レーザ加工編
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レーザ加工の基礎原理 | |||
レーザ加工とは、レーザ発振器により生成される同一波長でしかも指向性の優れた光をレンズなどで集光し、加工物に照射することにより材料を溶融させることを基本原理にする加工方法である。光をレンズで集光することは、太陽光を虫メガネにより絞り、紙を焼くことを連想させるが、原理は全く同じである。 しかし、太陽光をレンズで集光しても金属の溶融までには至らないのは、エネルギの絶対量が小さく、異なった方向に進む光が混在し、微小スポットに集光できないためである。 レンズにより集光した際の焦点位置でのパワー密度は、太陽光の場合約200W/cm2であるのに対し、レーザ光では108W/cm2にもなる。また、レーザ切断はレーザ光と同軸状に高圧のガス(酸素、窒素、エアーなど)を吹き付けることにより溶融物を除去する加工方法である。この際、形成される切断溝幅は約0・3〜0・5ミリと非常に小さいため、レーザ切断は熱影響や熱歪みの小さい高精度な加工を可能とする。 一方、レーザ溶接は溶接部の酸化防止を目的に低圧の不活性ガス(アルゴン、ヘリウムなど)を吹き付けることで金属を接合する加工方法である。レーザ切断同様、レーザ溶接も従来溶接法と比較し、熱影響や熱歪みの小さな高速溶接を特徴とする。 |
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レーザ加工装置概要 | |||
通常レーザ加工に用いられる加工装置は、炭酸ガス(CO2)レーザ発振器とYAGレーザ発振器に大別される。図1は炭酸ガスレーザ発振器、YAGレーザ発振器それぞれのレーザ加工機の概略図を示したものである。
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レーザ加工の種類と特徴 | |||
高速・高精度、NCによる自動化などに対応可能なことから、レーザ加工機は産業界の様々な分野で広く使用されている。 図3はレーザ照射パワー密度と照射時間によるレーザ加工プロセスの種類を示したものである。レーザ照射時間を短くして照射パワー密度を高めることで、加工プロセスは熱的加工から、非熱的な蒸発除去加工へと移行し、微細加工に適した加工となる。
炭酸ガスレーザの05年度国内総需要は約700台であり、世界の中では欧州に次ぎ米国とともに市場規模の大きな地域の1つである。レーザ加工の種類別では、切断・穴あけ加工が全体の約80%を占め最も多い。次いで溶接加工(約15%)、表面改質加工(5%)の順である。適用分野別では、自動車、電機、ジョブショップ、一般機械、建設、建機、鋼材、一般板金、輸送機械などがあげられる。 一方、YAGレーザについては、LDの採用によるビームの高品質化、高出力化を背景に自動車業界における車体溶接、テーラードブランク溶接などへの適用が急速に拡大しつつある。特に、軽量化、高剛性化を目的に、スポット溶接など既存設備へのレーザ設備の置換えが求められる自動車生産ラインでは、ファイバー伝送が可能なYAGレーザが積極的に適用されている。 |
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今後のレーザ加工機の動向 | |||
レーザ加工の基礎とその種類について紹介した。薄板板金加工から普及したレーザ加工も、今や厚板切断、高速溶接、プリント基板の穴あけなど多様な分野へ拡がりを見せている。しかしながら、レーザ加工機の普及を一般工作機械なみに促進するためには、他の加工方法と比較し明確なメリットが無ければならない。そのためには、レーザ加工のさらなる高品質化、高付加価値化、装置信頼性の向上、イニシャル、ランニングを含めた低コスト化のための技術開発が要求される。今後もますます高度化、多様化するユーザニーズに対応すべきメーカとして積極的な技術開発を行っていく所存である。 三菱電機 名古屋製作所 レーザシステム部加工技術課/荻田平 出典:【溶接ニュース06年4月18日 |
A5判 248頁
ISBN:978-4-88318-125-4
価格:2,160円(本体価格:2,000円)
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産報出版編
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320頁
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