フレッシュマン講座

ガス・プラズマ切断編2011

 1、ガス切断の原理
 ガス切断とは鉄と酸素の化学反応熱を利用した切断方法である。実際のガス切断は図1に示すように、切断火口から噴出する予熱炎で鋼の切断開始部を発火温度に加熱し、そこへ切断酸素を噴流状にして噴きつけ、鋼中の鉄を燃焼させその熱で母材を溶融させると同時に、燃焼生成物を切断酸素噴流の機械的エネルギで吹き飛ばし、溝状に除去することによって切断を行う。
 ガス切断を可能とするためには、酸素と金属の反応熱によりその金属が溶融し吹き飛ばされることで、酸化反応が新しい金属表面との間で持続的に起こる必要がある。これがガス切断の可能な基本的な条件となり、具体的には下記の条件を満足する必要がある。
 〈ガス切断が可能な基本的条件〉
 1、酸化物の溶融温度(融点)が母材の溶融温度より低いこと。
 2、母材の発火温度がその溶融温度より低いこと。
 3、金属酸化物の流動性がよく、母材から容易にはく離すること。
 4、母材成分中に不燃性物質が少ないこと。
 具体的な金属材料としては、鉄、炭素鋼、低合金鋼、チタン合金などの金属材材料に使用されるが、鋼中に含まれる各種の添加元素はその種類と量が切断性に大きく影響するため、特殊な鋼の切断には注意が必要となる。

 図1 ガス切断の原理

 2、ガス切断の基本的な機器構成、資格
 基本的な機器構成を図2に示す。実際の切断機には、切断吹管を駆動させる装置が必要となり、切断吹管の先端には火口を取り付ける。
 ガス切断に従事する作業者には、「ガス溶接技能講習」の資格が必要。ガス切断では可燃性ガスと酸素を使用するため、取り扱いを間違うと火傷や火災やガス爆発事故を発生させる危険性があるので、取り扱う作業者には正しい知識が必要となる。
 また、逆火とは予熱ガスの燃焼速度が流出速度を上回り、火炎が逆流して火口の中へ入ってしまう現象のこと。逆火が起きた時に、吹管や配管へ火炎が逆流すると爆発する危険性があるので、必ず安全器などを取り付けて安全対策を行う必要がある。

 図2 ガス切断機の構成

 3、ガス切断の基本操作
 可燃性ガスにはメタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、プロパン、ブタン、水素などのガスを利用する。アセチレンは火炎温度が高いことと燃焼速度が速いことで切断性が優れているので、最も多く利用されている。大型機では、コストや安全性の面からプロパンを利用する方が多くなっている。
 火口には様々な種類形状があり、可燃性ガス、板厚、要求品質、用途、吹管によって使い分ける必要がある。安全のため、メーカーが指定するものを使用すること。高速切断用のダイバー火口、開先切断や塗装材には強予熱タイプ火口、板厚150ミリ以上の切断には厚物専用火口などがある。各火口には数種類の番手があり、板厚によって使い分けている。
 点火、消化の手順は以下のとおり。(1)吹管のバルブは閉じた状態で、酸素、可燃性ガスを所定の圧力まで上げる?まず可燃性ガスのバルブを1回転半ほど開き、所定の点火ライターで点火。点火にマッチや裸火などを用いてはならない(2)次に酸素バルブを少しずつ開く(3)炎の調整は可燃ガス、酸素の順序で調整す(5)切断機では、予熱炎を所定の中性炎に調整しても、切断酸素を放出すると炭化炎になるので、この状態で再び予熱酸素バルブを調整し中性炎に調整し直す(6)作業を終わって、消化するときにはまず酸素バルブを閉じ、次に可燃ガスのバルブを閉じる。
 ガス切断時の火炎を表現するときに、可燃性ガスが多い場合には炭化炎と呼び、予熱酸素の量が多い場合には酸化炎と言う。可燃ガスと予熱酸素のバランスがよいものを中性炎と呼ぶ。それぞれの炎の形状を図3に示す。

