フレッシュマン講座

マイクロ加工編2011

 1、マイクロ加工とは
 マイクロ加工とは、比較的微細な接合・切断・穴開け・溝入れ・マーキングなどの加工を意味する。携帯電話や携帯情報端末・携帯音楽プレイヤー・パソコンなどの電子機器、デジタルカメラやブルーレイなどの光学機器、ハイブリッドカー・電気自動車をはじめとする自動車の電装部品、太陽電池や二次電池など、私たちの日常生活の中で身近に存在する様々な製品に使用されている。
 具体的な加工例には、モーターやそのほかの電装品への配線、携帯電話のキー(ボタン)などへのマーキング、タッチパネルや太陽電池の加工などが挙げられる。

 2、マイクロ接合
 マイクロ接合は、接着、はんだ付、圧着、溶接など、異なる部材をつなぐ技術である。リチウムイオン電池や水晶振動子の封止にも使用される。
 接合は、ネジ締めやリベット打ちのような機械的締結、接着やはんだ等の中間物(ろう材)を使用する方法、部材自体を溶融して部材同士を一体化させる方法(溶接)、超音波接合やFSW(摩擦攪拌接合)のように固体のままお互いを接合する方法(固相接合)に大別される。
 はんだ付は、電気的な接合によく使用される。はんだの温度をはんだごて、ヒーターチップ、レーザ、ハロゲンランプ、温風などで上げ、はんだを介して金属同士をつなぐ方法である。
 鉛フリーはんだの普及によりはんだ付の難易度が増し、近年は自動はんだ装置が提案されている。ヒーターチップおよび専用の電源を利用して温度プロファイル(温度の時間変化)をアクティブに制御することで、従来難しいと言われてきた部材へのはんだ付も可能となってきた。
 マイクロアーク溶接は、被溶接物にプラス電位を与え、トーチの電極にはマイナス電位を与えて被溶接物とトーチとの間にアーク放電を発生させ、そのアーク熱を利用して金属を加熱溶融して接合する方法である。
 抵抗溶接は、被溶接物の金属を一対の電極で加圧しながら溶接電流を流したときに発生する抵抗発熱(ジュール熱)を利用して金属を溶かして接合する方法である。
 レーザ溶接は、レーザ光をレンズで集光してレーザエネルギーを被溶接物に集中させ、金属を溶融することで接合する方法である。
 超音波接合は、金属や樹脂を加圧した状態で超音波振動を与えて接合する方法である。半導体のチップ内のワイヤー配線にも使用される。金属の場合は、表面付近の異物や酸化被膜が摩擦により除去されることで、金属原子間での結合が行われる。樹脂の場合は摩擦熱により表面がわずかに溶融することで接合する。
 熱圧着は、ヒータや連続的にレーザ光を出すCWレーザで、被接合物を融点以下の温度で加熱しながら加圧して接合する方法であり、樹脂や金属の接合に使用される。
 主な接合方法の比較を表1に示す。それぞれ一長一短があり、用途に応じた使い分けが必要である。

 表1 各接合方法のメリット・デメリット

 3、マイクロ切断・穴開け
 マイクロ切断や穴開けでは、加工対象物が小型・微小になるのに伴い、刃物やドリルといった工具が小さくなって強度がもたなくなり、レーザで加工することが多くなってきた。レーザ切断や穴開けは、レーザ光により被加工物を溶融させ、アシストガスの吹き付け圧により溶融物を吹き飛ばして除去する加工法である。
 切断や穴開けのレーザ加工では、使用するレーザのビーム品質、波長、パルス幅(パルスレーザの場合)が重要である。
 レーザには、半導体レーザ、YAGレーザ(固体レーザ)、ファイバーレーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザなど方式や波長の異なる各種レーザが存在する。
 また、YAGレーザ(波長1064ナノメートル=赤外)では、レーザ光を非線形結晶に通して高調波を発生させ、2倍の高調波(second harmonic generation=SHG、532ナノメートル=グリーン)、3倍の高調波(third harmonic generation=THG、355ナノメートル=紫外)、4倍の高調波(fourth harmonic generation=FHG、266ナノメートル=紫外)も使用される。
 マイクロ切断・穴開けでは、ビーム品質のよいファイバーレーザやシングルモードの固体レーザ、さらに微細な場合にはSHGレーザやTHGレーザなどの短波長レーザが使用される。また、部材の種類によっては波長の選定も重要である。被加工物の種類によってレーザ光の吸収特性が変わる(図1)。一般的には反射率が低く、吸収特性のよい波長のレーザを選択することで、良好な加工が可能となる。

 図1 波長による各種材料のレーザ反射率

 4、そのほかの加工
 マイクロ加工にはこれ以外にマーキング、はく離、溝入れ、アニールなどの加工がある。これらの加工にもレーザが使用されることが多い。切断や穴開けと同様、ビーム品質、波長、パルス幅が重要なパラメータである。
 また、加工の種類によってはビーム成型の技術が使用される。例えば、薄膜のはく離には、矩形のトップハットビームが使用される(図2)。特殊な用途では、ドーナツ状のビームやライン状のビームが使用されることもある。

