フレッシュマン講座

エンジン溶接機編2011

 1、エンジン溶接機の概要
 エンジン溶接機は正式にはエンジン駆動溶接機といい、溶接用発電機をエンジンで駆動することにより発電し溶接の電源とするもので、一般的には手溶接(被覆アーク溶接法)で使用されている。
 80〜500アンペアまでの容量の機械があり、ガソリンエンジンタイプとディーゼルエンジンタイプがある。騒音公害に対処する防音型、スローダウン装置などの省エネ技術を搭載した省エネ型、多用途に用いられる交流補助電源付の兼用型、1台で2人同時溶接ができるダブル型、自動アイドリングストップ機能を搭載した環境対応型(写真1)などが製造されている。
 1959(昭和34)年に日本で初めて小型軽量のエンジン溶接機が実用化されて以来、エンジン溶接機は屋外での溶接作業に欠くことのできないものとして発展を続けている。

 写真1 自動アイドリングストップ機能を搭載したエンジン溶接機

 2、エンジン溶接機の分類と特徴
 ■駆動エンジンによる分類
 ◇ガソリンエンジン
 2サイクルエンジンと4サイクルエンジンがあるが、最近は排気ガス規制の関係から4サイクルエンジンが使用されている。
 ◇ディーゼルエンジン
 ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより重量が重くなり、丈夫で大容量の溶接機に適しており、ランニングコストが安いのが特徴である。
 ■溶接法による分類
 ◇被覆アーク溶接法
 被覆アーク溶接法は、被覆剤を塗布した溶接棒を電極とし母材との間にアークを発生させ、そのアーク熱を利用して溶接するもので、一般には手溶接法と呼ばれている。
 ◇炭酸ガスアーク溶接法
 炭酸ガスアーク溶接法は、手溶接棒の代わりにコイル状に巻かれた溶接ワイヤが、送給ローラによりトーチ先端に送られる。
 このワイヤは、トーチ先端のコンタクトチップで通電され、炭酸ガスの雰囲気で母材との間にアークを発生し、その熱で母材とワイヤを連続的に溶かし溶接する方法である。炭酸ガスの代わりにマグガス(一般的にはアルゴンガス80%と炭酸ガス20%の混合ガス)を使用するものをマグ溶接、アルゴンガス100%を使用するものをミグ溶接と呼ぶ。
 ◇セルフシールドアーク溶接法
 セルフシールドアーク溶接法は、ノーガスアーク溶接やノンガスシールドアーク溶接などいろいろな呼称で呼ばれているが、現在ではセルフシールドアーク溶接に統一されている。
 セルフシールドアーク溶接は、炭酸ガスアーク溶接法やサブマージアーク溶接法によく似ているが、アーク部に外部からフラックスおよびガスを供給することなく溶接する方法である。
 すなわち、チューブ状の溶接ワイヤに脱酸材とフラックスを装填してあり、アーク発生とともにアーク柱および溶融池を外気の酸素や窒素から保護して行う溶接法である。
 ◇ティグ溶接法
 ティグ溶接法は、タングステン電極と被溶接物との間にアークを発生・保持し、このアーク部を不活性ガスでシールドして溶接する方法である。
 不活性ガスとしては一般にアルゴンガスが用いられている。タングステン電極はほとんど消 耗せず、単にアークを出すための電極として用いられるので、ごく薄板の場合を除いて溶融部の金属を補うためにフィラーワイヤ(溶加棒)が使用される。ティグ溶接法はあらゆる種類の金属の溶接が行える。

 3、エンジン溶接機の溶接特性
 エンジン溶接機はアークを負荷として、これに電力を供給するための電源装置である。したがって、アークを安定に発生維持させるために各種溶接法に適した次の溶接特性がある。
 ■垂下特性(図1)
垂下特性とは、手溶接に代表される電源特性であり、電流が増加すると溶接機の出力電圧が下がる特性である。垂下特性の特徴はアーク長を変化させるとアーク電圧の変化により溶接電流が変化するので、微妙な手加減でビード幅、深さ、たれの調整ができる。
 ■定電流特性(図2)
 定電流特性とは、垂下特性の特性曲線の垂下度をほぼ垂直としたものである。定電流特性の特徴はアーク長の変動にかかわらずほぼ一定の電流で溶接できるので、母材の溶融状態が安定して均一な溶接結果が得られる。
 ■定電圧特性(図3)
 炭酸ガスアーク溶接、マグ溶接、ミグ溶接のように細径のワイヤに大電流を通じ高速に自動供給されるものに使われる。溶接中にアークが変動しても、溶接電流の増減によりワイヤの溶融速度が増減して、常にアーク長を一定に保つ。

