フレッシュマン講座

炭酸ガスレーザ切断編2011

 金属の切断分野では、非接触で任意形状が容易に切断できることを特徴とした熱切断が幅広く使用されている。代表的な熱切断にはレーザ切断、ガス切断(※1)、プラズマ切断(※2)の3つの切断法があり、本文ではレーザ切断について簡単に解説する。
 解説にあたっては、レーザ切断の中で最も一般的に利用されている炭酸ガスレーザ(以下、CO2レーザ)を用いたレーザ切断について述べる。

 1、熱切断の中のCO2レーザ切断の位置付け
 一般に熱切断は(図1)に示すように、切断に利用するエネルギ源で分類される。CO2レーザ切断は光をエネルギ源とした熱切断法である。
 また、金属の切断でレーザに要求される特性は、切断に必要なレーザ出力(数キロワット)が安価で容易に得られること、レーザ光の集光性などのビーム品質が高いことである。
 CO2レーザは、数キロワットのレーザ出力を発振効率10〜20%(電気エネルギからレーザエネルギへの変換効率)で容易に取り出すことができ、このときのビーム品質も高いことから、数あるレーザの中で最も切断に適したレーザといえる。

 図1 エネルギーから見た熱切断の分類

 2、CO2レーザ切断の原理
 レーザという言葉は、レーザプリンタ、レーザマウスなど、身近で数多く使われているが、この言葉は複数の単語の頭文字をつなげた略語である。
 レーザは「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」の略でLASERと表記し、直訳すると「放射の誘導放出による光の増幅」という意味である。
 図2にCO2レーザ切断の簡単な原理を示す。CO2レーザ切断では、レーザ発振器で発生したレーザ光をミラー(CO2レーザ光の反射率が高いミラー)を用いて切断点まで誘導し、集光レンズで集光して切断材料に照射する。
 レーザ切断に使用するレーザ光は、集光したレーザ光の直径が小さく(0・1〜0・4ミリ程度)、非常に高いエネルギ密度になる(10の5乗〜10の7乗ワット/平方センチ)。
 また、レーザ切断ではレーザ光と同軸上にアシストガスを流して切断を行う。アシストガスの役割は、(1)レーザ光の照射による溶融物を切断材料から排除する(2)切断材料の燃焼を促進する(酸素を使用した場合)(3)溶融飛散物から集光レンズを保護する──などがあり、このガス種類は切断材料の種類によって種々選択される。軟鋼の切断では酸素を、ステンレス鋼の切断では窒素を使用することが多い。

 図2 CO2レーザ切断の原理

 3、CO2レーザ切断の性能
 CO2レーザ切断は、ほかの熱切断に比べて▽切断溝幅が小さい▽熱影響部や熱ひずみが小さい(切断した製品の寸法精度がよい)▽金属・非金属を問わず切断できる▽材料の硬度に関係なく切断できる▽自動化が容易に行える?切断により発生したノロや粉じんの量が少なく、環境に優れている──など優れた性能を持っている。
 一方では、レーザ光を反射する高反射材料(金や銀など)や、レーザ光を透過する材料の切断が不向きといったマイナスの面も持っている。表1は各種熱切断法で種々の項目について性能比較をしたものであるが、多くの項目でCO2レーザ切断が優れている。
 最近では、アシストガスに窒素を使用するステンレス鋼の切断で、切断面粗さを従来の半分程度にする切断や、開先切断など新たな切断が取り組まれている。

