Q&A溶接入門講座

溶接ロボットの基礎知識 最終回

入門教室/Q&A

溶接ロボットの基礎知識 第4回

鉄骨溶接ロボットシステムに関する基礎知識

 
鉄構業界はきわめて厳しい状況が長く続き,鋼材の高騰にもかかわらず物件価格が上がらず,工期は短くなる一方です。しかし,品質はさらに要求が厳しくなっており,いかに高品質なものが短納期でローコストに作れるかが問われています。この大変厳しい状況下で,製作される鉄骨の溶接工程において,ロボット溶接システムは同じく厳しい要求がなされます。この品質と高能率の相反する要求に応えるべく,開発された新しい機能やシステムを今回は紹介します。
 
Q1 鉄骨溶接ロボットシステムで対応できる溶接部位を教えて下さい。
 
A1

以下のようになります。

➀コラム溶接システム
・コラム単体を数個冶具で連結し,連続して溶接します。( 図1)


図1 コラム溶接システムの溶接部位

➁柱大組溶接システム
・柱溶接はもちろん,コラム,仕口の溶接も行います。(図2)


図2 柱大組溶接システムの溶接部位

➂梁溶接システム
・梁の4面に付けられるリブ,補強板,ブラケット類を溶接します。( 図3)


図3 梁溶接システムの溶接部位

➃仕口溶接システム
・仕口のフランジ面(表,裏),ウェブ面を自動で反転し,回転させて溶接します。(図4)


図4 仕口溶接システムの溶接部位(太線部)

 
Q2 鉄骨溶接ロボットシステムでの溶接品質はどうですか?
 
A2

以下に説明します。
・溶接開始前に,ロボットがコラム全周のアール部寸法 とルートギャップ寸法のバラツキをセンサで自動計測 を行い,形状のバラツキを考慮した最適なトーチ狙い位置・溶接条件を決定することにより,ロボット溶接 品質を保証する基本的な条件を設定します。

・溶接過程では,トーチを高精度にウィービングさせるアークセンサにより入熱による鉄骨の熱変形を吸収しながら狙いの溶接線に追従溶接を行い,溶接ビード蛇行の低減・外観品質の向上を図っています。

・タンデム溶接(トーチ2本での先行ワイヤ・後行ワイヤ溶接工法)では,先行・後行ワイヤの溶接条件を独立して制御することにより,アンダーカット,融合不良,ブローホール等の溶接欠陥を防止します。また,フルデジタル電源の採用によりスパッタの発生も大幅に低減できます。

 
Q3 鉄骨溶接時の入熱制限などに対しては対応しているのでしょうか?
 
A3

 対応しています。例えば,ある母材と溶接ワイヤでは,パス間温度3 5 0 ℃ 以下,入熱量30KJ/cm以下の制限に対応しています。

 
Q4 使用する溶接ガスに制限はありますか?
 
A4

 当社では炭酸ガス(CO2)100%を使用します。他社ではアルゴン混合ガスの場合もあります。

 
Q5 典型的な柱の施工時間はどれ位かかりますか?
 
A5

 ロボット溶接では約3時間,同一柱の手溶接では5時間強の施工時間がかかり,ロボット溶接では時間が約40%短縮されます。(図5)


図5 典型的な施工時間と人手との比較

 
Q6 さらに効率的に溶接が出来るシステムは開発されていますか?
 
A6

タンデム溶接ロボットシステム(図6,次ページに示すトーチ2本での先行ワイヤ・後行ワイヤ溶接工法)やツイン溶接ロボットシステム(図7,次ページに示す2台のロボットが同時に溶接を行う工法)があり,溶接時間の大幅な短縮と生産性の向上が図れます。


図6 タンデム溶接システム


図7 ツイン溶接システム

上記の両システムは,既存のロボットシステムへの追加改造で対応することができる設計で,設置面積を広げることなく,面積あたりの生産性の大幅な向上を図ることができます。

 
Q7 今後どの様な改善提案・新システムが考えられますか?
 
A6

改善提案としては,施工時間の中でロボット溶接の付帯作業時間−例えば,ワーク形状のセンシング,ノズル清掃等の短縮によるトータル施工時間の短縮が考えられます。

新システムとして,梁の例では溶接前工程の配管穴切断,リブ・補強プレート等のケガキ作業を人手作業からロボット化による効率化・高精度化が考えられます。また,仕口溶接の例では,1度ポジショナにセットするだけでフランジ・ウェブ接合部を網羅した仕口連続自動溶接システムがあり(図8),工程集約・クレーン作業時間短縮が図れます。


図8 仕口連続自動溶接システム

 

木戸 信明
コマツエンジニアリング(株)技術開発部
出典:【溶接技術2006年4月号】

 

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