フレッシュマン講座

非破壊検査編2010

 Q 非破壊検査とはどのような技術ですか
 A 非破壊検査とは、物(対象物)を壊すことなく(非破壊で)、物に入っているキズや内部の様子などを調べる(検査する)技術です。調べた結果、キズが無く、対象物が健全であればそのまま使用を継続できます。対象物を壊して調べる方法(破壊試験)では継続して使用することはできません。
 つまり、お医者さんが人の体の異常を様々な方法で調べ、診断するのと同じで、対象物が人体ではなく工業製品だという点が異なります。

 Q 非破壊検査はどのようなところで使われていますか
 A 非常に多くの分野で使われています。特に重要なプラントである原子力・火力発電所、石油精製、石油化学、ガスなどのプラントはもちろんのこと、橋、道路、ビルなどの社会資本、鋼板や種々の工業製品を対象に、様々な手法で非破壊検査が適用されています。
 安全性、健全性が確保される必要のある、あらゆる製品、構造物などに必ず適用されていると言っても過言ではありません。

 Q 非破壊検査はどのような目的で使われていますか。また、その役割は何ですか
 A 非破壊検査を適用する目的は、ケースバイケースで多様ですが、大きく分類して考えると次のようになります。
 (1)新しく製造された製品、構造物などでは、製造過程で思わぬキズが発生していないか、また、製品の品質が決められたレベルを満足しているかを調べる目的で非破壊検査が使われます。品質管理の手段の一つと言えます。
 (2)一定期間使用あるいは運転した後の検査では、使用中にキズが発生していないか、そのキズにより製品、構造物が破壊に至ることがないかを調べる目的で使われます。部品、構造物の破壊による大規模な事故を防ぎ、安全を確保する手段として非破壊検査が行われます。

 Q 非破壊検査にはどのような方法がありますか
 A 物を壊さないでキズを見つけたり、内部の状態を調べたりするためには、その目的と対象物の状況に合った方法を適用することが必要です。そのため、非破壊検査手法としては多くの種類が考えられ、使われています。また、マイクロ波やレーザを用いた方法など、多様化の傾向にあります。また、基本的な方法の中でも、新しい応用が行われつつあり、その技術内容は日進月歩の様相を示しています。

 Q 非破壊検査には多くの方法がありますが、どのように使い分けられていますか
 A 非破壊検査手法は、それぞれ特性が異なります。例えば、キズを検出する(探傷)ことに関して言えば、キズの位置(表面か内部か)、形状(円形か線状か)などにより、それぞれ得意とする方法が異なります。したがって、非破壊検査を適用するときは、それによってどのようなキズを検出しようとするのかをあらかじめ明確にした上で、最適な方法を選択する必要があります。

 Q 非破壊検査を行うには資格が必要ですか
 A 非破壊検査を現場で実施するに当たっては、それを行う技術者は資格を保有することが求められています。基本的な資格としては、JIS Z 2305(2001)「非破壊試験ー技術者の資格及び認証」に基づき、日本非破壊検査協会が実施している資格認定があります。春秋に行われる試験に合格し、登録することで資格を保有することができます。表1にJIS Z 2305により認定される資格の種類(基本的方法)を、表2に限定資格を示します。
 現在(2009年4月現在)資格登録されている資格者数は、レベル1、2、及び3を総合計して延べ6万9785人に上っています。その中でもレベル2が4万9485人と多く、現場業務の中心となっている技術者はレベル2資格者であると言えます。
 また、JIS Z 2305以外では、鉄筋圧接部の超音波探傷試験、建造物の鉄骨溶接部の検査など、対象物に特化した資格もあり、現場においてこれらが要求されるケースもあります。


表1 資格認証(基本的方法)


表2 資格認証(限定資格)

 Q JIS Z 2305による資格認定を取得する具体的手続きはどのようなものですか
 A 日本非破壊検査協会ではJIS Z 2305による認定試験を年2回(春と秋)実施しています。これを受験するには、一次試験日程の約2ヵ月前に受験申請する必要があります。このとき、JIS Z 2305に定められた事前訓練を受けた旨の訓練時間証明を添えて申し込みます。
 試験は、レベル1及び2では一次試験(筆記)と二次試験(実技)が課せられ、どちらにも合格する必要があります。合格すれば、一定の経験月数を満たしていることで資格登録が可能となります。
 新規試験の合格率は、レベル1で約50%前後、レベル2では約30%前後となっており、結構難関です。
 日本非破壊検査協会発行のテキスト類をよく読んで学習するとともに、二次試験で課せられる実技の練習をする必要があります。

 Q 非破壊検査を現場で行う上で重要な事項は何ですか
 A 非破壊検査の施工に当たっては、それを行う技術者、使用する装置、及び実施する手順を明確に記した手順書が三位一体として重要な事項になります。
 実施した非破壊検査の結果が信頼されるものであるためには、これらの事項が十分管理されたものであることが必要です。
 特に非破壊検査技術は、実施者が個人の力量の範囲で判断する要素の多いものであり、技術者の資格保有と同時に実際の現場実施に対する力量管理が大切です。
 また、手順書は、誰が行っても同じ結果が得られることを前提として、実施上の重要ポイントを確実に押さえて作成し、実施者の共通認識として確立させることが必要です。

 Q 非破壊検査技術者として一人前になるには何が重要ですか
 A まず、上に述べた資格を取得することが第一歩となります。
 今の国内の状況から見て、ある程度現場で非破壊検査の業務をこなしてから資格を取得するというのではなく、先ず資格試験に合格することが現場実務を行う上での必須条件となっています。
 レベル1のような比較的、容易な資格でも良いから先ず取得してください。次に必要なことは、現場実務をマスターすることです。
 それには、対象物ごとに手法の異なるそれぞれの非破壊検査技術に習熟するとともに、それを適用する対象物(溶接部、圧延品、鍛造品、鋳造品など)について、材料、製造方法、使用方法及び発生するキズなどについての十分な知識を持つことです。
 非破壊検査は、製品の品質管理あるいは構造物の健全性維持のアクションの一環として行われるものであり、非破壊検査技術者としては自分の行う非破壊検査業務の位置づけを明確に認識していることが必要です。
 非破壊検査はあまり表舞台に出ない仕事との印象があるかと思いますが、工業分野において安全を担保する重要な位置を占めていることを、非破壊検査を行う技術者を目指すフレッシュマンの方々はしっかり認識して頑張ってください。

 非破壊検査技術本部検査技術センター/向井 一弘

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