 図3 炎の形状

 4、ガス切断法のポイント
 切断条件の選定にあたっては、切断機の取扱い説明書をよく読み、場合によっては切断機メーカに問い合せる必要もあるが、表におおよそのポイントを示す。
 レーザ切断やプラズマ切断に比べてガス切断の最大の特徴は低コスト性にある。レーザ切断機やプラズマ切断機の導入コストに比べて格段に安く、数十本単位の同時切断(フレームプレーナ=写真1)などが可能となる。
 鋼では、切断面品質も切断テクニックによっては最もきれいになる。また、軟鋼であれば2000ミリ程度の極厚物まで切断が可能(写真2)。これは、プラズマ切断の限界が150ミリ程度、レーザ切断の限界が50ミリ程度と言われているのと比べ、格段に広い範囲の切断が可能となる。

 写真1 フレームプレーナ

 写真2 板厚400ミリの切断

 5、プラズマ切断の基礎知識
 プラズマとは、気体が高温になり気体の性質が変化し、電気が通りやすくなっている状態をいう。電気的にプラズマ化された気体をチップで拘束し、セ氏2000〜3000度程度のプラズマアークを作り出し、これを溶断熱源として加工物を切断する。
 プラズマ切断機器には、図4に示すように電極から加工物へ電流を流す移行式プラズマと、電極からチップ電流を流す非移行式プラズマがある。移行式プラズマは、加工物に電気を流すために導電性のものにしか適用できないが、熱効率が高いために高い切断能力が発揮できる。非移行式プラズマでは電気を通さない材料の切断もできるが、熱的エネルギが低いために融点の低い材料にしか適用できない。
 作動ガスには酸素、エア、窒素、アルゴン、水素混合ガスなどがある。作動ガスによって、酸素プラズマ、窒素プラズマなどと呼ぶ。
 酸素プラズマは鋼の切断によく使われる。これはエアや窒素プラズマのように切断面が窒化しないことと、切断速度が速いため。ステンレスやアルミニウムの切断も可能だが、切断品質はあまりよくない。
 アルゴン/水素プラズマは、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの非鉄金属用で、切断速度は遅いが良質な切断面が得られる。ガスの配分や電流調整などが難しく良質面を得るには、切断テクニックが必要となる。
 窒素プラズマは、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの非鉄金属の高速切断が、スラグフリーで可能。補助ガスにアルゴン、水素、炭酸ガスを使用するとアルゴン/水素プラズマと同等以上の切断面も得られる。
 エアプラズマは、使用するガスが安価であるために、小電流の低コストプラズマに使用される。軟鋼を切断した場合には切断面が窒化する。
 
 図4 プラズマ切断の原理

 6、プラズマ切断機の基本的な構成
 図5に酸素プラズマの基本構成図を示す。プラズマトーチには、電極、チップ(ノズル)などの消耗品が取り付けられている。
 切断電流が大きくなると切断速度が上がり、切断可能板厚も厚くなる。切断可能板厚の目安としては、電流値の10分の1程度。具体的には400アンペアの出力なら40ミリ程度になる。切断電流が大きくなると、消耗品の寿命が短くなる、電気代が高くなる、騒音・粉塵が多くなる、薄板の切断品質が悪くなる──などのデメリットもあるので、各板厚に適正な電流を用いる必要がある。

 図5 酸素プラズマの基本構成

 7、プラズマ切断の特徴
 軟鋼を切断する上では最も切断速度が速いので、大きな形を切断する場合にメリットがある。ステンレス鋼やアルミニウム合金の切断はガスではできない。レーザでは板厚25ミリ程度が限界なのに対し、プラズマでは150ミリ以上の切断実績がある。
 プラズマ切断機はレーザ切断機ほどのメンテナンスも必要なく、一部の非鉄切断を除けば切断時の調整もガス切断のようにテクニックを必要としないので、NC切断機などでは短期間のトレーニングで安定した切断性能を得ることが可能。

 8、ガス切断、プラズマ切断の品質
 上手に切断できているかどうかの判断は、切断作業の中で最も熟練度を要する。これを文字で表すのは不可能に近いのが実情だが、現場作業の中では切断進行部上縁の溶融金属(上ノロ)の発生状況、切断溝中の溶融金属の流れ方および切断溝下部からの溶融金属の排出状況、排出方向など、場合によっては切断音によっても判断されている。

 小池酸素工業/開発設計グループ切断課  濱田 智

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