フレッシュマン講座

ろう付編2011

 1、ろう付とは
 約4500年前のメソポタミア文明時代から、黄金細工で活用されていたと言われるろう付技術。最古の金属接合法として知られる。
 ろう付はアーク溶接やスポット溶接と異なり、母材の融点よりかなり低い融点の溶加材(銀ろうなど)を溶かし、それを母材の隙間に流し込むことによって接合する技術。
 そのため、▽母材がほとんど溶けず変形が少ない精密な接合ができる▽ろうは「ぬれ」により狭い隙間に入るので複雑な形状かつ多くの接合部があっても同時に接合できる▽ろうの種類が多様で異種金属や非鉄金属(セラミックスなど)の接合が比較的容易──などの特徴を有し、熱影響によるひずみが極めて少なく、特に寸法精度が求められる薄板や精密接合、機密性が求められる接合個所に広く適用されている。

 2、ろう付接合の種類
 ろう付の工法には炎の燃焼熱を利用する「ガスろう付」、ろう付する部品の加熱を炉内で行う「炉中ろう付」、加熱コイルに高周波誘導電流を生じさせ自己加熱によって加熱ろう付する「高周波ろう付」のほか、一定時間ろう付部に最適な電流を流し、その抵抗熱を利用してろう付する「抵抗ろう付」などが代表的工法として挙げられる。
 使用するろう材は棒、ワイヤ、リング、プリフォーム、ペーストなどの形状があり、成分により銅ろうや黄銅ろう、銀ろう、りん銅ろう、銅マンガンろう、ニッケルろう、金ろう、パラジウムろう、アルミニウムろう──など多種にわたる。
 また、ろう付では最適な作業を行うため「ぬれ性」を確保しなければならない。そのため、母材およびろう表面を覆っている酸化皮膜を除去する必要があり、フラックスを用いる。このフラックスは、酸化皮膜の除去以外に加熱中の酸化を防止する働きもある。
 このようにろう付作業では、金属表面とろうをよく馴染ませることはもちろん、最適なろう材およびフラックスの選択、ろう材供給のタイミング、適正な温度などあらゆる条件をよく見極めることが最も重要となる。
 
 3、代表的なろう付工法の原理と特徴
 ◇ガスろう付(写真1)
 炎の燃焼熱でワークを加熱してろう付する工法。熱源としてアセチレン、プロパン、石炭ガスや天然ガスなどの可燃性ガスを用い、これに空気、圧縮空気あるいは酸素などの支燃性ガスを混合して燃焼させ、ろう付に必要な高温を得る。
 ガスろう付は全てのろう付法の基本と言うべきもので、取り扱いの簡便さと設備経費の安価なことから、様々な製造分野で最も利用されている。ほかのろう付法と比べワークによる作業上の制約が極めて少なく、多品種少量の生産、全体加熱のできない製品、急熱急冷を要する製品、複雑かつ大型の部品の接合などに効果的。半面、手作業に頼るところが多く高度な熟練技能が要求される。


 写真1 ガスろう付

 ◇高周波ろう付(写真2)
 ガスろう付同様、生産性への対応が極めてよく、しかもばらつきを生じることなく急速加熱、局部加熱、全体加熱などに柔軟に適用できる。
 加熱はワーク形状に適合するよう成形した銅チューブ製のコイルに冷却水を通しながら高周波電流を印加し、ろう付内に誘導電流を発生させその抵抗熱を加熱源とする。ろうの供給はほとんど置きろう方式で、任意の雰囲気中で加熱できる。自動化やライン化がしやすく熟練技能を要しないが、高周波電源を必要とするため設備費が高価となり、ワークに合致した加熱コイルや治具が必要となる。

 写真2 高周波ろう付

 ◇炉中ろう付
 炉中ろう付には炉内を大気と遮断し、その中を還元性ガスや不活性ガス、真空などの保護雰囲気で置換して行う方法と、炉内を特定の雰囲気で保護せず大気を雰囲気として行う方法がある。前者は通常フラックスを使わず、後者の大気炉ではフラックスを用いる。
 炉は加熱源により燃焼加熱炉と電気抵抗炉の2種類に大別され、構造形式では大量生産に適したコンベアタイプの連続炉と、少量高品質生産用のバッチタイプの炉がある。
 炉中ろう付は炉内でワーク全体が加熱されるため、均一に加熱することができ、部分的な歪みが少なく、仕上がり精度も高くなる。また、精密な温度制御が容易なため製品の均質化が図れ、加熱ムラや品質のバラツキが少なく大量生産に適する等の特徴を有する。
 ◇真空ろう付
 真空中で行う炉中ろう付で、(1)真空の保護作用による無酸化加熱(2)表面に付着した不純物の除去に伴う「ぬれ性」の向上(3)蒸発作用による合金元素の変化(4)脱ガス作用による継手強度の向上──などの特徴を有し、酸化しやすい金属や各種航空宇宙機材のほか、耐熱鋼やステンレス鋼、各種合金鋼、軟鋼、さらにはアルミニウム合金製のオイルクーラーやジェネレータ、エバポレータなどの自動車用熱交換器、家電関係の製品の接合技術として広く活用されている。

 4、ろう付作業の自動化、省エネ化への取り組み
 ひと昔前まではろう付の自動化は難しく、ごく限られた条件下での自動化しか行えないとされてきたが、近年ロボットおよび各種周辺装置の高性能化やワーク精度の向上、さらには制御技術の発展や各種センサの登場により、幅広い分野で自動化が進展している(写真3)

 写真3 ロボット化が進むろう付け

 中でも汎用性に優れた「ガスろう付の自動化」は、現在最もポピュラーな自動化システムとして普及しており、製品のライフサイクルの短縮化や多品種中・少量生産が主流になっている産業界において、フレキシブルに対応できるガスろう付の自動化は目覚しい発展を見せている。
 さらに、近年地球環境に配慮したものづくりが求められており、ろう付作業においても二酸化炭素排出量削減や省エネ、トータルコストダウンなど、より効率的な生産手法が求められている。
 中でも大気ろう付は、いかに効率的な予熱時間を確保するかが大きな命題で、既存技術との組み合わせによるハイブリッド化が注目されている。「高周波加熱+ガス自動ろう付」「赤外線加熱+ガス自動ろう付」「ミグブレージング+ガス自動ろう付によるロボットシステム」などが実用化されている。
 いずれにしろ、高品質・高効率・低コストが命題の生産現場において、熟練作業者の退職や若年労働者不足、品質の安定化等の課題に対処するためにも、ろう付作業の自動化・ロボット化は避けて通れないテーマとなっている。

 大進工業研究所/代表取締役社長 高橋光雄

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