フレッシュマン講座

しゃ光用保護具編2011

 溶接技術はあらゆる産業分野に定着し、製品の付加価値を高めるための不可欠な技術として、さらに用途を拡大しながら進歩を続けている。しかし、これらの技術開発は、状況によっては作業者に溶接現場で発生するリスクに触れる機会を増大することも考えられる。
 様々な溶接作業環境において、作業者の目の保護は大変重要な要素となり、その危険性について十分理解する必要がある。有害光線の種類やそのリスクに対する保護具について紹介する。
 【溶接時における有害光線について】
 A、可視光線
 波長380〜780ナノメートルの電磁波の中でも、400〜430ナノメートルをブルーライトと言い、輝度と障害の関係があり強い光にさらされると網膜に損傷が起こる。症状は紫外線と異なり、すぐには意識できない。
 B、紫外線
 波長380ミリ以下の電磁波で、眼には見えない。日焼けを起こさせる光で、眼にあたってもその大部分が角膜に吸収され、その暴露量によっては電気性眼炎や雪眼炎と呼ばれる症状を引き起こす。
 C、赤外線
 波長の780ナノメートル以上の電磁波で、こちらも眼では見えない。赤外線のうち780〜930ナノメートルを近赤外線と呼び、角膜にあたった90%が網膜に達し、その赤外線が強い場合には網膜を焼いてしまう。赤外線のうち1400ナノメートルを越す波長は、角膜に吸収されずほとんどが水晶体にまで達し吸収される。赤外線を吸収した水晶体は何年も経過すると白濁し、徐々に見えにくくなってくる。
 【レーザ光の危険性】
 レーザは人工的に作られた特殊な光で、自然光とは全く性質が異なる。指向性があり、単色性の作用はレンズの集光作用によりパワーが集中し、高密度になる。
 なかには一瞬で金属も溶かしてしまうほどのパワーになることもある。よって、レーザ作業従事者がこれらの特徴を知りながらリスク管理としての予防対策を怠ると、災害が発生する可能性が高くなる。
 特に眼に対しては、低出力でも波長によっては水晶体の集光作用により、網膜が予想以上のダメージを受ける可能性があり、永続的な視力障害を引き起こす危険がある。
 【保護具について】
 溶接アークに対応する眼の保護については、「JIS T814 1遮光保護具」に制定された製品が対応し、溶接条件に応じたJISしゃ光フィルタレンズを選定する必要がある。
 溶接アークの強度に応じて透過レベルが調整されたフィルタレンズは、場合によっては前が見えないほどの暗いレンズもあり、非作業時に足元が見えないなどの危険も考慮され常時の使用は難しく、最近では液晶を応用したシャッター式液晶面なども使用されるようになっている(写真1)

 写真1 液晶溶接面

 また、レーザ光用しゃ光保護具については溶接用しゃ光保護具と違い、使用するレーザ波長に対応し、なおかつ使用するレーザ出力に応じた光学濃度を有したフィルタレンズでなければ保護の役割を果たせないため、レーザのクラス別分類(IEC60825─1)やレーザのクラス別障害防止対策を正しく理解する必要がある(厚生労働省基発第03025002号)
 また、偶発的なレーザの直接露光はたとえ保護具を装着していても、保護具自体も損傷を受けることもあるので、それらについてはレーザ放射を直接受けた場合でも、一定時間は保護機能を保持できる保護めがねも提案されている(写真2)

 写真2 レーザ用保護めがね

 さらに、レーザ管理区域の設置に便利なついたてや、間仕切りガラスに貼り付けるレーザしゃ光フィルタカーテン、レーザ装置の筐体に特別に設置する加工のぞき窓専用のレーザしゃ光ウィンドなども、レーザ装置を導
入した作業現場では使われるようになっている。
 【危険への認識】
 以上、溶接作業における有害光線と保護具について概要を述べた。一般的に有害光線という表現は、紫外線などの化学作用の強いものに限定され理解される場合もあるが、溶接作業の安全管理においては可視光線、紫外線、赤外線の全ての光線に対して考慮する必要がある。一方、レーザ光に関してはレーザ波長に対応した正しい保護具の選択と装着が必須となる。いかなる場合でも、レーザビームをのぞき込むなどの軽はずみな行動を起こさない慎重な意識が個人に求められる。

 山本光学/ビジョンケア・光研究所所長 石場義久 

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