フレッシュマン講座

フレッシュマン特別講座〜溶接・切断の基礎知識 2011

 溶接は、概して造船など重厚長大産業の基盤技術として認識され、「3K」の代表格として取り上げられることもある。しかし、橋梁や道路といった社会インフラから自動車、家電あるいは半導体など、あらゆる産業の基盤技術として欠くことのできない位置付けを持つ。今後もあらゆる技術分野において、その技術進歩を左右する技術であり、ある意味では人類文明の繁栄とともに歩んできたと言える。溶接は決して成熟した技術ではなく、今後も永遠に発展していける先端技術なのである。

 ■溶接の歴史
 様々な産業で用いられ基盤技術として溶接は重要な役割を果たしている。その定義は「材料に応じて、接合部が連続性を持つように熱または圧力もしくはその両者に加え、さらに必要があれば適当な用家財を加えて部材を接合する方法」である。
 溶接をはじめとする金属接合技術の歴史は古く、紀元前3000年頃には既に鍛接やリベット接合、ろう付が用いられており、紀元前1400年前の古代エジプト王ツタンカーメンの棺の中からも鍛接による鉄製の装飾品が発見された。
 「はんだ付」で知られるろう接も、1979年の火山爆発で埋もれたポンペイ市の水道管の接合に用いられていた痕跡が発見されている。
 このように金属接合は古代からある技術だが、本格的な溶接技術の発展としては19世紀の産業革命期に始まる。
 1801年にイギリスのデービーがアークを発見し、90年にはフランスのデ・メリンが蓄電池の鉛板の接合に炭素アークを利用した。85年にロシアのベルナルドおよびオルゼウスキーが炭素アーク溶接法を発見し、92年にロシアのスラビアノフが金属電極と金属板との間に発生させたアークによる金属アーク溶接法を発明した。以来、溶接技術は工業的に急速に浸透し、盛んに利用されるようになった。
 こうして、現在広く実用されている溶接法の原型が、続々と登場したのが19世紀から20世紀である。
 20世紀に入ると第一次世界大戦が勃発し、多量生産と短納期に対応する技術として溶接が活躍し、被覆アーク溶接の基礎が確立された。そして、第二次世界大戦期においては、現在の主流となる溶接法が開発され溶接技術が一層発展した。溶接の自動化などの改良も進み、自動溶接ではティグ溶接およびサブマージ溶接が古い。
 ティグ溶接は1930年、米国のホバートとデーバスにより、サブマージアークはケネディによりそれぞれ発明されている。
 ティグ溶接は、従来の溶接法では難しかったアルミニウム合金などの軽合金溶接を目的に実用化が進められ、サブマージアーク溶接は42〜43年頃、第2次大戦の頃に米国内で広く採用され急速に実用化が進んだ。
 戦後の50年前後には米国でミグ溶接、炭酸ガスアーク溶接、ソ連ではエレクトロスラグ溶接が発明されている。
 この後、60年代にはレーザ溶接機の原型が登場したほか、造船などの構造物の巨大化に伴い、溶接の自動化への気運が高まる。続く70年代においては、産業界では少種多量生産から多種少量生産へシフトし、多様化が検討された。溶接では簡易型の自動機や可搬性のよい半自動溶接機の導入が進んだ。
 また、アーク溶接同様に抵抗溶接もその歴史は古い。1877年に米国フィラデルフィアのフランクリン研究所で、トムソンが誘導コイルによる高圧放電の実験中、低圧側の太い線に大電流を流すと溶接されることに気付き、82年に溶接機を試作。銅線の突き合わせ溶接向けのスロー・バット溶接機を開発した。
 その後同様の技術開発が盛んに行われ、トムソンは90年にシーム溶接も発明している。
 しかし、ハーマッタが発明したスポット溶接法については、特許の問題からトムソンと長く争われる事態となった。
 フラッシュ溶接の発明は、バット溶接をしていた作業者が電圧を高くしたところ、通常のバット溶接よりも強く接合されるのを発見し、正式には89年に米国のコーフィンが発明した。このほか、97年には米国のロビンソンがプロジェクション溶接を発明している。
 最近では、1980年代頃から溶接ロボットが普及し、レーザ加工機の実用化も進んでいる。そのほかの溶接法とともに、材料や構造に応じた溶接方法の選択肢が増え、溶接接合品質の安定化や溶接作業の高効率化を目指して技術開発が進められている。
 最近10年で、レーザ溶接をはじめFSW(摩擦攪拌溶接)などの研究も盛んに進められており、ハイテクノロジーとしての溶接・接合技術は確立されつつあると言える。

