フレッシュマン講座

抵抗溶接機編2011

 1、はじめに
 抵抗溶接にはスポット溶接、プロジェクション溶接、シーム溶接、突合せ溶接(フラッシュ溶接、アプセット溶接)などがある。
 まず最初に触れる抵抗溶接機は一般にはスポット溶接機で、2枚または数枚重ねの鋼板を電極間にはさんで機動スイッチを押すと、可動側電極が動き鋼板が加圧され、しばらくすると通電音がして溶接が終了する。
 このスポット溶接を行う際、スポット溶接の溶接条件として電極加圧力、溶接電流、通電時間および電極形状の4つがあると説明を受けるであろうが、実際これらをどのように決めたらよいか、ここでは自動車用として多用されている合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA材)、板厚約1・0ミリ、軟鋼2枚重ね、単相交流式電源を用いた場合について簡単に説明する。

 2、電極
 電極については色々な形状がJIS C9304などに規定されているが、ここでは自動車業会で一般的なDR電極を使用する。DRはドーム・ラジアス型の意味で、電極径16ミリ、8Rドーム形とし、先端のみφ6、40Rのラジアス形状としている。電極の材質はCuーCr(クローム鋼)を使用している。

 3、通電時間
 通電時間は目安的に板厚トン×10+αを選択する。具体例として板厚1・0ミリの時は10サイクルある電極加圧力、溶接電流の下で通電時間を次第に延ばしていくと、ナゲットは成長していくが、ある通電時間以降はナゲットの成長が止まり、いくら通電しても電極の方に逃げて、ナゲット自身は冷却が始まってしまう。その目安が(板厚×10)サイクルであり、これ以上通電時間を延ばしても、ナゲットは図1のようなオニオンリングと称するリング模様の形状となる。
 よってオニオンリングができ始めたら、これ以上通電延ばしても無駄となるわけだが、実際マクロ試験を実施し図1のようなオニオンリングを見るためには、特殊な腐食液を必要とする。硝酸を使用したナイタル液ではナゲット形状がはっきり判らないため、ナゲットを見るためにはピクリン酸と界面活性剤(例えばライポンFのような洗剤)を混合した腐食液を使用する。
 オニオンリングはナゲットの外側からでき始め、さらに通電時間を延ばすと次第に中にまで広がっていき、ついにはナゲット全体がオニオンリングとなってしまう。実際には、冷却を意味するオニオンリングを確認して通電時間を決めるのではなく、経験から目安的に板厚の10倍の通電時間を設定するとよく、これ以上通電時間を延ばしても無駄となることをオニオンリングの生成から説明している。

 図1 通電時間のサイクル(上から10、14、18サイクル)

 4、電極加圧力
 電極加圧力設定はGA材の場合、目安的に2・5√板厚トン(kN)とする。電極加圧力の設定の根拠は色々な考え方があり一概には言えないが、これは後の電極寿命の項目で説明する。

 5、溶接電流
 溶接電流の設定は、ある通電時間、電極加圧力の下で散りが発生する直前の電流、すなわち散り発生限界電流としている。ある通電時間、電極加圧力の下で溶接電流を低い方から次第に上げていくと、ナゲットの成長がどのようになるか調査したものを図2に示す。
 溶接電流を徐々に上げていくと、ある溶接電流値からナゲットができ始め次第に成長していき、ある電流値まで上昇させると散りが発生する。散りが発生するとナゲット径は小さくなってしまう。それでもさらに溶接電流を上げていくと、再びナゲット系は成長していくが、ついには電極と溶着してしまうこととなる。散りが発生する直前のナゲット径が一番大きくなっている溶接電流を選ぶのが、一番効率的と言える。
 散りが発生する直前の散り発生限界電流値付近でのナゲットの様子と、それより少し溶接電流を高くして散りが発生した電流値付近での様子を比べたのが図3である。このナゲットの様子をみると、散りが発生すると説明したオニオンリングが再び見られる。ここから散りが発生すると電極は板中に潜り込む形となり、電流密度が減り冷却が始まっていることを
示している。

 図2 溶接電流とナゲット径の関係


 図3 散り発生とナゲット 

 6、ウエルドローブ
 ここで、ある電極加圧力の下で溶接電流を徐々に上げていき、ナゲット径が4√トン以上できる最低電流から散りが発生するまでの電流範囲をもとめてみたものが図4である。
 この図が耳たぶ(ローブ)の形状に似ていることから、ウエルドローブと呼ばれている。この電流範囲が広いほど、溶接条件幅が広いということになる。この図4からみると電極加圧力の高い方が溶接条件幅が広く、安定した溶接が可能と言えることになる。
 ある電極加圧力の下、指定した通電時間毎に溶接電流を低い方から徐々に上げていき、通電時間について図4と同様なグラフを作ったものが図5である。これにより「ある通電時間以上溶接電流を流しても、ナゲットの成長にはほとんど寄与しなくなる限界通電時間がある」ことが分かる。このことは通電時間の項目で説明した内容を再確認したこととなる。

 図4 ウエルドローブ1

 図5 ウエルドローブ2

 7、電極寿命
 図4の各電極加圧力の散り発生限界電流付近で電極寿命試験を実施した結果が図6である。電極寿命は新しい電極から4√トンのナゲットを割るまでの打点数で求めている。
 ここから散り発生限界電流付近で電極寿命評価試験をすると、この範囲では電極加圧力の高い方が長くなることが分かるが、プラング破断(ボタン抜け)する範囲で見ると2・5kN(250daN)のところが長くなっている。
 また、通電時間を長くした方が電極寿命は延びるのではないかと期待しているが、実際は図7のように逆に短くなってしまう。

 図6 電極寿命試験の結果

 図7 通電時間に関する電極寿命試験結果

 8、溶接電源
 電極寿命は溶接電源に依存することがある。特に、ここでは単相交流式電源で話を進めていくが、注意しなければならないのが、二次側を直流化している電源すなわち単相整流式、直流インバータ式の場合である。
 めっきのない裸鋼板では問題は起きないが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のような場合、極性効果によりプラス側電極は電極先端がひどく尖り、逆にマイナス側電極は先端が凹んでしまい、これにより電極寿命が短くなる。直流インバータ式電源は、トランスを軽量化するためには最も効果的であるため、ロボット搭載型スポットガンに多用されているが、早めのチップドレスが必要とならざるを得ない。

 9、溶接電流と加圧力の同期制御
 アルミ材のナゲット内部に発生してしまう空洞(ブローホール、引け割れ)を防止する技術として、適正な加圧力と溶接電流、通電時間による通常の溶接に引き続いて高い加圧力(鍛圧)に切替えて低い溶接電流を流す技術がある。
 また、板厚比の大きい3枚重ねスポット溶接を可能にする技術として、まず低い加圧力と短い通電時間で高い溶接電流を流すことにより薄板と厚板間にナゲットを形成し、次に高い加圧力と長い通電時間で低い溶接電流を流すことで厚板間にナゲットを形成する技術がある。 
 実ラインでのサイクルタイムの制約のなかで、これらの技術を適用して溶接品質を向上させるには、溶接電流と加圧力を遅延なく同期して制御する必要があるが、ロボット化が進んだ最近の自動車ボデー溶接工程ではロボットと溶接機がそれぞれ独立していることから、ネットワークなどで発生する遅延時間によりサイクルタイムが伸びてしまう課題があった。
 この課題を解決するためにロボットメーカーと共同開発を行い、ロボット制御装置と一体構成で遅延なく溶接電流と加圧力の同期制御を行なうタイマが販売されている。

 電元社製作所/営業技術部課長 白仁田正夫

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