 図2 矩形のトップハットビーム形状例

 5、アプリケーション事例
 ◇銅端子のマイクロアーク溶接
 マイクロアーク溶接は、微細部品や非鉄金属類(銅合金、高融点材料など)の接合に多く利用される。これまではんだ付されていたチップコイル、ミニチュアリレー、小型振動モーターなどのコイル部品における被膜細線と端子にも有効である。また、車載用電子制御モジュールパックの銅端子の接合への利用も増えてきている。
 銅端子の接合では、抵抗溶接や超音波接合が拡散接合になるのに対して、マイクロアーク溶接は溶融接合が可能となり安定した接合強度を得ることができる。
 ◇レーザマーキング
 レーザマーキングの応用例としては、金属や樹脂製のIC(集積回路)パッケージへの浅彫りマーキング、金型、銘板への深彫りマーキング、摺動部品などの表面に傷がない平滑な黒色(酸化)マーキング、樹脂の表面を発泡させるマーキング、材料表面にある塗装やめっきなどをはく離して下地を露呈させる表面剥離マーキング(自動車、オーディオ、携帯電話などの照光ボタンに多用)、FPD(フラット・パネル・ディスプレイ)ガラスへの2次元コードマーキングなどがある。
 また、シリコンウエハーへのマーキングには、ラップドウエハー(鏡面仕上げ前)に対するハードマーキングと、ミラーウエハー(鏡面仕上げ後)に対するソフトマーキングがある。ソフトマーキングは、飛散物の発生を抑制するためにSHG─YAGレーザパルスを照射して、ウエハー表面を蒸発させずに溶融加工を施してドットでマーキングするものである。
 これに対しハードマーキングは、ウエハー表面を蒸発させ50〜100マイクロメートルの深さのドットを形成させるものである。
 ◇グリーンレーザによるICリード溶接
 SHG─YAGレーザを使用すれば、プリント基板のICリードを直接レーザ溶接することが可能である(写真1)。はんだが不要で短時間で溶接個所だけを加熱するため、ICへの熱によるダメージが少なく信頼性への影響を最小にすることができる。

 写真1 ICリード線基板への直接溶接

 ◇ファイバーレーザ溶接
 ビーム品質が良く集光性が良いファイバーレーザを使用すれば、線径25マイクロメートル程度のステンレス細線や薄板(箔)の溶接、薄板の曲げ加工が可能である。X軸・Y軸に取り付けた2枚のミラーでレーザビームを走査するレーザスキャナを利用するリモート溶接にも、ビーム品質の良いファイバーレーザ溶接機は向いている。
 あらかじめCADデータなどで設定した多点位置あるいは範囲に対して、スポット溶接やシーム溶接をすることができる。金属製携帯電話やモバイル機器などの内部部品の高速多点溶接に使用されている。
 出力の安定性がよく、連続照射が可能な特性を生かしてシーム溶接にも使用される。写真2にリチウムイオン電池の封止の例を示す。
 ファイバーレーザは、エネルギー効率がよくメンテナンスの周期が長いため、工場の効率化や省エネにもつなげることができる。はんだ付や樹脂溶着への適用も可能である。

 写真2 リチウムイオン電池アルミ缶の封止

 ◇水晶振動子の気密封止
 表面実装型水晶振動子のパッケージにリッド(ふた)をろう付する方法は、従来はローラ電極を平行に配置したパラレルシーム溶接機を使用していた。
 しかし、電子機器小型化に伴う水晶振動子の小型化のため、このローラ電極ではスペース面で対応できなくなってきた。そこで、非接触の電子ビームやファイバーレーザを使用したリモート溶接により、ビームをパッケージに合わせて走査して接合する方法が使用されている。
 ◇ガラスのインナーマーキング
 本来吸収のない波長のレーザ光であっても、多光子吸収によって加工が可能となる。多光子吸収は光のパワー密度を極度に上げることで、2光子以上が同時に反応して吸収のない波長での加工を可能にする方法である。集光点近傍のみ加工が可能となるので、ガラス内部への加工が可能となる。写真3にマーキングの断面写真を示す。

 写真3ガラス内部へのマーキング(断面)

 ◇微細マーキング
 SHGレーザやTHGレーザを使用すると、波長が短いためにビームを小さく集光することができる。特殊な光学系を使用することで、スポット径を3〜5マイクロメートル程度に集光してのマーキングが可能となる。
 写真4はホッチキスの針1本に6行の文字をマーキングした例である。文字の高さは30〜40マイクロメートル程度で、肉眼ではまったくわからない。ブランド品のトレサビリティー用途など、ステルスマーキングとしての用途が期待されている。

 写真4 ホチキス針へのステルスマーキング

 ◇薄膜太陽電池の薄膜除去
 原子力や火力に代わる持続可能なエネルギー源として、風力発電などと並んで太陽光発電が注目を浴びている。最近、原料問題が少なく製造時のエネルギー使用および二酸化炭素排出が小さい薄膜型太陽電池が実用化されている。薄膜型太陽電池では、P1・P2・P3の3回のスクライブ加工が必要である。
 ビームを矩形でトップハット形状に成型したレーザを使用して、30〜100マイクロメートル程度の幅のスクライブ線を加工する。ガウスビーム(円形ビーム)を使用した場合と比べ、オーバーラップ率(重なり率)を低くしての高速加工が可能である。
 通常、P1には赤外レーザ、P2/P3にはSHGレーザが使用される。P1(透明電極)の加工の例を写真5に示す。
 CIGS(銅とインジウム、ガリウム、セレンの化合物を材料とする薄膜状態の物質)太陽電池などの化合物太陽電池、有機薄膜太陽電池などの新しいタイプの太陽電池においては、SHGレーザやTHGレーザの矩形トップハットビームによる加工も有効である。 

 写真5 矩形ビームよる透明電極

 ミヤチテクノス/接合技術開発室 三浦栄朗

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