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抵抗シーム溶接機編 最終回

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抵抗シーム溶接機編 第4回
直流式抵抗溶接の溶接条件について

 
Q1 従来の交流式抵抗溶接機の溶接条件については,一般的に溶接手帳その他文献などで知ることができるのですが,直流式抵抗溶接機における溶接条件について教えて下さい。
 
A1

 各ユーザーにおかれては,溶接条件はあくまでも目安であり,最良の溶接条件を得るためには被溶接物ごとに溶接テストを行い,最良の溶接条件を決定すべきでしょう。しかしながら,交流式と直流式とでは実験の結果から大きく異なりますので,以前に当社で行った実験結果の一例を表1および表2に示します。

表1 軟鋼板スポット溶接条件

板厚 電極 最 良 溶 接 条 件
mm DR mm 通電サイクル 加圧力kg 溶接電流A ナゲット径mm 強度kg
0.5 10 10 5 50 3,000 4.5 250
0.8 10 12 6 100 4,800 5.5 380
1.0 12 15 8 130 6,000 6.0 570
1.2 12 20 10 150 6,800 6.2 650
1.6 16 30 12 180 7,600 6.9 (1050)
2.3 16 30 18 250 9,800 8.7 (1850)
3.2 16 50 25 380 12,300 10.0 2600
4.0 16 100 32 450 13,600 12.0 (3800)
6.6 20 200 45 480 15,300 16.2 5500
注意事項 
1)本表に示す被溶接材は熱間延鋼板とし,抗張力30〜32kg/cm2に相当するものとします。
2)通電サイクルは60サイクルの場合を示すものであり,50サイクルの場合は,本表通電サイクル×0.8とする事。
3)板厚の異なる2枚重ね溶接の場合は,薄い方の板厚を基準とする事。板厚の比は1:10まで実験的に可能でありました。電極チップはRが大きいほどナゲット径は大きくなり,引張強度も大きくなります。

表2 アルミニウム合金板スポット溶接条件

板厚 電極 最良溶接条件
mm DR mm 通電サイクル 加圧力kg 溶接電流A
0.5 16 50 5 50 18,000
0.8 16 50 5 80 11,500
1.0 16 50 7 100 13,000
2.0 16 50 8 200 16,000
3.0 16 50 10 250 18,000
4.0 16 50 13 300 23,000
注意事項 
1)アルミ合金の場合は材質が多種多様であり,参考として下さい。
2)引張強度についてJISの規格を参考として,その規格に合致するように条件を設定してご使用下さい。
3)電極は第1表と同じです。

 
Q2 溶接条件の決定に当たっては,どのような条件,および相互関係を考えればよいのでしょうか。
 
A2溶接条件の決定において,次の条件についての相互関係を以下に説明します。

➀ 溶接電流条件(ヒートコントロール)
➁ 加圧条件
➂ 通電時間条件(通電サイクル)

一般的な溶接条件の設定に当たっては,まずは通電サイクルおよび加圧力を決定し,次に溶接電流を溶接条件表付近に設定し,テストを繰り返しながら少しづつ溶接電流を増やしていき,最良の溶接電流を決定するのが良いものと考えられます。しかし,ここで交流式と相違する点は,直流式においては溶着ムラを少なくするためには,できるだけヒートコントロールを100%にすべきです。しかし,100%にした場合に一次側の電源電圧が変動した時に溶接電流をわずか増やしたい時に調節できませんので,ヒートコントロールは80〜90%になるように溶接トランスのタップを切り替えることにより,溶接電流を選定することをお勧めします。

加圧力を増加すれば,それにつれて通電サイクルを一定にした場合は溶接電流を増やさないと同一溶着状態とはなりません。加圧力の設定に当たっては必要最小限の加圧力とすべきで,適当な加圧力の目安としては被溶接物と電極チップおよび被溶接物の溶着面の間からスパッタが出ない程度の加圧力は最良の加圧力と考えて下さい。

上記はSPCを基準として説明しましたが,次に非鉄金属について説明します。

非鉄金属のなかでもアルミニウムまたはその合金の溶接が一般的に多いので,アルミニウムの溶接とその合金の溶接条件について紹介します。ご承知の通り,アルミニウム系の金属は熱抵抗が非常に小さく熱伝導率が大きいため,溶接に当たっては大量の熱量が被溶接物を通って拡散することと,電気伝導も良好ですので通電サイクルをできるだけ短時間とし,大電流を必要とします。

1.2mm以下の板厚の場合は,通電サイクルは5〜13Hzとし,加圧力は80〜200kgとし,とくに通電サイクルを13Hz以上にすると溶着不足が多くなり,被溶接物の表面が汚くなりますので,条件設定に当たっては注意を要します。

溶接条件についての問題点につきましては当社にご一報ください。特殊材質の条件につきましてはテストピースをご送付下されば,実験結果についてご報告申し上げます。

以上,4回にわたって抵抗シーム溶接機について解説してきました。シーム溶接機は電気を食う,フトコロがとれないなどというイメージから,その仕様を控えられていたユーザーも多いことと思います。しかしながら,これまで述べてきましたように,当社の長年の研究・開発によってシーム溶接機はここまで発展してきています。ちなみに,写真1〜4に当社の各種シーム溶接機の一部を,写真5および写真6にアルミニウムシーム溶接のサンプルマクロ写真を示します。

ぜひ,ユーザーの皆さんにはシーム溶接機を使用することのメリットについて見直していただきたいと存じます。


写真1 三頭型直流式シーム溶接機(100KVA)


写真2 縦横型直流式シーム溶接機(75KVA)


写真3 アルミニウム用直流式縦シーム溶接機


写真4 アルミニウム用直流式横シーム溶接機


写真5 適正条件によるマクロ写真


写真6 適正条件でないマクロ写真

 

古川 一敏
愛知産業(株)
出典:【溶接技術2007年4月号】

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