 ■溶接の種類
 溶接と一口にいってもその種類は非常に多く、分け方にもよるが大雑把に数えても30種類以上に上り、製造現場の環境、金属の種類・板厚、品質条件、生産性、製造コストなどを考慮して使い分けられている。ここでは製造現場で使われる代表的な溶接法を紹介する。
 1、アーク溶接
 工場などで火花を飛ばして金属を接合している光景を見たことがあると思うが、その多くがこの「アーク溶接」にあたり、最も一般的な溶接方法である。
 アーク溶接は、アーク放電と呼ばれる電気の放電現象によって得られる熱で金属を溶かして接合する方法だが、アーク熱を溶接に応用するには、溶接部を外気から遮断するためのシールドが必要になる。このシールド方法の違いなどによって、アーク溶接は十数種類に分けられる。
 中でも代表的なのが「被覆アーク溶接」と「半自動アーク溶接」である。
 被覆アーク溶接は、「手溶接」とも呼ばれ、文字通り手動であるため、その接合品質は溶接作業者の技能に大きく左右される。「ホルダ」と呼ばれる洗濯ばさみを大きくしたような道具で溶接棒を挟み、溶接電源(溶接機)から供給される電気でアークを発生、その熱で溶接棒を溶かして金属を接合する。
 溶接棒は単なる金属棒ではなく、接合したい金属の種類に合わせた成分が配合されているほか、金属(心線)が粘土状のもの(被覆剤)で覆われており、この被覆剤が熱で溶けてガスやスラグを発生し、アークをシールドする仕組みになっている。手作業であるためフレキシブル性が高く、大型設備を使えない屋外の現場工事などで使われることが多い。
 半自動アーク溶接は、「トーチ」と呼ばれるパイプ状の道具の中心に「溶接ワイヤ」と呼ばれるリール状に巻かれた針金の様な金属を、トーチに付いているレバーの操作によって供給、この溶接ワイヤをアーク熱で溶かして溶接する。
 先の被覆アーク溶接では、溶接棒がなくなるたびに溶接を一回中断して交換しなければならないが、半自動アーク溶接ではレバーの操作だけでワイヤが供給されるため、長尺材の溶接でも中断することなく溶接できるメリットがある。
 さらに、トーチからシールドに必要なガスも溶接部に当たるように供給されるため、溶接技能者に求められる技能も低減される。
 半自動アーク溶接では、求められる溶接品質などによってシールドガスが使い分けられるが、このガスの種類など(実際にはガスだけでなく様々な溶接条件の違いがある)によって、「炭酸ガス溶接」、「マグ溶接」(アルゴン80%、炭酸ガス20%の混合ガスが一般的)、「ミグ溶接」(アルゴン100%が一般的)などの種類がある。
 これら半自動アーク溶接は、効率的な溶接を実現できることから工場で使われる。ただ、風の影響でシールドガスが流されてしまうことから屋外での作業には不向きであるため、屋外では被覆アーク溶接が用いられることが多い。また、半自動アーク溶接の仕組みを応用し、完全自動化した溶接ロボットも広く普及している。
 さて、これまで説明したアーク溶接は、溶接材料(溶接棒や溶接ワイヤ)が電気を通す電極の役割を果たすが、この電極と溶接材料を別にした溶接方法もある。「ティグ溶接」だ。
 先述した半自動アーク溶接と同じようにシールドガス(アルゴン100%が一般的)を供給する「トーチ」と呼ばれる道具を使うが、トーチの中心には溶接ワイヤでなく、タングステン電極が挿入される。溶接材料(手溶接の場合は「溶加棒」、半自動・自動の場合は「溶加ワイヤ」と呼ぶ)は、アーク発生部に手動または半自動・自動で別途供給するが、溶接材料を使わずにアーク熱で直接母材を溶かして接合する方法も用いられる。
 電極と溶接材料が分かれているため、入熱量と溶加材の添加量をそれぞれ独立制御できることから原子力関連機器や航空機部品など、高品質が求められる製品の溶接に適し、被覆アーク溶接や半自動溶接の適用が難しい金属にも使うことができる。
 ただ、溶接速度が遅く生産効率が悪いという欠点がある。このため初層をティグ溶接し、2層目以降に被覆アーク溶接や炭酸ガス半自動アーク溶接を用いる組合せ溶接の適用がみられるほか、ティグ溶接を高速化するための様々な技術も開発されている。
 2、抵抗溶接
 金属に電気を流すと、その抵抗作用で電気が金属に蓄積し、熱エネルギーに変換される。ジュールの法則と呼ばれる抵抗発熱現象である。この抵抗発熱を溶接に応用したのが「抵抗溶接」である。
 重ねた母材の両側を電極チップではさみ、通電と接触抵抗(母材やチップの接触部の抵抗)を制御するための加圧によって、局部的に母材を溶融させて接合する。抵抗発熱を利用しているため、アーク溶接が母材の片面から溶接していくのに対し、抵抗溶接は電極で母材を挟み、母材同士の接触面である内側から溶融していくのが大きな特徴だ。
 「電流」「通電時間」「加圧力」などの溶接条件管理は必要になるが、高度な技能を必要とせず消耗品が少ないため、低コストで自動化しやすく溶接時間が短いことから自動車や電気製品などの大量生産型の工場を中心に普及している。
 抵抗溶接は、「スポット溶接」と「シーム溶接」の2種類が一般的に使われる。
 スポット溶接は、電極で溶接個所を一点、一点はさんで溶接する方法。「溶接ガン」と呼ばれる「コ」の字状の道具を動かし、ホチキスのように母材をはさんで溶接していく「ポータブル式」と、装置を決まった場所に固定し、母材を電極部に持っていって足踏み式などで母材をはさんで溶接する「定置式」の2種類がある。
 ポータブル式はロボット化して自動車車体の溶接などとして広く使われ、定置式は板金・小物部品などの溶接方法として普及している。
 シーム溶接は、電極を円盤状にし2枚の円盤で母材を挟んで溶接する方法。スポット溶接が点で溶接するのに対し、シーム溶接はアーク溶接のようにライン状に連続溶接することができる。このため密閉機能が必要な自動車のガソリンタンクや、スポット溶接では接合強度が得られないメッシュ材の溶接などに使われている。
 3、そのほかの溶接
 先述したアーク溶接や抵抗溶接はそれぞれアーク熱を熱源として金属を溶かして溶接するが、これを「融接」と呼ぶ。融接にはこのほかレーザ光を熱源にしたレーザ溶接、ガス炎を熱源にしたガス溶接、電子ビームを熱源とした電子ビーム溶接、プラズマアークを熱源にしたプラズマアーク溶接などがある。
 抵抗溶接では、抵抗発熱と加圧力によって溶接するが、このように機械的圧力と入熱などの組み合わせによって接合する方法を「圧接」と呼ぶ。圧接にはこのほか、加圧と超音波振動による超音波溶接、加圧と摩擦熱による摩擦溶接、加圧とガス炎によるガス圧接などがある。
 また、母材を溶融することなく、溶加材のみを溶融して接合する「ろう接」は、その溶加材の種類からろう付とはんだ付の2種類がある。


