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抵抗シーム溶接機編 第3回

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抵抗シーム溶接機編 第3回
単相直流方式のシーム溶接機について

 
Q1 交流抵抗溶接機と単相直流方式のシーム溶接機の違いについて教えて下さい。
 
A1

 従来の一般的な交流抵抗溶接機は非常に効率が悪く,実際に溶接するために消費される電力は入力電力の20〜40%程度であり,入力電圧に比べて電力の損失が大きくなります。これは,導体のほとんどが電気抵抗およびインダクタンスを持っているために,これらが交流電流すなわち溶接電流を流しにくくするため電力をムダに失う結果になっているからです。

これらの影響は交流電流であるからであって,これを避ける対策としては直流電流によって導体の固有抵抗のみについて考慮すればよく,この純抵抗については導体の断面積を十分大きくすることによって解決されます。この考え方に基づいて各メーカーで直流式抵抗溶接機が開発され,実用化されており,省エネルギー化のため従来の交流式から効率の良い直流式に転換されようとしています。

従来の一般的な直流式抵抗溶接機と言えば,三相整流式抵抗溶接機がその主流でした。一般的に三相整流式にすれば入力KVAが低減し,高効率で,また,三相平衡負荷となるのみならず,溶接電流波形の立ち上がりが緩やかであるので,大容量の抵抗溶接機としては他に追従を許さないものとなっています。しかし,単相交流式と比較しますと,構造が複雑になり,整流装置が大型となり,また,高価であるため大容量の装置にしかメリットが無いものとされ,とくに単相整流式溶接機は省電力にはならず,むしろ単相交流式と同じか,または少し大きいというのが従来の考えでした。

ところが,当社では,単相直流方式のシーム溶接機について,数年来実験および実績を重ねてきた結果,シーム溶接機においてアルミニウムおよびステンレスの厚物,長尺物には顕著な実績を持つことが確認され,実証を得ています。実際,最近のインバータの抵抗溶接電源においても溶接トランスには当社が開発した単相直流式を使用するようになっています。この単相整流式トランスは,以上の技術的な諸問題を解決した単相整流電源装置です。

 
Q2 それでは,直流出力変圧器について教えて下さい。
 
A2

 従来の整流式直流抵抗溶接機は,三相整流式が主流をなしていました。今現在では,単相整流式の抵抗溶接機が経済性の点からその主流をなしています。応用機器を使用されるにあたり,とくに必要な事柄について以下に説明します。

(1)本方式と従来方式との比較従来の方式はスイッチング回路(サイリスタまたはGTOなど)により,通電時間を制御し,変圧器一次側に交流電流を通電し,その二次側を250〜300A級の整流素子を1アーム当たり10〜30個並列に接続し,1装置に60〜180個整流素子を使用することになり,整流素子の取付スペースも相当の容積を必要とし,そのために製造価格も高価となる一方,装置が大型となり設備面積も3平方メートルくらいを必要としていました(図1)。


図1 従来方式の概略図

これらの問題点を解決するため,各メーカーが競って研究開発を進めてきました。本方式では,一番容積を大きく取る整流器群を特殊設計された大容量の整流素子を4〜6個使用し,特殊構造として小型かつ軽量化し,変圧器二次側から整流器群に至る導体によって生じるリアクタンスによる電力の損失を最小限に減らすために,変圧器の二次側コイルと整流素子を装着するための冷却フィンを一体の構造とし,そのため単相整流方式でも省電力を可能にした直流出力の変圧器であり,本変圧器では単相全波整流ですが,3台使用すれば三相六相半の波の整流方式となり,また,大型の装置としては6台使用し,各々3台1組みとして,図2(C)の接続図のように接続図のように,1組をスター結線とし,他の1組みをデルター結線とすれば,各々三相六相半波整流回路を形成する出力形は互いに30度の位相差があるので,十二相半波の整流回路とすることができます。


図2 各種整流方式

本変圧器1台,3台,6台の組合せの接続回路図と各々の組合せの時に,どれだけ出力容量がだせるかを図3に示します。


図3 各種整流方式に対する使用率曲線図

(2)本変圧器の二次コイルの一部に大容量で小型の平型シリコン整流素子のシリコンペレットが,図1に示すように技術的に最小限度に大気中の影響を受けないようにしたものをはめ込むとともに,二次コイルの熱抵抗を極限まで小さくして,小型でかつ大容量の出力電流が取り出せることを特徴とする直流出力変圧器です。本装置の構造を説明しますと,図4のように変圧器は,
➀鉄心・➁二次コイルからなる単相センタータップ式全波整流の直流出力変圧器であり,二次コイルは1ターンごとに区分され,1つのコイルの巻き終わりと,もう一つのコイルの巻き初めは,センターバーに接続され,鋳造によって一体化を図っていますが,これは大電流を流さなければならないので,接続面の接触抵抗による損失を極力無くすためです。のセンターバーに接続され,巻き終わりは➃アノード側冷却フィンに接続されています。この➂,➃の冷却フィンと,➅,➆のカソード側冷却フィンの間に整流素子➄をはさみ,➈さらバネを介して➉ボルトで締め付けられます。整流素子の圧接は全体に均一な圧力で圧接する必要はあり,図4で理解できるようにカソード側冷却フィンは,連結アーム➇により冷却フィンの各々に有る程度の自由度を与える方法によって連結されていますので,冷却フィン1個ごとに3組のさらバネの圧力のみで各々の整流素子は均一に圧接されています。図2(A)のように,この直流出力変圧器を1台使用すれば,単相全波整流式となり,小型の直流式抵抗溶接機としてセットすることができます。この場合,最大入力は25〜100KVA,使用率は9〜15%,最大短絡電流は10,000〜30,000A程度であり,溶接能力としては単相交流式点抵抗溶接機の最大入力45〜165KVAに相当します。


図4 変圧器概略図

図2(B)のように直流変圧器を3台使用し,図のように接続すれば六相半波整流回路を構成することができます。直流式抵抗溶接機として使用した時,最大入力は75〜300KVA,使用率は9%以下,最大短絡電流は36,000〜84,000Aを取り出すことができます。また,図2(C)のように接続すれば十二層半波整流回路を構成することも可能であり,大型の直流電源装置として図2同様に多方面で利用することができます。

本変圧器を直流式抵抗溶接機用の電源として利用すれば,従来の単相整流式抵抗溶接機の大型で構造が複雑で高価であるという欠点を改善し,形状としてはむしろ単相交流式より小型となり,従来の整流式に比較して構造も簡単となります。また,効率においても二次コイル−整流素子−冷却フィン−出力側端子までが一体化されるために,接触抵抗による損失が極小になり,性能は大幅に向上することになります。さらに,制御装置においては,ほとんどマイコン制御の定熱量制御化となり,これらの組合せでより品質の良い溶接が可能となっています。

写真1および写真2に大型ワークおよび板厚の異なるものに単相整流式シーム溶接機で,かつ,定熱量制御を使用した時の実例を示します。板厚が2mm+6mm,ワークの大きさ(タテ×ヨコ)が4m×6m,電流が20,000A,加圧力が1t,スピード(またはヒート・クール)が2.0m/minの条件で好結果が得られました。


写真1,2 大型単相整流シーム溶接機

 

古川 一敏
愛知産業(株)
出典:【溶接技術2007年3月号】

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