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抵抗シーム溶接機編 第1回

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抵抗シーム溶接機編 第1回
抵抗シーム溶接機とは

 
Q1 抵抗シーム溶接法の原理について教えて下さい。
 
A1 一般にスポット溶接の原理は,2枚の板を重ね,棒状の電極(チップ)で加圧し,電圧を加えて電流を流し,溶接部をジュール発熱によって加熱してワークを局部的に溶融させて溶接材を冶金的に接合する溶接方法ですが,抵抗シーム溶接機では,円盤状の溶接電極を使用し,ワークを挟み込んだ状態で,連続的に回転させながら電流を断続的に通電することで連続した気密・水密性の高い溶接が行えます。つまり,スポット溶接も抵抗シーム溶接もともに抵抗溶接であり,シームはスポットを連続的に重ねたものです。シーム溶接の原理を図1に示します。
ところが,これまで抵抗シーム溶接機はポピュラーな溶接機として知られていませんでした。これには以下の理由があります。
・電気効率が悪く,大きな電気設備が必要であった
・珍しい溶接方法で,よく知られていなかった
・外部水冷など使用環境が悪かったため一般的には使用しにくかった
・機械が高価で購入し難かった
・電気効率の悪さからフトコロを伸ばせず,決まった形状のものにしか適用できなかった
・大きな容量のトランスを使用するため,大きく重たく溶接作業に制限があった
しかしながら,最近ではシーム溶接機の適用の可能性があらゆる所で広がりつつあります。当社ARTの抵抗シーム溶接機を例に挙げると,それには以下の理由があります。
・フランスARO社製のトランスおよびARTで開発したトランスを利用して軽量コンパクトになった
・独自開発のDCトランスのため,フトコロを大きく取れ,2次側の制限が少なくなった
・独自開発したデファレンシャルギヤにより,ノンスリップ溶接ができるようになった
・MFトランスの開発により,高速溶接が可能になった
・特殊ハウジングの開発によりランニングコストが減った
・フランス製の特殊電極材により電極寿命が倍以上に伸びた


図1 シーム溶接機の原理

 
Q2 それでは高速抵抗シーム溶接機導入のメリットについて教えて下さい。
 
A2 以下のようなメリットが挙げられます。まず,極薄材の耐密溶接が可能なため,製品材料費が安くて済みます。また,高速溶接が可能なため加工費が安くなる,溶接技術に熟練度が不要なため人件費が安くなるなどの製造コスト面でのメリットがあります。
さらに,溶接にはガスを使用しないことから環境面へ配慮でき,消耗品の発生が少なくなります。溶接閃光などを出さないため安全性の問題が無く,保護具等も不要です。
異種金属の溶接も可能なため材料コストに対しての対応が容易になるといったことでしょう。
 
Q3 どのような種類の高速抵抗シーム溶接機がどのような製造品を溶接していますか。
 
A3 実際の導入事例について表に示します。また,一例として,写真1〜9に各用途別のさまざまなART製抵抗シーム溶接機を示します。

表 ART製シーム溶接機の適用状況

製造品名 使用溶接機 溶接機箇所・業種・例他
燃料タンク 平シーム溶接機縦シーム溶接機アルミ用シーム溶接機 自動車燃料タンクストーブ用タンク農機具燃料タンク
ドラム缶 縦シーム溶接機  
ワンウェイコンテナー 横シーム溶接機 天板の繋ぎ
エルボ管 エルボシーム溶接機 空調ダクト用
タービンブレード 横シーム溶接機 6mm+6mmのシーム溶接
冷却パネル 縦・横シーム溶接機 ステンレス材・機密溶接
ビールタンク 特殊縦シーム溶接機 フトコロ寸法3.5M
フィルター フィルターメッシュシーム溶接機 ステンレスフィルター5ミクロンからの溶接可能
ボイラー 平シーム溶接機 ステンレス材・熱交換部
煙突 縦シーム溶接機 ストーブ用
鋼管(杭の被覆) ツインシーム溶接機 鋼管+ステンレス材ユース材チタン材
流し台 横シーム溶接機 ステンレス
LNG船 自走シーム インバ材
空調バルブ 平行Wリンク溶接(ゴリゴリシーム)  
マフラーチャンバー 逆インクシーム  
その他 ペール管・一斗缶・スプレー缶ダクト管・ダンパー・チャンバーホッパー・エビ管・鋼板継ぎ手薬品タンク・ソーラーシステムパネルクーラー・パネルヒーター油さし・住宅金物・極薄パイプ浴槽・ショックアブソーバー柱状トランス・ブレーキシュー湯沸し器屋根・  


写真1 亜鉛メッキ鋼板用双頭(タテ・ヨコ兼用型)シーム溶接機


写真2 コンテナ用長フトコロ屋根材シーム溶接機


写真3 空調用双頭エルボシーム溶接機


写真4 橋脚およびメガフロート用チタンクラッドシーム溶接機
(インダイレクト通電方式)


写真5 家庭用ボイラシーム溶接機


写真6 GT(ガストラ)方式大型LNG船アンバーメンブレンタンク用自走式シーム溶接機


写真7 LNG船用直流シーム溶接機


写真8 ビールタンク用ステンレスクラッド大型シーム溶接機


写真9 アルミニウム製自動車燃料タンク用シーム溶接機


写真10 ロボットシーム溶接機


図2 板厚による溶接速度補正のイメージ

さらに,写真10にロボットシーム溶接機を示します。これは,従来シーム溶接機では2次元ワークしか溶接できなかったところを,3次元ワークに対しても溶接を可能にしたもので,フランスARO社製トランスとART開発トランスを利用することで軽量コンパクトになったため,ロボットに溶接機を持たせることができました。このロボットシーム溶接機の機能と特徴は,

➀ 板厚による溶接速度補正
ロボットの7軸目,8軸目を使用することで,上下電極の内輪と外輪の速度差を自動的に調整し,最適な電極回転で溶接を行う(図2)。

➁ 溶接条件を自動変更
直線部と曲線部では,溶接速度が変わるために要せ得条件が異なる。したがって,それぞれのパラメータを設定しておくことで,自動的に溶接条件を変更し,最適な溶接を行うことができる。

➂ 摩耗による速度補正
電極が摩耗すると,電極径が変化します。溶接速度を一定に保つためには,電極摩耗に合わせて電極回転速度を増加させる必要がある。自動的に溶接速度を一定にする機能を持つ。
このロボットシーム溶接機の適用としては,形状が複雑な燃料タンクのような3次元形状でも容易に溶接が可能であり,車体についても現在スポット溶接もしくはミグ,マグ溶接していた部分をシーム溶接に替えることで,強度増加,溶接速度増加が見込まれます。

 

古川 一敏
愛知産業(株)
出典:【溶接技術2007年1月号】

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