 図1 垂下特性 

 図2 定電流特性 

 図3 定電圧特性
 
 4、エンジン溶接機の使用場所
 エンジン溶接機は、電源のない建設・土木の現場や、パイプラインの建設など移動する現場、プラントや工場の保守作業などで主に使用されている。
 ■タンクや管の溶接
 水道・瓦斯管溶接、油・水タンク溶接、パイプラインの溶接に使用されている。この溶接は高度な溶接技術が要求され、溶接部分は非破壊検査が行われ、針の穴程度のピンホールでも溶接のやり直しとなる。すなわち、溶接作業において安定したアーク性能の機械が要求される。
 ■重量鉄骨の溶接
 産業機械の現場、砂利採集機・ブルドーザ、大橋梁、船舶、車輌、建築物の基礎工事などの溶接に使用され、強度な溶接品質が要求される。溶接作業においては大電流で強いアークの出力可能な機械が要求される。
 ■軽量鉄骨溶接
 サッシ・シャッターの取付け、門扉・フェンス・小物取付工事、農機具などの溶接に使用され、アーク特性についてはあまり要求されないが、アーク切れについては作業能率が低下するので、アーク切れの少ない機械が要求される。

 5、エンジン溶接機出力容量の選定
 エンジン溶接機の容量選定は、まず使用する溶接棒の溶接電流によって決められる。表は通常使用されている軟鋼、下向きの場合のアーク電圧と溶接電流である。もちろん溶接棒の種類、溶接条件によってこの値は変わる。

 6、エンジン溶接機の仕様諸元
 ■定格出力電流
 定格出力電流とは、標準状態(大気圧760ミリHg、温度セ氏20度、湿度65%)において溶接機を定格回転速度、定格負荷電圧、定格使用率で運転した場合に流すことができる最大の電流のことである。
 ■出力電流
 溶接機の出力端子から溶接ケーブルを通って、アークに流れる電流のことをいう。
 ■アーク電圧
 アークを通じて流れる電流を溶接電流といい、その時に溶接棒と母材との間にかかっている電圧をアーク電圧という。また、アークを出していない状態を無負荷といい、その時溶接棒と母材との間にかかっている電圧を無負荷電圧という。
 ■定格負荷電圧
 溶接機を定格回転速度において定格出力電流を通じた場合の溶接機の出力端子における負荷電圧をいい、その値は次式となる。
 E=20+0・04I(Eは定格負荷電圧、Iは定格出力電流を表す)
 ■使用率
 使用率とは、10分を周期としてアーク溶接をする時間を、この10分間に対する割合(百分率)で表したもの。例えば、使用率50%とは10分間周期のうち5分間アーク溶接を行い、5分間アーク溶接を休止して使用するという意味である(図4)。また、定格使用率とは定格出力電流を流す時の使用率をいい、実際使用の場合の使用率とはかならずしも一致しない。

 図4 使用率50%の場合

 7、エンジン溶接機のニーズ・特徴
 ■最近の特徴
 近年のエンジン溶接機は鉄工業、建設業だけではなく、設備工事業、レンタル業、農林水産業など広い範囲に使用されるようになった。
 また、市場のニーズから溶接機能に加えて交流発電機の機能を持ち、2人の作業者が同時に溶接できる機種や、被覆アーク溶接だけでなく炭酸ガスアーク溶接、ティグ溶接、セルフシールド溶接などが可能な機器も製造されており、エンジン溶接機の多様化と多機能化が進んでいる。
 被覆アーク溶接の溶接特性においてもアーク長の変動にかかわらず、ほぼ一定の電流で溶接できる「定電流特性」と、微妙な手加減でビード幅・深さ・たれの調整が可能な「垂下特性」のものがあるが、最近では「定電流特性」から「垂下特性」まで作業者の好みや用途に合わせて勾配を自在に調整できる機種も開発されている。
 ■環境対応
 バックホウやブルドーザなどの車両系建設機械と同様に、エンジン溶接機も「排出ガス対策型建設機械の指定制度」の対象であり、メーカー各社は同基準に対応する機種を市場に投入している。また、最近ではエンジンの技術に依存せず、排出ガスを大きく削減する技術として、自動アイドリングストップ機能付のエンジン溶接機も開発され、大きな注目を集めている。

 デンヨー/経営企画部 藤本庄一郎

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