 ■溶接資格の概要
 日本溶接協会は溶接管理技術者、溶接技能者など要員の資格を認証する要員認証機関の第1号として、1999年3月に日本適合性認定協会(JAB)から認定されている。鋼構造物の溶接施工に欠かすことのできない溶接管理技術者および溶接技能者の資格は、このシステムに基づいて認証されている。本項では溶接管理技術者、溶接技能者を中心に概要を紹介する。
 1、溶接管理技術者
 鋼構造物の製作に当たり溶接・接合に関する設計、施工計画、管理などを行う技術者の資格。JISZ3410(ISO14731)/WES8103で規定された溶接関連業務に関する知識および職務能力について、評価試験を行い資格の認証を行う。
 この資格は、JISZ3400「溶接の品質要求事項」で要求されている溶接管理技術者に必要な資格であり、建築鉄骨の製作工場の認定要件にもあげられるなど、広く一般の溶接構造物の信頼性安全性の確保に対する社会的要請に応える資格として活用され、公的にも国際的にも広く認識されている。
 認証の等級(レベル)は特別級、1級、2級を設けている。2010年3月時点で特別級約1500人、1級約6600人、2級約2万3100人を認証している。
 主な受験図書は次のとおり。(発行は産報出版)
 ▽新版溶接・接合技術入門(WES8103特別級・1級用テキスト、8610円)
 ▽新版溶接・接合技術入門(同2級用テキスト、3900円)
 ▽筆記試験問題と回答例(特別級・1級2000円、2級1800円)
 2、溶接技能者
 鋼構造物の製作で溶接作業に従事する溶接技能者の資格であり、溶接作業を行う技能者の技量を一定の基準(JIS、WESなど)に基づき全国で評価試験を行い、資格の格付けと認証を行う。
 この資格は発注者からの溶接施工に関する仕様書などで要求される溶接品質を確保するために、製作者が信頼性を証明する手段の一つとして、例えば建築鉄骨の製作工場認定の要件となったり、JISZ3400に基づいて溶接施工を行う場合の溶接技能者となるなど、広く一般の溶接構造物の信頼性、安全性の確保に対する社会的要請に応える資格として活用され、広く認識されている。
 また、この資格者は、溶接管理技術者および溶接作業指導者の指揮下で鋼構造物の溶接作業に従事するのが一般的となっている。
 日本溶接協会が実施している「溶接技能者認証」は、日本の代表的な溶接技術検定制度であり一般的には「JIS検定」として知られ、2010年3月時点で約22万2000人を認証している。
 主な資格の種別は手溶接技能者、半自動溶接技能者、ステンレス鋼溶接技能者など。資格の種類は溶接方法、溶接姿勢、試験材料の種類と厚さ、溶接継手と開先形状、裏当て金の有無などにより区分されている。
 主な受験図書には、「新版JIS手溶接受験の手引き」(2100円)、「新版JIS半自動溶接受験の手引き」(2300円)、「JISステンレス鋼溶接受験の手引き」(2300円)などがある(発行は産報出版)。

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