写真3 客車に貨車が連結されている立山ケーブルカー(手前が貨車=立山駅で)
A5判
314頁
ISBN:978-4-88318-560-3
価格:2,640円(本体価格:2,400円)
A4
138
ISBN978-4-88318-063-9
価格:2,200円(本体価格:2,000円)
溶接学会 溶接法研究委員会
B5判
258頁
ISBN:978-4-88318-060-8
価格:13,200円(本体価格:12,000円)