 表1 各種熱切断法の性能比較

 4、CO2レーザ切断機の構成
 レーザ切断機には、切断する対象材料の形状によって平板を切断する2次元切断機や開先形状を切断する5軸制御切断機、ロボットなどの3次元切断機がある。2次元切断機は、切断する材料の大きさや要求精度により切断機の種類が異なる。
 2×4メートル程度の比較的小さな材料の切断を行う場合は、切断台車とレーザ発振器を別置にして高速・高精度の切断を行うテーブルタイプの切断機を使用する場合が多い。また、長さ6メートル以上の大きな材料の切断を行う場合は、レーザ発振器を切断台車に搭載して広範囲の切断エリアを確保する発振器搭載型の切断機を使用する場合が多い。
 ここでは、発振器搭載型CO2レーザ切断機の構成について説明する。切断機の構成を図3に、概観を写真1に示す。CO2レーザ切断機は、▽レーザ光を発生するレーザ発振器▽レーザ光を切断点まで導くための光路▽集光したレーザ光およびアシストガスを材料に照射・噴射する加工ヘッド▽レーザ発振器や加工ヘッドを移動する切断台車▽レーザ発振器や切断台車を制御するNC装置▽切断材料を置くための切断定盤▽レーザ発振器や光学部品を冷却するための冷却水循環装置──などで構成される。
 また、付帯設備としては、▽レーザ発振器・切断台車・冷却水循環装置への電源供給設備▽アシストガスやレーザガスを供給するガス供給設備(消費量によってボンベまたはCE=液化ガス貯槽)により供給?切断時に発生するヒュームや粉塵を捕集する集じん装置▽材料を切断機に自動的に搬入・搬出する材料搬入・搬出装置▽レーザ光が通る光路内を清潔に保つためのエアを供給するエアコンプレッサ▽切断する形状のNCデータを作成するCAD/CAM──などがある。

 図3 発信器搭載型CO2レーザ切断機の構成


 写真1 発信器搭載型CO2レーザ切断機の概観

 5、レーザを使用する上での安全対策
 レーザ切断に使用されるレーザ光は、ほとんどが目で見ることができない。通常、レーザ切断機はレーザ光が通る部分を金属などで遮へいし、直接レーザ光線に被爆する可能性が低い構造にしてある。
 しかし、強力なエネルギを持っているため、切断部からの反射光や散乱光についても注意が必要である。レーザ切断に従事される方は、作業中に必ず保護眼鏡や適正な作業着を着用する必要がある。保護眼鏡の仕様は使用するレーザにより異なるので、必ずレーザの種類およびその出力にあったものを選ぶ必要がある。
 そのほかに注意が必要な項目は、▽発振器に使用する高電圧(数十キロボルトと非常に高圧のものもある)▽高温になっている切断された材料▽高速で移動する切断台車▽酸欠や過剰燃焼を引き起こす可能性のあるアシストガス──などがある。
 また、金属の切断を行う場合は加工部周辺に多量のスパッタ(溶けた金属)が飛散することがあるため、作業エリア内に可燃物を置かないなどの火災に対する注意も必要である。
 そのほかレーザの取り扱いの詳細については、国際規格IEC60825─1「Safety of laser products」、日本工業規格JIS C6802「レーザ製品の安全基準」があるのでよく理解して使用する必要がある。また、厚生労働省労働基準局通達の「レーザ光線による障害防止対策要綱 基発第0325002号」も合わせて理解する必要がある。

 6、厚板切断用レーザ切断機の展望
 厚板切断分野では、レーザ切断機はガス切断機やプラズマ切断機と比較されることが多いが、先に述べた通りレーザ切断機は多くの優れた点がある。しかし、ガス切断機やプラズマ切断機も日々進歩しており、特に最近のプラズマ切断機は高品質化が進み、レーザの切断品質に近づいてきている。
 レーザ切断機をプラズマ切断機と比較すると、切断速度が遅い、切断できる板厚が薄いなどの課題、ガス切断機と比較するとランニングコストが高いなどの課題がある。
 レーザ切断機メーカーでは、切断速度や切断板厚の向上に日々努力しており、今後は適用範囲の拡大、ランニングコストの低減などが進んで行くものと思われる。

(*1)ガス切断=鉄と酸素の酸化反応熱を利用して切断する切断方法
(*2)プラズマ切断=切断する材料と電極間にアーク放電をして、高温、高密度の熱源をつくり、この熱を利用して切断する切断方法

 日酸TANAKA/生産・技術本部FA機器開発部レーザ加工技術開発グループ 上木原洋丘

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