スキルアップ講座

ステンレス鋼アルミニウム溶接編

ステンレス鋼アルミニウム溶接編
 はじめに
 産業界に用いられている金属で一番多いのは鉄(鋼・ハガネ)ですが、それ以外でもステンレス鋼やアルミニウムなどが目的に応じて使用されます。食品産業や原子力プラント・液体燃料貯蔵・航空機などの構造物は鉄を用いた場合はいろいろと問題が発生する可能性があるため鉄以外の金属が多く使用されます。金属はそれぞれ性質が異なる特徴を持っているためその適用用途が異なるわけです。今回取り上げるステンレス鋼とアルミニウムについてその代表的な特徴を挙げたら次のようなことがいえます。
 
ステンレス鋼の特徴
 ・錆びない
 ・耐食性が優れている
 ・低温時の強度が強い
 ・外観が美しい
 ◎アルミニウムの特徴
 ・軽い、加工しやすい
 ・電気や熱の伝導がよい
 ・美しく耐食性がよい
 ・リサイクル性がよい
 ・低温時も強度が変化しない
 これらの材料で「ものづくり」を行うとき金属の「接合」という作業は製品の強度や外観に大きく影響するとても重要な工程です。この作業は一部を除きアーク溶接法で施工されますが、鉄で一般的に用いられる炭酸ガスアーク溶接法とは少し異なるティグ溶接法やミグ溶接法が用いられます。これらの溶接法についてその基本的な知識を解説いたします。
 ティグ溶接法の特徴
 ティグ溶接法の原理を図1に示します。


図1

 ティグ(TIG)溶接法はその名が示す通り、T=タングステンを電極にして、I=イナートガス(不活性ガス)をシールドガスとして使用する溶接法です。この施工法は電極が非溶融なので溶接時のスパッタの発生が無く仕上がり外観の美しい溶接ができるヒュームの発生もほとんど無い環境にやさしい溶接法であるイナートガスを用いるので高品質の溶接ができる数アンペアから数百アンペアまで安定したアークが得られ1ミリ以下の薄板から数10ミリの厚板まで溶接が可能である、などの特徴があります。
 半面、溶接スピードが遅く作業効率が悪い溶加材を加える時は両手操作となるため技能に熟練を必要とする−−などの短所を持っています。
 ティグ溶接法の極性 
 ステンレス鋼のティグ溶接の場合、タングステン電極の極性の選び方で溶接現象が異なり図2のようになります。その結果ステンレス鋼のティグ溶接の場合は、電極径を小さく出来る・溶け込みが深いなどの理由で電極をマイナスに接続した直流アーク溶接機が使用されます。しかしアルミニウムの場合は、その表面が酸化アルミという高融点の保護膜で覆われているために電極マイナスのティグ溶接法では酸化膜を十分に溶かすことができず極性を交流にして使用する交流アーク溶接機が用いられます。


図2

 ティグ溶接用溶接電源
 溶接電源は溶接に必要な大電流をコントロールし、操作性や溶接性をよくするためにさまざまな制御が行われています。そのために溶接機は電子制御やデジタル化が進み、大きな電子制御機器でもあります。最近の代表的なティグ溶接電源はステンレス鋼用の直流溶接機、アルミニウムにも使用できる交流直流兼用の溶接機などインバータ制御でデジタル化された、写真1のような機器が使用されています。またティグ溶接機の一部には一般家庭のAC100V電源で使用できる写真2のような小型タイプの溶接機もあります。


写真1


写真2

 ミグ溶接法の特徴
 ミグ溶接法は、図3に示すように母材と同種類のワイヤを送給モータで供給し、そのワイヤと母材の間でアークを発生させ溶接を行う溶極式のアーク溶接法です。シールドガスには、アルミニウムの場合はアルゴンガスなどのイナートガスを使用しますが、ステンレス鋼の場合には純アルゴンガスではアークが不安定になるためにアルゴンの中に少しの酸素や炭酸ガスを入れて使用されます。ミグ溶接法は、ティグ溶接法に比べ溶接速度を早くすることができ高能率な方法ですが、溶接時のスパッタの発生などが欠点として挙げられます。


図3

 ミグ溶接用溶接電源
 ミグ溶接はアークエネルギーの供給源である溶接電源の他に、電極である溶接ワイヤを安定に送るための送給モータ、作業に必要な溶接トーチやシールドガスを用いて図4のような構成となります。溶接機は直流電源を用いてその極性は溶接中のワイヤ溶融をスムーズにし、またワイヤが溶けるときに発生するスパッタを削減して作業の効率を良くするためにほとんどは電極プラスで使用されます (ティグ溶接の場合の逆) 。


図4

 その他
 電気エネルギーを使用する金属の接合法としてアーク溶接のほかに「抵抗スポット溶接法」も多く用いられます。この方法は、薄板(1〜3ミリ程度)を重ねて2つの電極の間に挟み込み瞬間的に、大電流(1万アンペア程度)を流し、そこに発生する電気抵抗の熱を利用して2枚の金属の点接合を行うもので、電車の外枠などでその打痕を見ることができます。
 
ところで今回ステンレス鋼とアルミニウム材の溶接に関する簡単な解説をしていますが、ステンレス鋼もアルミ材もその仲間にはいろいろな種類があり溶接ができない又は難しい材料もあります。物によっては、アーク溶接を行ったら溶接部が割れてしまうものもあります。従って実際にこれらの材料を使用する場合にはアーク溶接が可能な材料かどうかの吟味を十分に行う必要があります。溶接作業は新たにできあがる構造物の強度や外観を大きく左右するものですので、溶接の設計や作業には絶えず関心を持ってもらいたいと思います。

ダイヘンテクノス 大阪FAセンター/黒田進
出典:【溶接ニュース06年4月18日】

お勧めの書籍