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抵抗シーム溶接機編 第2回

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抵抗シーム溶接機編 第2回
抵抗シーム溶接機のメリット

 
Q1 前回は抵抗シーム溶接機の原理と種類について教えていただきましたが,そのメリットについて教えて下さい。
 
A1 当社の抵抗溶接機の中のART製抵抗シーム溶接機については,さまざまなユーザーから好評を得ておりますが,その理由としては,溶接という作業の中で有毒なヒュームガスが出ない,炭酸ガスやアルゴンガス・酸素やアセチレンといったガスを使用しないため,地球環境にやさしい溶接法と言えます。また,強い光,発熱,スパッタ,騒音などの発生がないため,人にもやさしい方法と言えます。
さらに,従来のシーム溶接機に比べて省電力型で,高速作業ができることから,省エネルギーにつながり,コストダウンに大きく貢献できることが挙げられます。
そのほか抵抗シーム溶接のメリットを挙げると,
➀アーク溶接と同様な密閉溶接が可能
➁溶接作業工程および全体のタクトタイムの大幅減が可能
➂誰でも容易に操作できる
➃鉄,亜鉛鉄板はもとよりステンレス,チタンやアルミニウムまで溶接可能
➄消耗品が少ない
➅歪みが少ない
➆後処理が容易
➇ジグの簡素化を実現
などが挙げられます。
 
Q2 それでは,アーク溶接と抵抗シーム溶接を比べた場合,どのような違いがありますか。
 
A2 それでは下記➀〜➈項目で,アーク溶接とシーム溶接を比較してみましょう。

➀ 溶接速度
・アーク溶接:板厚1mmで30〜40cm/分
・シーム溶接:板厚1mmで3〜4m/分と約10倍の溶接速度

➁ 作業者
・アーク溶接:特殊技術者が必要(免許が必要),アーク光・熱・ガス・ヒュームに対する防護が必要。ケーブルなどの保持で体力が必要。
・シーム溶接:とくに免許などが必要無く,女性でも扱える。防護グラスと革手袋くらいで可能。抵抗溶接はI2rt=Qを基本とするため,電流(I)と通電時間(t)と抵抗(r)=加圧力ですべて電気的にしくコントロールできるため,品質を一定にコントロールしやすい。

➂ 溶接品質
・アーク溶接:表面からある程度の確認ができるが,特殊技術者でないと満足な結果は得られない。ビードの研削と後処理が必要。
・シーム溶接:表面から確認しづらいが,ARTの直流トランスおよびARO社のトランスは変動が少なく安定している上に,一度出した溶接条件の再現が比較的容易にできる。したがって自動化または大量生産に向いている。後処理を必要としない。

➃ 溶接部の歪み
・アーク溶接:発熱が大きくワークが歪む。
・シーム溶接:ワークの内部抵抗を利用するので,発熱が小さく,アークと比べて歪みが小さい。また,水をかけたり水中でも溶接ができるため,歪みに対してコントロールできる。

➄ 溶接部への対応
・アーク溶接:ワークの材質が変わった時には溶接条件のみならず,ワイヤやガスも替えなければならない。
・シーム溶接:加圧力・電流が足りていれば溶接条件の変更のみで可能。

➅ 自動化
・アーク溶接:容易ではあるが,歪みのために頑丈なジグが必要なうえに,スパッタ対策を施さなければならない。
・シーム溶接:容易である上に,あまりジグに凝らなくてよい。

➆ 保守管理
・アーク溶接:特殊技術者が休むと代行の者がいない。ガス,ワイヤ,チップ等の消耗品が多い。
・シーム溶接:代行者の手配が容易。電極が消耗品であるが,同時研磨,また,水冷をしており,短時間での交換は必要ない。

➇ 人件費
・アーク溶接:特殊技術者のため,雇用条件が問題。時間当たりの生産性が悪いため,労働時間が長くなる。
・シーム溶接:とくに技能を非地用としないので雇用しやすい。生産性(溶接スピード,後処理など)が高いため労働時間が短くてすむ。

➈ 安全面
・アーク溶接:非常に多くの熱を発生させ,アーク光によって眼球を傷めるおそれがある。スパッタ対策に作業服・保護具が非地用。とくに表面処理鋼板のヒュームは人体に有害なので,対策はとくに必要。
・シーム溶接:溶接の初めと終わりにスパッタが出ることがあるので,保護眼鏡は必要。

 
Q3 それでは,実際のシーム溶接機導入例について紹介して下さい。
 
A3 それでは,大型自動車燃料タンク製造(亜鉛鉄板およびアルミニウム1.6t,2枚重ね)の例についてご紹介します。

導入機種:300KVA特殊立てシーム溶接機(写真)


写真 アルミニウム製自動車燃料タンク用シーム溶接機

導入理由:
➀材質(アルミニウム合金)への対応のため
➁省電力化したいため
➂溶接スピードを速くして製品のコストダウンをしたい要望があった。
➃タンクのシームフトコロが1,5000mmで,従来機では対応できず,ART製製品を導入。導入結果を表に示す。

表 導入結果

  従来機 ART製 備 考
一次電流 約1600A 約250A 客先の電気容量を抑えたい,アルミ化,フトコロの問題より直流トランスを採用
二次電流 約500A 約2000A 高力率
溶接速度 約1.5M毎分 約2.5M毎分 製品のコストダウンに寄与
フトコロ長 1000mm
500mmで反転
1500mm
一度でOK
フトコロの影響うけない

メリット:
➀溶接速度がアップし,すべての溶接が一度に済むので,製造タクトが倍になった。
➁溶接速度が倍になったが,一次側入力電源が減ったので,電気料金を低減できた。
➂残業が無くなり,人件費を削減できた。
➃アルミニウム化が容易にでき,製品の受注に貢献した。
➄アルミニウムの溶接で特殊技術者が必要ない。

 

古川 一敏
愛知産業(株)
出典:【溶接技術2007年2月号】

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